MOTOKA 第2章




(ああー、おトイレに行きたいよ、どうしよう)

 7月になったがまだ梅雨が明けていない東京の空はどんよりとしていた。
 今日の4時間目の体育は初めてのプールだった。
 日本の学校のいわゆるスクール水着を着るのは初めてだったので、なんだか少しドキドキした。
 プールの授業は男女別に編成されているのでプールサイドには女子しかいなかったが、何人もの女生徒が素香の水着姿に見とれていた。
 社交的でおおらかな性格の素香は4月に編入してすぐにクラスの人気者になっていったし、母親ゆずりのキュートで魅力的な外見は男子生徒の間でももちろん話題になっていた。
 今は5時間目の英語の授業中である。
 プールから上がって半乾きの髪のまま昼休みを過ごしたせいであろうか、授業が始まるとすぐに尿意が強くなってきた。
 おまけに曇り空でのプールで体が冷えていたせいで、昼食の時の温かいお茶がおいしくて2杯もおかわりしてしまった事を素香は後悔していた。腕の時計に目をやると授業はまだ20分以上残っているではないか。
(いやっ、もう我慢できないよ)
 シャープペンをギュッと握っている右手が汗ばんできた。
 何とか気を紛らわす為にいろいろな事を考えようとしたが駄目だった。
 きつく組み合わさったその足元は小刻みに揺れている。
 股間を思いっきり手で押さえたい衝動に何度も駆られたが、素香の理性はそれを許さなかった。

 素香の左斜め後ろに座っている優里はさっきからずっと素香の事を見ている。
 実は優里は4月にこのクラスに編入してきた素香を一目見た時から、素香に惹かれていたのである。
 女の子が女の子に一目惚れというのも変な話だが、優里は学校で毎日素香の事を見つめていられるというだけでキュンとした幸せな気持ちになってしまうのであった。
 最近は毎晩寝る前にベットに入って目を閉じると、その日の素香の姿が脳裏によみがえってきてしまう。
 本当にそれだけ素香に惹かれていたのだ。
 そんな優里自身も、はたから見ればとても魅力的な女の子だ。
 今までにも男子生徒から何通かラブレターなるものを貰った経験があるけれど、つきあうようになるまでには至っていなかった。
 優里には最近夢中になっている男性ロックシンガーがいて、部屋中彼の写真やポスターだらけなのだが、なぜだか不思議にそのロックシンガーと同じくらい素香の事が気になってしょうがない毎日を過ごしていた。
 今日の4時間目の授業はプールだった。
 そしてその時、優里はついに憧れの素香のスクール水着姿を見る事になったのである。
 プールサイドでの素香の姿は強烈に優里の目に焼き付いてしまい、心臓はもうバクバクで破裂しそうにだった。
 優里はその時あらためて自分が素香の事をそれ程までに意識していたという事を知らされたのだった。
(どうしたんだろう、私ったら、素香のことばっかり考えちゃって、、、)

 お昼はいつものように素香達と一緒に食べたのであったが、濡れた髪で美味しそうにお弁当をほおばってお茶を飲む素香の口元を見ていたら、何だか急にドキドキしてまたしても鼓動が早くなってきてしまった。
 それから後はもう優里の頭の中はずっと素香の事で一杯だった。
(これって恋なのかなあ?でも素香は私と同じ女の子だし、、、何だか私最近へんなのかなあ)
 5時間目の授業が始まってからも優里はボーっとして斜め前の素香の事をずっと見ていた。
 ところがさっきから素香の様子が少し変なのだ。
 両足をきつく組んで落ち着きがなく、白いソックスに包まれた足元は常に細かく揺すられている。
 明らかに素香はトイレを我慢しているようだ。
(素香ったらトイレ我慢してるんだ)
 何ということだ。憧れの素香が目の前でトイレを我慢してそわそわしている。
(大丈夫かなあ、まだ授業は半分しか終わってないよ)
 授業の残り時間が20分を切る頃になると素香は足元だけでなく、尿意を必死に耐えているせいか上半身まで前後に小さく揺れるようになっていた。
(あっ)
 その時ずっと固く組んでいる太股と椅子の間にはさまれていた素香の左手が一瞬スカートの上から股間を押さえたのを優里は見のがさなかった。
(素香やっぱりおしっこが漏れそうなんだ、だいじょうぶかなあ)
 素香の左手はすぐに元の位置におさまったが、椅子の上の太股はあいかわらず前後に細かく揺すられている。
 優里はものすごくドキドキしてきてしまった。
 なんだか妙な気分になってしまい、思わず素香の排尿姿を想像してしまった。
(やだ、私ったら素香のおしっこ姿なんか想像して興奮しちゃって、やっぱり今日はおかしいわ)
そういえば今まで一度も素香が休み時間にトイレに行くのを見たことがなかった。
 休み時間の女子トイレの中は結構にぎやかな社交場なのだが、その中で素香の姿を見かけた記憶がない。
 今度は憧れの素香がスカートの前を押さえて学校のトイレに駆け込んで行く姿を想像してしまった。
(ああ、もう私完全にヘンになっっちゃってる)
 そして優里の妄想の中では素香が制服のスカートをめくって慌てて下着を降ろす。
 次々に素香の恥ずかしい姿を想像してしまっている優里は、生まれて初めて自分の下半身がムズムズしてくる不思議で甘美な気持ちを味わっていた。

 そんな間も素香は必死に尿意と闘っている。
 時計を見ると授業が終わるまであと5分だった。
 素香はさっきから一瞬ではあるが、もう3回も少し腰を浮かせて左手でスカートの上から強く股間を押さえてしまっていた。
 ドキドキしながらそれを見ている優里は、思わず素香が押さえている恥ずかしい場所の事を想像してしまう。
(素香、あと5分よ、がんばって!)
なんだか勝手にエッチな事を想像しつつも素香の応援をする優里であった。

「それでは少し早いが今日はここまで」
と英語の教師が言ったのは授業終了の2分前だった。
 日直の号令と共に礼をすると素香はすごい勢いで教室から出ていった。
(あっ、素香、)
気がつくと、優里は素香の後を追っかけていた。
 教室から出ると、素香はトイレとは反対の方向に走って行く。
(あれ、トイレは反対だよ)
と思いながら優里も小走りで素香の後を追う。
 素香は廊下の階段の所までくると急いで階段を上りはじめた。
 他のクラスはまだ授業が終わっていないので廊下には誰もいない。
 静かな校舎の廊下にパタパタパタという素香の足音だけが響いていた。
(素香どこいくの!)
急ぎ足で階段を上っている素香は、左手でスカートの上から思いっきり股間を押さえている。
(素香、おしっこ漏れそうなのにどこいくのよ!)
優里はなるべく足音をたてないように素香のあとを追う。
 階段を上りきると素香は誰もいないその階の女子トイレの方へ、前屈みで股間を押さえながら小走りで向かって行った。

 トイレの前にたどり着くと、素香はあっという間に中に消えていった。
(素香ったらなんでこんな所のトイレまで来たんだろう)
優里は急いでトイレの前まで行くと、足音を忍ばせて中に入った。
 素香はすでに個室に入っていてトイレの中には誰もいない。
 手前から2つ目の扉の閉まっている個室の中から「シュー」という音が聞こえている。
(あっ、素香のおしっこの音)
 優里はそっとその音のする個室に近づいて耳をひそめた。
 扉の内側からは「シューッ」という音がずっと続いている。
(素香のおしっこ長いー)
 優里はドキドキしながら素香のおしっこの音を聞いていた。
 かなり長い間続いていた「シューッ」という音はやがて「ショー」という音に変って、しばらくすると音が消え、「はーー」という素香の溜息が聞こえた。
 ガラガラとペーパーをたぐる音が聞こえて水洗を流す音がしたので、優里は慌てて目の前の個室に入った。
 素香が個室から出て手を洗いトイレから出ていった音を確認すると、優里は下着を降ろして自分もトイレに屈んで用をたした。
 優里は降ろした下着の内側が、少しだけヌルッとした物で汚れているのを見て恥ずかしい気持ちがした。
 用をたして下着の汚れた部分をペーパーで拭うとトイレを出て教室へ向かった。

 6時間目が終わり下校の時間になると優里は素香に声をかけた。
「ねえねえ、いっしょに帰らない?」


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