間質性膀胱炎




 今回はちょっとまじめなお話です。

 皆さんは「膀胱炎」という病気をご存じかと思います。おしっこをためる膀胱が炎症をおこして、トイレが極端に近くなったり、おしっこをする時に痛んだり、おしっこがにごったりという症状になります。
 膀胱の中は、ふつうの状態では無菌です。当研究室の一番初めにも書いてありますが、おしっこは、まったく汚くありません。ところが、外部から細菌が侵入してしまうと、膀胱の中が炎症をおこしてしまいます。原因となる細菌の8割が大腸菌です。尿道(おしっこの出口)から侵入してきます。大腸菌とは、人間やほ乳類の大腸にいる菌で、大腸の中にいるときは悪さをすることはないのですが、他の臓器にはいると化膿性の病気をおこします。膀胱炎が特に女性に多いのは、体の構造上しかたのないことです。また、他にもクラミジア等の性感染症の微生物が原因になることもあります。
 膀胱炎を予防するには次のような生活習慣が効果的です。

 ○トイレの後は、必ず前から後ろに向かって拭く。
 ○便秘は大腸菌が繁殖するので、気をつける。
 ○おしっこを長時間我慢しない。
 ○水分を沢山とる。(これは便秘解消法の一つでもあります)
 ○おなかを冷やさない。(冷えると膀胱の抵抗力が下がる)
 ○疲労をさける。(疲労していると体の抵抗力が弱くなる)
 ○生理用品はこまめに取り替える。(清潔をたもつ)
 ○エッチの前後は清潔にする。(終わったあとトイレに行くのも効果的)

 もし膀胱炎になってしまったら、すぐにお医者さんへ行き治療してください。抗生物質という種類の薬を飲んで、膀胱の中の菌を退治します。ここで大切な事は、症状がよくなって自分で治ったと思い、薬をやめてしまわないことです。症状がなくなっても、まだ細菌が少し残っている場合があります。そうすると、そのうちまた膀胱炎をくり返すことになります。薬を全部飲みきって、再びおしっこの検査をして、菌が完全になくなったのを確認しなければなりません。

 膀胱炎になったと思ってお医者さんで尿検査をしても、おしっこの中から菌がみつからない場合があります。ここで登場するのが『間質性膀胱炎』という病気です。「間質性膀胱炎」とは、日本ではまだ知らない医師もいる、いわば「新しい病気」です。といっても、米国では推定100万人、フィンランドでは10万人中450人の患者さんがいるといわれていて、世界ではそれなりにポピュラーになりつつある病気です。
 間質性膀胱炎の典型的な症状は、昼夜を問わず、激しい頻尿(おしっこの回数が増える)と尿意切迫感、そして膀胱や下腹部の痛みです。症状がふつうの膀胱炎と似ているため、細菌による「急性膀胱炎」と診断されてしまう事が多いそうです。しかし、薬を飲んでも症状が改善されないので、こんどは「心因性瀕尿」(授業中や乗り物の中など、トイレに行けない状況になると、強い尿意を感じたりする)と診断される例も少なくないようです。
 また、2001年に定義された「過活動膀胱」という自覚症状症候群とも症状がとてもよく似ています。この「過活動膀胱」という症状は、例えば米国では18歳以上の人口の約16.6%が悩みをかかえています。しかし、現在「過活動膀胱」と診断されている患者さんの中にも「間質性膀胱炎」の患者さんが多く含まれているのではないかといわれているそうです。

 「間質性膀胱炎」では、若い患者さんでは痛みをともなわない事が多いそうです。おしっこが非常に近いと感じている方は、次の項目をチェックしてみてください。

 ○おしっこが出始めるまでに時間がかかる。
 ○おしっこの勢いがあまりない。
 ○生理の一週間前に膀胱周辺の痛みが増す。
 ○便秘になると、膀胱や下腹部が痛む。
 ○セックスの時や、その後痛みを感じる。
 ○ある種の飲食物をとったあとに痛みが発生する。
 ○抑うつ症状。

 もちろん実際に病院でちゃんとした検査を受けてみないとわかりませんが、以上の項目に加えて、尿検査で細菌の存在が確認されず、2〜3週間にわたって抗生物質による治療をしても効果がない場合は、間質性膀胱炎の可能性が高いそうです。


「膀胱炎がわかる本」巴 ひかる 著、マキノ出版、1365円

 この間質性膀胱炎のことが詳しく書かれている本が、今年の4月に発売になっています。間質性膀胱炎について一般向けに詳しく書かれたのは、この本が最初ではないでしょうか。東京女子医大第二病院の巴ひかる先生という、ヒジョ〜に美しい!女医さんが、やさしくわかりやすく説明してくれています。
 まだまだ一般に知られていないこの病気ですが、食事療法や患者さんの体験談などにも、多くのページがさかれています。
 また、間質性膀胱炎の診療ができる主な病院のリスト(2004年現在)なども載っています。原因がわからないけれどトイレが近くて悩んでいたり、病院を転々としている方達の大きな道しるべになることと思います。是非、手にとってみてください。

(2004.9.24 記)
 

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