G ある日の日記

ある日の日記




原作:りこ 脚色:チョビ

 なにげに押し入れの中の段ボール箱を、特に片付ける意思もないままにガサゴソとあさっていると、少し色あせたノートが本に挟まるようにして現れた。
(え、これってっ!?)
 直感的にそれが古い日記だと気づいたりこは、ペラペラとページをめくってみる。
それはりこが17歳の夏に、わずか1ヶ月ではあったがアメリカに交換留学したときの日記であった。
(わっ、もう無くしたと思っていたのにぃっ!)
 当時の写真や思い出の品などは手元に残っているのに、なぜか書き留めていた日記だけが見あたらなくて、いつしかあきらめていたりこであった。
(わぁあ見つかってよかったあ!!)
 誰もがそうするように、りこは手を止めてその日記を読み進めていた。
出発の成田空港での様子から、機内での出来事、初めて見たLAの空と、17歳当時の感情で飾り気なく書き記されたそれは、わずかな文字数にもかかわらず鮮やかな情景が思い起こされる懐かしいものであった。
(この時の1ヶ月があったから、私の英語人生が変わったんだもんなあ・・)
 数ページにわたって書き込まれている思い出に浸り、りこは感慨深げにノートを抱きしめて目を閉じていた。
そして、久しぶりにホストファミリーにメールしてみようと思った。
(え、これはっ!?)
 ふたたびノートに目をやったりこは、ある日の記述に
《ホント苦しかったっ!危ないとこだった。これはトップシークレットだあっ!もうオーバーオールはや〜めた!》
 と、ただそれだけを書き記しているページに目がとまった。
一瞬、なんのことだったっけ??っと、思いを巡らすりこ。
その日付や前後の日の出来事などを読み返して関連を探すが、それにまつわる内容は見あたらない。
(オーバーオール・・?)
 ヒントはそれに違いない。
(オーバーオールねえ・・オーバー・・あっ!!)
 それはまぎれもない、当時17歳のりこが初めて体験した、今となってはすばらしい、しかし当時では苦痛でしかなかった出来事を表しているものであった。

 りこが交換留学でホームステイしたのは、ロサンゼルス郊外にある5人家族の家であった。
そこの家族になるのだから両親のことをDadやMomと呼ぶことになる。
初め恥ずかしくてなかなかそう呼ぶことが出来なかったりこであったが、大学生の姉、ジュニアハイスクール2年の妹に小学生の弟と、にぎやかなに家族に囲まれた中で暮らし始めると、すぐに家族と馴染んで行くことが出来た。
特に小学生の弟は、異国からやって来たりこに興味を示し、まるで実の姉に甘えるかのようにしてまとわり着いて離れなかった。
それは言葉の壁など無意味であるかのような馴染み方であった。
 一方ふたりの姉妹と話すファッションや音楽の話などは、りこの単語力だけでも充分に通じあえるものがあり、姉や妹が反応を示してくれる事が、りこにとって大きな自信へとつながっていった。
 不安で泣きそうな顔をしながら訪れたりこが、暖かい家族の元でその一員となり、その顔に自然と笑みがこぼれるようになると、両親はその姿に目を細くして喜んでくれていた。

 毎日が驚きと感動と反省の連続で、あっという間に3週間が過ぎていったある日、3人の姉弟たちはそれぞれ登校して、家にはMomと仕事が休みのDad、それにりこの3人が残り、Momは家の片付けを、りこは庭の芝刈りをするDadを手伝って いた。
 お昼近くになったとき、Momが出かけましょうと言ってきた。
するとDadは、家でやり残している仕事があるので、すまないが一人で行ってくれ。昼食は適当にとるよと言っていた。
「そうお。じゃあRiko!、あなた一緒に行きましょうよ。」
 Momはそう言ってりこを誘った。
「え、いいんですか?、ハイ!喜んでお供します!」
 りこはMomと連れだって車で出かける事が嬉しくて、笑顔で即答していた。
Momはこの日、祖母の家での用のあと、ショッピング、教会、銀行と、かなり詰め込んだ予定を組んでいようで、祖母の家では昼食を一緒にと勧められても、時間がないからと断って「この次ゆっくりと!」と約束して次の行動に移っていた。
「おなかがすいたわね。先に食事にしましょう。」
 ショッピングモールへ向かう途中で、Momはそう言ってWendy'sというファーストフード店に車を停めた。
賑やかな店内で、りことMomは窓際の席に腰を下ろす。
ずっと庭仕事の手伝いをしていたために、さすがにりこはノドが乾いていて、大きなハンバーガーを口いっぱいにほおばりながら、Refill Free…つまりフリードリンク制のジュースを心地よく飲んでいた。
「日本のファーストフード店ではRefill Freeはやっていません。」
 と、少し恨めしそうに言うと
「おやそうなの?じゃあ好きなだけ飲みなさい。」
 Momに薦められるままに、りこはMサイズのカップにもう一杯お代わりをし、店を出るときにはそのカップに並々とアイスティーを注ぎ込んでいた。
Momが運転する横でそれを飲みながら会話をする事が、いかにもアメリカ的なように思え、楽しくてたまらないりこであった。
(ほんと、日本でもこんなだったらいいのになあ!!)
 次の目的地のショッピングモールに向かう車の中で、りこは日本の高校生活や家族のこと、はては彼氏のことまでも、アイスティーを飲みながらつたない英語で一生懸命に話をし、Momは感想を加えながらそれに言葉を返してくれ、りこにとってはとても充実した楽しい時間を過ごす事が出来た。

 程なくして大きなショッピングモールに着くと、りこはMomのうしろをついて回るようにして買い物を手伝い、カートに山積みの食材を押しながら車に戻ると、大きなクーラーボックスに肉や魚などを入れ分けて積み込んだ。
「これで1週間は買い物に行かなくてもいいわ!」
 額の汗を手でぬぐうような仕草をしながらMomが嬉しそうに言う。
郊外に家があるために、買い物はいつもまとめ買いになるようだ。
「疲れたでしょ?もう少しだからがんばってね!」
「ううん、私はへっちゃら!それよりMomこそ大丈夫?」
 たどたどしくはあっても、それなりに相手を気遣う会話ができるようになっていたりこである。
Momはそんなりこの成長ぶりが嬉しくてたまらない様子であった。
 それからしばらく走って教会に着く。
Momは、用事はすぐに終わるから車で待つようにとりこに言った。
エアコンを止めた車のウインドウ越しに、午後のけだるさが漂う風を感じながら、退屈になったりこは少し眠気を感じていたが、それと平行して先ほどから気になる体の変化も感じていた。
(・・おしっこしたくなってきた・・)
 朝からずっと芝刈りの手伝いをしていたりこは、Momに誘われて手を洗うと、すぐ車に乗り込んだためにトイレに行っていなかった。
汗ばむ日差しの庭にいたことで、尿意など全く感じていなかったからであるが、Refill Freeの飲み物を3杯も飲んだことで、それらが作用してきても当然と思える時間経過である。
おまけに車はエアコンを効かせていたので、りこは道中少し寒く感じていた。
(Mom!早く帰ってきて。トイレ行きたくなってきたよぉ・・)
 少し不安を感じ出したりこを慰めるかのように、広い空には白い雲がゆっくりと流れていく。
(Momが戻ってきたら教会のトイレを使わせてもらおうかなあ・・)
 ボンヤリとその雲を眺めながらりこはそう思っていた。
しかしすぐに戻ると言っていたMomが姿を見せたのは、それから15分も過ぎてからであった。
「ごめんなさいね。神父さんとのお話が長引いちゃって・・」
 と、少し申し訳なさそうにりこの顔を覗き込む。
その優しそうな目で見つめられると、りこはつい「いいえ!」と応えてしまって、トイレに行きたい事を言い出せなくなってしまった。
「用事はあと一つだけだから我慢してね。」
 そう言いながらMomは車を走らせる。
その振動がりこのおなかへ直接伝わり出して。
(だんだんおしっこが溜まってきてるよぉ!)
 鈍かった尿意がはっきりと感じられるようになり、りこは少し辛いなと思いだしたが、それでもまだMomにそのことを伝えられずにいた。
「予定よりも遅くなっちゃったわね。急ぎましょう!」
 Momのその言葉が唯一の頼りになったが、それでもジワジワと押し寄せてくる尿意は、りこの不安をかき立てていた。

 最後の目的である銀行にはりこも一緒に入った。
そこは閉店が近いせいか混み合っていて、急いで書類などに記入しているMomに対し、りこは未だトイレに行きたい事を言い出せずにいた。
(どうしよう・・急いでいるみたいだし・・言いにくいなあ・・)
 落ち着きなくソワソワとするりこ。
Momがカウンターごしに行員となにやら込み入った話をしだした。
(今のうちに!)
 そう思ってキョロキョロと店内を見渡してみたが、そのどこにもトイレットらしき表示が見あたらない。
(お客さん用のトイレってないのかなあ・・?)
 銀行などにまだ無縁のりこにしてみれば、店内にトイレがあるのかどうかなど知る由もないのは当然であった。
かといって行員に「トイレ」を告げる勇気もない。
(Mom!私・・おしっこしたいの!!)
 りこはカウンターで話し込んでいるMomの後ろ姿に、頭の中で何度もそんな言葉を投げかけながら、ソファーに腰を下ろして貧乏揺すりのように足を動かしていた。
 それから5分ほどが過ぎ、いくつかの書類をバッグにしまい込みながらMomが席を立った。
「ごめんね Riko!さあこれで用事は全部終わったわっ!」
 申し訳なさそうに言うMomに、りこは今しかないと思って立ち上がり、トイレに行きたいことを告げようとした。
が、いざとなると焦ってしまってうまく英語が出てこない。
(えっ・・こういう時ってなんて言えばいいんだっけ・・?)
 トイレにまつわる日常会話を思い出そうと、半開きの口で一点を見つめているりこに、
「どうしたのRiko?、さあ行くわよ!」
 何も知らないMomはにこやかな顔でそう言ってりこを促した。
「あ・・はい!」
 またトイレに行きたいことを伝えられなかったりこ。
大きく膨らんだ不安と、それ以上に膨らんだ膀胱を抱えたまま、Momと並んで駐車場へと歩いていった。
「ごめんねRiko、退屈だったでしょ?」
「あ・・ううん!」
 笑顔で応えるりこであったが、その表情は少しこわばっていた。
「さ、あと30分もあれば着くから、夕飯の用意も手伝ってね。」
「はい!」
 エンジンを掛けながら言うMomに、りこは元気よく返事を返したものの、その「30分」がとても不安でならない。
(30分もかかるのぉっ!?)
 今すぐにでもトイレに駆け込みたいほど膀胱が緊張しているりこにとって、その30分はとてつもなく長い。
(30分・・そんなに我慢出来るかなあ・・?)
 先ほどから下腹部は危険信号を出している。
Momと出かけてからは汗をかく事がなかったので、飲んだジュースのほとんどが膀胱へ押し寄せて来ているようで、それはズッシリと重さを感じるほどに膨れあがって、その存在をアピールしていた。
(どこかで・・トイレに・・)
 頭の中ではそんなことを考えても、それを口に出すことが出来ない。
日本のように少し走ればコンビニやお店があるといった環境ではなく、LA郊外のそこは、まばらに大きな住宅が点在するだけの静かな住宅地で、トイレを借りられるような施設など何もない。
(どうしよう・・道でなんか出来ないし・・)
 まだMomにトイレを我慢していることさえ告げていないのに、いきなり車を止めてもらって木陰で・・など出来るはずもなかった。
(でもおしっこしたい・・こんなに我慢してるの・・初めてだよぉ!)
 不安はますます強くなる。
学校の集団生活の中で、時には思うようにトイレに行けなくて困ったことは数知れずあったが、特に失敗したことも、あるいはトイレ以外の場所で用を足したこともなく過ごしていたので、今ほどの辛い我慢はしたことがないりこであった。
経験したことがないほどの膀胱の膨らみにとまどい、その苦痛に気が動転してしまって、不安で何も考えられない。
デニムの上からでも分かるほど丸く張ったおなかをかばいながら、それでも運転するMomにそれを悟られないようにと、りこはしっかり足を閉じて、両手をヒザの上に置き、指先に力を入れて耐えていた。

(Mom!!おしっこが漏れちゃうよぉっ!早くぅぅ!!) 
 りこの必死の願いが通じたのか、それから20分ほどで家に着くことができたりこは、これでやっと苦痛から解放されると思って胸をなで下ろしていた。
が、気が緩むと一気におしっこの波が襲いかかり、思わず歯を食いしばるりこ。
車を止めると庭にいたDadがやってきて、荷物を降ろす作業を手伝ってくれた。
りこは必死の思いで食材などをキッチンに運ぶと、両親には何も言わずに2階へ駆け上がり、その足でバスルームに走り込んだ。
(おしっこっ!おしっこっ!おしっこ漏れるぅっ!!)
 バスルームに入った事でまた安堵感が生まれ、思わず漏れてしまいそうになるのを精神力だけでグッと堪えて、りこは大急ぎでズボンを・・
「えっあっ!!」
 非常事態に陥っているりこが直面したのは、芝刈りを手伝うために穿いていたオーバーオール姿の自分であった。
「あああっもうっこんな時にかぎってぇっ!」
 一気に押し寄せてきた尿意にとまどい、それを必死に我慢することだけに気を取られていたりこは、脱ぐのに時間が掛かるオーバーオールを着ている事など今の今まで気にしていなかった。
「やばいっやばい漏れちゃうよっ!」
 便器の前に立ってジタバタと足ふみをしながら、必死にそれを脱ごうとしたが、焦ってしまって思うように手が動かない。
「え、あれっ!?」
 あろうことか、オーバーオールの前後を止めている肩ヒモのボタンが、なぜか右側だけ外れない。
どれだけ強く引っ張っても、あるいは肩ヒモの周りに少し余裕を持たせても、ボタンホールに食い込んでしまったそれは外れなかった。
焦ったりこは、ボタンを外さないまま脱げないものかと、何度も体をくねらせて試してみたりもしたが、デニム生地のそれは上半身をしっかりと包み込んでいて、そんな余裕は全くなかった。
おしっこは我慢の限界を超えて、精神力だけで堪えているりこは、
(もれちゃうっ!)
 そんな焦がして、慌ててその場にしゃがみ込んだ。
そのままかかと押さえをして、波が引くのを待って気を落ち着かせようとしたが、現実は何も解決していない。
(やばいっ!もう我慢できないっ!どうしようっ!?)
 少し漏らしてしまったのか、パンツの中が湿っているような気さえする。
(もうだめぇっ!)
 どうしていいか分からなくなったりこは、体に力を入れないようにそっと立ち上がると、急いでバスルームを飛び出して叫びながら階段を駆け下りていった。
「Mom!Mom!! Help! help me! I can't! I can't!」
 キッチンで夕食の準備を始めていたMomは、りこのそのあわてた様子に驚いてリビングに駆け寄ってくると
「What? What's happened? Riko? 」
と、両手でりこの肩を抱いた。
その時のりこは、もうパニック状態に陥っていて、
「おしっこぉっ!おしっこ漏れちゃう!これ外れないよぉっ!!」
と、何もかも忘れて日本語でそう叫んでいた。
両手をおまたの間に入れ、前屈みになって足踏みしながら、りこは涙ぐんで
「pee! pee!!」
と、かろうじてその単語だけが口に出ていた。
その状況を察したのか、Momは慌ててボタンを外そうと試みてくれたが、
「Riko, Don't move!」
 しきりに体を揺すっているりこに対し、Momはそう言って肩を押さえたが、初めて経験する強烈なおしっこ我慢のために、じっとしている事などできるはずもないりこであった。
「だめだめだめっ!じっとしてたら漏れちゃうよぉっ!」
 日本語でそう叫びながら、それでも
「Mom! please! please!!」
 と、涙ながらに訴えていたりこ。
それでもやはり外れないボタンに、Momは身を返すとキッチンに駆け込み、窓を開けて庭仕事をしているDadを大声で呼び寄せた。
ただならない雰囲気に何事かと駆け寄ってきたDadは、すぐに状況を察して男の力でトライしてくれたが、それでもやはりそのボタンは外れなかった。
「もぉダメ・・もう我慢出来ない・・出ちゃうぅっ!」
 りこがそう叫びかかった時、
「Just a minute!! 」
 そう言いながらキッチンに走り、手にハサミを握って戻って来たDadが、
「Cut.OK!?」
 ボタンを縫いつけている糸と、ボタンホールのほつれた糸が絡み合っているから切ってしまうしかないと言った。
おしっこが出来るのならもう何でもいいっ!と、りこはウンウンと涙を流しながらうなずいたその瞬間、パチンッと、たったそれだけの音が聞こえ、あれほどりこを苦しめていたオーバーオールの右肩ヒモが、パラリと前に垂れかけてきた。
「あああっ、おしっこ出ちゃうよっ」
 あまりの切迫感に、りこは両親にお礼を言うこともできず・・いやそんな余裕すら失っていて、ソファーから立ち上がると片手は股間に入れ、もう片方で垂れたオーバーオールの胸元を押さえながら、再び階段を駆け上がってバスルームに 駆け込んで行った。
もう一刻の猶予もない!
バスルームのドアを閉めた瞬間、飛び跳ねるようにしてシューズを脱ぎ捨てると、そのままの勢いでオーバーオールもストンと脱ぎ落とし、便器を横切ってバスタブの中に飛び込んでいった。
ジュゥ〜・・
まさにその瞬間、あれほど必死になって我慢していたおしっこがパンツの中に音を立ててあふれ出し、それは渦を巻きながらりこの両方の太ももを伝って、あるいはパンツの生地を通り抜けて、勢いよくバスタブの床にビチャビチャと音を立ててこぼれ落ち、ソックスを濡らしていった。
パンツを脱ぐ余裕すらなかったりこ。
「・・やっちゃったぁっ」
 思わず吐き捨てるようにつぶやく。
よくこれほどまで我慢できたと思うほどの強烈な尿意に耐えていたりこは、Dadにハサミを入れてもらう時までは精神力で耐えていたが、カットされた瞬間に『これでおしっこできるっ!』と思ってしまったために、それが一気に崩れ落ちてしまって、階段を駆け上がる段階でかなりの量がパンツにしみ出して来ており、それでもりこはそれを認識しながら必死で駆け上っていたのであった。
(だめっ、間に合わないっ!!)
 直感でそう感じたりこは、同時に
(バスタブの中ならっ!!)
 と、思っていた。
バスルームの床を汚してしまうより、バスタブの中でなら!!と・・。
シューズを脱ぎ捨てた事も、オーバーオールを脱ぎ捨てた事も、それらの行為は被害を最小限に抑えたいという、女の子の持つ本能がそうさせたのかも知れない。
 りこはおもむろにパンツに手を掛け、それをヒザまで降ろすとバスタブの中にしゃがみ込んだ。
下腹部の圧力が増した事により、おしっこはシュィ〜・・という乾いたような音に変化して、ビチャビチャドボボボ・・床面にたたきつけ、静かなバスルームの中で30秒以上もその音は響き渡っていた。
初めて体験した極限状態の我慢から解放されていき、思わずウットリとしてしまうりこ。
その勢いが弱くなってポタポタとしずくになってもまだ、りこはハァハァと肩で呼吸しながらその余韻に浸っていた。

 やがて我に返ったりこは、ゆっくりとバスタブの中で立ち上がると、すっかり濡れてしまったパンツとソックスを脱ぎ取ってバスタブの縁に掛けると、下半身にだけシャワーを当て、身を乗り出して棚のバスタオルを2枚たぐり寄せて、そ れでしっかりと体をぬぐってバスタブから出た。
(はあ・・ギリギリアウトだったけど・・MOMやDadの前でなくてよかったあっ!)
 安堵したものの、改めて恥ずかしさがこみ上げてくるりこであった。
そのままノーパン状態でオーバーオールを穿き、そっと自分の部屋まで移動すると、急いで新しいパンツと別のジーンズに穿きかえて、ビニール袋を持ってバスルームに戻り、そのままにしていたパンツやソックスをそれに丸め込んで部屋に 持ち帰った。
(もうオーバーオールなんか絶対に穿かないんだからっ!)
 固い決意でそう思いながら、そのビニール袋にオーバーオールも丸め込み、あとで見つからないように外のゴミ箱に捨てに行こうと思っていた。
 しばらくして気持ちが落ち着いたりこが階段を下りていくと、両親がリビングのソファーに並んで座ってお茶を飲んでいた。
「間に合ったかい?」
 Dadがそんな風なことを聞いてきたと思う。
「そんなことは聞かないのよ!」
 MomがそうたしなめながらDadの肩をつついていたように思う。
「うん。なんとか間に合ったよ。。ありがとう・・」
 りこは少しためらいながらそう応えたように思う。
あまりにも衝撃的な体験をしてしまったために、その余韻がまだ冷め切っていなかったりこは、直後の会話をあまり覚えていなかった。
そして、毎日つけていた日記にも、その詳細を書くことはなく、ただ
《ホント苦しかったっ!危ないとこだった。これはトップシークレットだあっ!もうオーバーオールはや〜めた!》
とだけ書き記していた。

(あは・・私の原点を再確認っ!)
 まるでつい先日の出来事であったかのように、鮮やかにその情景を思い起こしていたりこ。
懐かしさに包まれながら、さらに残りのページを開いていく。
(ん〜・・なんかおしっこしたくなってきちゃった・・)



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