ゆいちゃん 8(ササンビーチの恋)後編




3日目 夕焼けのサザンC

 翌日はあいにくの雨で、唯たちはどこへも行くことが出来ず、珠希のうちでゴロゴロしていた。
祐介たちとは「また明日!」と交わしただけで、具体的な約束はしておらず、ましてやこの雨では海に出てもどうしようもない。
 珠希が朝シャンをしに行った。
降りしきる雨を恨めしそうに眺めながら、大きなソファーに座った唯は、ついつい祐介のことを思い出す。
(祐介さん・・何してるのかなあ・・?)
そして昨日の海での出来事・・・。
祐介に、水の中でおしっこをしてしまったこと、きっとバレているであろう恥ずかしもさもよみがえってくるが、それよりもあの感触・・・。
(祐介さん・・私の胸で感じてくれてたなあ・・)
唯は祐介に触られていた左胸にそっと手を当て、少しずつ力を入れていった。
(はぁ・・)
これまで感じたことがない切ない思いが唯を包み、体の奥の方がジーンと熱くなってきて、思わず目を閉じる唯。
その手を離すことが出来ず、ついつい力が入ってしまった。
 そこへ勢いよく珠希が戻ってきた。
唯はあわててソファーから立ち上がる。
「唯も朝シャンしておいで。気持ちいいよ!」
「あ、うん、そうするね。」
唯は気恥ずかしくなって、珠希に目を合わさずにバスルームに向かった。
脱衣場で下着を脱ぐとき、
(やだぁ、少し濡れちゃってる!)
オクテな唯が今、何かを感じだしていた。

 午後に入り、ようやく空の雲が切れだして日差しが戻ってきた。
今更泳ぐ気力はなかったが、それでも唯は訳もなく海に行きたかった。
そのことを珠希に伝え、一応水着の用意はして、二人はまた海へ向かった。
 さすがに雨上がりと言うことで水も少し濁っており、すでに午後3時を回っていたために、海岸は閑散としていた。
波もかなり高く、泳げる状態ではない。
「唯、やっぱりどうしようもないよ。帰ろ!」
珠希が言うが、唯は何となくその場を離れたくなかった。
「じゃあさ、あたしはダチに会ってくるからさ、しばらくここにいなよ。」
「うん、わがまま言ってごめんね。」
「いいよ。唯の気が済むようにしな!」
珠希はそう言うと、唯を残して友達が働いているというグランドホテルの方へ向かった。
唯は乾きかかった砂の上に体育座りのように腰を下ろし、ただぼんやりと波を見つめている。
 どれほどの時間そうしていたのか、あたりはかなり静かになっていて、日は傾き、夕暮れを伝えだしていた。
そのとき、砂を踏む足音が近づいて来て、振り向こうとした唯の前に滑り込む人物がいた。
「パンツ丸見えっ!」
祐介であった。
デニムのミニで体育座りをしていた唯。
祐介はその前に滑り込んでいたのである。
あわてて立ち上がった唯は、
「残念でした。下は水着だもんね!!」
ペロッといたずらっぽく舌を出してみせた唯。
「なんだよ、生パンだと思って期待したのに!」
「すけべっ!」
「男はみんなそうなの。ところで何してたんだ、ひとりで?」
「・・・祐介さんを・・待っていた。」
「おっ、それは光栄だな。」
「祐介さんは・・どうしてここに?」
「んー、君を捜しに来た!」
「・・・」
しばらく見つめ合った二人は、やがて声を出して笑い出し、二人並んで砂に腰を下ろした。
 それから二人は、特に中身のある話をするでもなく、お互いの大学のことや気になる映画のこと等、とりとめのない話を続けていた。
 雨上がりとは思えないほどのきれいな夕焼けが広がってきたその時、
「おいで!」
祐介が立ち上がり唯に手をさしのべた。
唯はうなずいてその手にすがり立ち上がると、そのまま手をつないで歩き出した。
「・・どこ行くの?」
「うん、サザンC!」
「サザンシー・・ってなぁに?」
「うん、去年出来たばっかりのモニュメントでさ・・」
茅ヶ崎の頭文字「C」を形取ったそれは、Cのあいている部分に二人で立つと、ちょうどそれが円となって丸くつながる、いわば円ならぬ縁結びの輪として人気が上がってきたという。
「そんなのがあるんだ!?」
「うん。ふたりで立ってみよう!」
「え・・うん!」
サイクリングロード沿いに歩いて、二人はそのモニュメントにやってきた。
カップルたちがけっこう集まっていることで、人気のスポットになっている事が伺える。
唯は祐介と手をつないだまま、そのモニュメント「C」のあいている場所に立った。
Cがつながり輪になって、夕焼けの向こうにえぼし岩が見えている。
グイと祐介が唯を抱き寄せた。
そのまま唇を重ねる二人。
ヒューヒューとはやし立てる口笛が聞こえていた。
気にすることもなく、二人はかなりの間じっと唇を重ねていた。
 しばらくして珠希から唯の携帯に連絡が入り、唯は待ち合わせのグランドホテルへと向かうことになった。
途中まで祐介が送ってくれる。
「明日は午前中に用事があってさ・・、」
「うん・・」
「午後からならまた会えるよな。」
「うん。明日も海にいるよ。」
「おう!」
「じゃあまた明日!」
「おう、明日!」
二人は手をふって別れたが、このときになっても唯はまだ、佑介の携帯番号を聞けずにいた。

4日目 波打つ胸

 今日1日を楽しんだら、明日はもう新座に帰らなければならない唯。
この日は珠希の女友達も加わって、朝からいっしょに海ではしゃいでいた唯であった。
 海の家で昼食をとる女たち。
女だけということで遠慮がなく、大声ではしゃぎながらビールをあおったりもしていた。
唯も割と気軽に珠希の友達とうち解け、それなりに楽しく過ごしていた。
 午後になると雲が広がり、風が出始めて少し肌寒くなってきた。
唯たちはいったん海の家で休もうと、Tシャツなどを羽織って休憩していた。
「おやあ、みなさんおそろいだな!」
甚平姿の祐介が突然現れた。
「なんだよ、祐介一人かい?」
「おうよ、ちょっと唯ちゃんとデートなんだ!」
「あら、もうそこまで進んじゃってるんだ?」
「悪いな、しばらくわがままきいてくれ!」
「いいよ、唯もまんざらでもなさそうだしさ!」
みんなの前でそう言われ、唯は顔を赤らめた。
「ちょっと散歩しようぜ!」
祐介にそう誘われて、唯はパレオを腰に巻いて席を立った。
冷やかしの声を背中に聞きながら歩き出す二人。
唯はそれに優越感に似た感情を抱いていた。

 二人は手をつないで歩いたが、特にどこかに行く当てもなく、なんとなく海岸を歩くだけであった。
唯はそれで十分満足であった。
祐介に対する恋心が芽生え、一緒にいられる、一緒の時間を過ごせるということが、すごくうれしく思えていた。
つないでいる佑介の腕が、時々唯の胸に軽く当たる。
それもまた心地よく感じる唯であった。
 それをあざ笑うかのように、にわかに空が暗くなり、かなりきつい風が吹き出して気温が下がり、やがてポツリポツリと大粒の雨が降り出してきた。
「やべえっ!」
祐介は着ていた甚平の上半身を脱ぎ、唯の頭にかぶせると、
「けっこう降りそうだ。緊急避難するぞ!」
そう言って唯の手を引いて走り出した。
「え、どこへ!?」
「おれん家、すぐそこだろ!」
確かに何となく見覚えがある風景。
そう、そこは祐介のうちのすぐそばであった。
しかし唯は、Tシャツを着ているとはいっても、水着のままで彼の家に行く事に抵抗を感じた。
が、ものの1分もしないうちに、あたりは滝のように強くたたきつける雨になり、強い風にもさらされて、二人はあっという間にずぶ濡れになってしまった。
そのすさまじい光景に唯は少し恐怖を覚え、佑介の手をしっかり握り直して走っていた。

 また母屋には寄らず、佑介の部屋がある離れまでたどり着くと、その縁側で足を拭き、祐介が先にあがってバスタオルを数枚持ってきてくれた。
「Tシャツも脱げよ。カゼひくぞ。」
「え、でもぉ・・」
「何言ってんだよ。下は水着だろ。」
「うん・・」
「じゃあいいじゃん。しばらく俺のシャツでも着てろよ。」
そう言って彼は唯を部屋に入れ、タンスから洗い立てのシャツを唯に手渡して部屋から出て行った。
 激しい雨で海水のべたつきが流され、まるでシャワーを浴びた後のようなさっぱり感を感じていた唯。
びしょびしょになったTシャツとパレオを縁側に置き、バスタオルを取り替えて濡れた髪を拭いていると、縁側から吹き込む雨まじりの風に少し寒気を感じた。
おまけに・・
(やだ・・おしっこしたくなってきた・・・)
実はこのとき、唯はお昼に飲んだ中ジョッキ1杯半のビールが作用してきていたのであった。
昼食の後いったん海に入り、珠希に教えてもらった要領で、1度は水の中で済ませていたが、それ以降、肌寒い風にさらされ、今はこうして雨に打たれて体が冷えたために、急速に膀胱が膨らんできたのであった。
(やだなあ・・こんな時に・・・。)
ただでさえ男の人の前でトイレに行くのが恥ずかしい唯。
ましてや一昨日、海の中でしてしまったこと、きっと祐介は知っている。
それを思うと、唯はここでトイレを借りる事が恥ずかしくてたまらない。
(やだなあ・・どうしよう・・)
 そこへ、別の甚平に着替えた祐介が、熱いコーヒーを入れて持ってきてくれた。
由衣は飲みたくなかったが、暖まるからと勧められ少し口にすると、
「なんか入ってる!?」
「うん、ブランデーを少し入れてあるよ。その方が暖まるしね。」
「ふーん・・」
下腹部に不安を抱えながら、唯は少しずつコーヒーを口にしていた。
 縁側から吹き付ける雨の混じった風が寒く、唯が少し身震いしているのを見て、祐介はガラス障子を閉めてくれた。
風が途絶えると急に部屋は蒸し暑くなってくる。
「ドライにしておくか。」
そういいながらエアコンのスイッチを入れ
「おいで!」
と由衣の手を引いた。
座椅子にもたれかかって座る祐介の膝の上に、横座りの格好で腰を下ろすようにされた唯。
唯の右90度に祐介の顔がある。
「水着、まだぬれてるよぉ。」
「平気平気!」
水着のままで膝の上に座るのは恥ずかしかったが、抵抗感は弱かった。
唯が腰を下ろすと、佑介はむき出しになっている足にバスタオルを掛け、そして両手で肩を抱きしめてくれた。
「こうしていたら暖かいだろ?」
「ん・・」
恋人同士ならすごく自然なその行為。
本来なら唯もそれがうれしいはずである。
しかし唯はおしっこがしたくなっていて落ち着かない。
祐介は濡れている唯の髪を手ぐしでとかしながら言った。
「なんかさ、こうして抱き合うのって2回目だよな。」
「・・え?」
「水の中よりこっちの方がいいや!」
「エッチ!」
「ん?」
「・・あのとき祐介さん・・私の胸・・触ってた!」
「ああ、そうだったっけ?、ん・・こんな感じだったかな?」
そう言うが早いか、祐介は右手を肩から離して唯の左胸に当てがった。
「きゃっ!」
思わず声を上げる唯。
さらに祐介は左手で唯の顔を自分の方に向けさせ、唇を重ねてきた。
「ん・・」
甘い感触と感覚が唯の体に広がっていく。
お決まりのように進んでいくその流れに、恐怖心は全く感じず、唯はためらいながらも身を任せて、その感覚に浸っていた。
しかし、おしっこがしたくて落ち着かない現実がじゃまをして、
「ん・・ん!」
佑介から逃れようとしたが、左手でしっかり押さえられているために顔は動せない。
息も苦しくなってきた。
(!)
そのとき、唯の左胸にあった手が少し動き出した。
「ん!」
まるで円を描くように、その手がゆっくりと唯の胸さすっていく。
「んっ、んっ!」
唇を重ねているために声も出せないでいる唯。
唯の右腰骨(腸骨)あたりに、祐介の固くなったものが当たってきている。
甚平という薄い生地を通して、唯の肌に感じるそれは、水の中で感じた時よりも直接的で熱く、唯の感情はますます激しくなり、パンパンに膨らみかかった膀胱を無視して、体の中に熱い感覚がうずを巻きだしていた。
「うっ!」
胸にある手に力が加わり、乳房を持ち上げるような動きをされ、唯は思わずうめき声を出してしまった。
「痛かった?」
祐介がやっと唇を離して、優しくそう聞いた。
唯は言葉を出せず、うつむいたまま首を横に振る事しか出来ずにいた。
確かに今のは衝撃的で、思わずおしっこが出そうになってしまっていた。
「俺さ・・唯のこと、本気で好きになっている!」
胸においていた手を離し、祐介は唯の顔をのぞき込むようにしてそう言った。
すごくうれしいその言葉。
唯は涙が出そうになっていたが、ビールの作用で急速に高まった尿意がますますその勢いを増し、この場をどうすればいいのかわからなくなってしまって、頭の中はパニックになりかかっていた。
(こんな時に言われてもさ・・どうしたらいいのよぉ!?)
おしっこがしたい。したくてたまらない!
けれど今はその事を告げるような状況じゃない!
佑介さんが私のことを好きだと言ってくれている。
私の体に感じてくれている。
私もそれに応えたい!
でも、すごくおしっこがしたいっ!
ジンジンと脈を打つような存在感が、許容量まで膨らみきった膀胱から発せられてくる。
 そんなときに祐介の手がシャツの中に入り込んで、今度は水着の上から胸を触りだした。
「あ・・あの・・」
唯は、やはり今トイレに行きたいことを伝えないと、なんだか大変なことになってしまいそうな気がして、必死で声を出した。
「大丈夫だから!」
なにが大丈夫なのかわからない唯。
そうしているうちに、祐介は水着のブラの隙間に指を滑らせて、固くなりかかっている乳首に触れてきた。
「あんっ!」
甘えたような声になる唯。
「ふ、かわいいなぁ唯!」
おしっこがしたい!おしっこがしたいよ!
破裂しそうな膀胱のうずきと、体の芯からうずいてくる初めての感覚とが入り交じり、唯の頭の中は真っ白になって、意識がもうろうとしかかっていた。
 水着のブラは上の方にズリあげられ、佑介は両方の胸に交互に触れる。
時には円を描くように手のひらを滑らせ、時には指先で乳首を転がす。
経験したことがないそれらの行為で、唯は完全に力が抜けてしまっていた。
ただ一点だけはかろうじて守られていたが、それはおそらく、唯が持つ人一倍強い羞恥心からくるものであったろう。
「はっはっ・・」
だんだんと唯の呼吸が荒くなっていった頃、祐介がシャツをめくりあげた。
恥ずかしい!胸を見られてしまう。
「いやぁんっ!」
唯は力が入らない手でそれを拒もうとしていたが、佑介の動作の方が早く、水着のブラをずり上げられているために、それはすぐに佑介の目の前に姿を表してしまった。
「きれいな胸だなあ、オレ感激だよ!」
その声に、唯は我を忘れるほど感情が高まり、佑介の背中に腕を回して横半身で抱きついた。
あれほど高まっていた尿意が、この一瞬は消えてしまって、どうなってもいい!、ずっとこのままこうしていたい!!
佑介さんが望むなら我慢する!
そんな感情までわき上がってきていた。
 が、現実は唯にとって残酷であった。
佑介の右手が足にかけてあるバスタオルの下に滑り込み、太ももをさすりだし、やがてその手が丸く膨らんでいる下腹部にまで移動してきた。
ただ手を置かれただけなのに、張り裂けそうなほどに膨らみきった膀胱にはかなりの外圧に感じられ、唯は思わず腰を引くような仕草をしてしまった。
その刺激に耐えられなくなったのか、あれほど固く閉ざされていたはずの一点が開きかかり、ジュッ!と熱いほとばしりを足の間に感じた唯。
(やっ出ちゃだめぇっ!)
今ここでお漏らしなんかしてしまったら、恥ずかしくてもう祐介の顔さえ見れなくなる。
唯は何度も足をよじって、中からこじ開けようとしている扉を必死で閉めようとした。
しかし明らかに許容量を超えてしまっている膀胱は、もう崩壊寸前まで達していて、唯のその仕草をあざ笑うかのように、中から圧力をかけ出した。
(いやん!いやん!いやんっ!)
太ももをこすり合わせてもがく唯。
それは祐介にも異様な行動として映った。
「ご、ごめん、調子に乗りすぎた。」
思わず手を引いた佑介が申し訳なさそうな声で謝った。
「あ、ちがう・・あの・・」
ふるえながら足をもじつかせる唯に
「どうした?、まだ寒い?」
祐介のその優しい言葉がきっと最後のチャンスなのであろう。
今しかない!とばかりに、唯は羞恥心を完全に振り払って、
「ご、ごめんなさい、ト、トイレ!!」
かなり早口で叫ぶようにそう言った。
その声は完全にかすれてしまっていた。
祐介ははじめキョトンとした顔をしていたが、
「ああそっか、悪い!。気づかなかった。」
「ご、ごめんなさい・・」
唯は自分を愛してくれようとしている祐介に対し、それを中断させたことが申し訳なく思えて、思わず謝っていた。
ゆっくりと唯を膝からおろそうと、脇の下に手を入れる佑介。
「いやっ!」
「え?」
もはや少しの衝撃でも決壊してしまいそうな唯の膀胱。
今は誰かの力で動くより、自分の信じる力で動いた方が安全である。
唯はそう思って最後の力で祐介の膝から滑り降り、そばのテーブルに手をかけてゆっくりと立ち上がろうとした。
足にかけていたバスタオルがハラリと落ち、かなり丸く膨らんだ下腹部があらわになったが、今更どうしようもない。
四つんばいの格好のまま立ち上がることが出来ずにいる唯。
「ど、どこっ!?」
パニクった声でそう叫んでいた。
「すぐ隣だから、さ!」
祐介も事の重大さに気がついたようで、唯に手をさしのべようとした。
ようやくその手を握りしめた唯だが、それでも体を起こす事は出来ず、かなり前屈みのままである。
「あ、くっっ」
押し寄せてくる大きな排尿感を必死でこらえるため、片手はどうしても前に行ってしまい、ギュッと押し上げるような仕草までしてしまっていた。
今更恥ずかしいと言っている余裕など全くなくなっていた唯。
「ごめんなさい・・」
何度かそんな言葉を口にして、祐介に手を引かれながら縁側に出ると、ものの数歩で目指すトイレに到着した唯。
「はぁはぁ・・」
かなり荒い呼吸である。
「大丈夫か?」
扉を開けてくれた祐介の顔を見ることが出来ない唯は、そのまま中に入り込んだ。
そこは、入ったところが男性用の立ち小便器、その奥に和式便器がある古い型のくみ取り式トイレであった。
「ご、ごめんなさい・・」
唯はスリッパを履く余裕もなく、佑介から離した手でその奥の扉を引いた。
ホーロー式の便器をまたぎ、片手は押さえたまま、もう片方の手で水着のパンツを押し下ようとするが、ただでさえ体にフィットした水着の、ましてや生乾きのそれは言うことを聞いてくれず、どうしても押さえている手を離して両手を使うしかない。
フッと息を吐いた唯は、思い切って覚悟を決め、力を入れてパンツをずり下げると同時にしゃがみ込んだ。
すぐにシィイーという音がして、ドボボボボ・・とホーローの便器に当たる勢いのよい音が響き渡った。
「あ・・ふぅう・・」
寒気にも似た感覚が唯の背中を走り、つい声が漏れてしまう。
シャラララララ・・
唯のおしっこが便槽にしたたり落ちていく音が響き、その時になってようやく唯は恥ずかしさを呼び戻してきた。
(やだ、すごい音っ!)
 内側の扉をしめる余裕もなくおしっこしていることに気づいたのは、40秒にも及ぶ長いおしっこが終わってからであった。
祐介がのぞいている様子はなかったが、それでもあの派手な音は絶対に聞かれている。
今更どうしようもなく、唯は開き直って後始末をしようとしたが、悲しいことにそこにはトイレットペーパーが用意されていなかった。
「やん、どうすんのよっ!?」
思わず声に出してしまった唯。
水着にもかなりおチビリしており、それとは別の何かの始末もしたかった。
「困ったなあ・・」
外にいるであろう祐介に助けを求めることも出来ず、唯は仕方なく何度かおしりを大きく降ってしずくを切り、そのまま水着を引き上げた。
(やだなあ・・)
そっとトイレを出てみると、祐介の姿はそこになかった。
唯は助かったとホッとして、部屋の中を見渡す。
机の上のティッシュボックスに目がとまった。
(よかったあ!!)
唯はそれをボックスごとわしづかみにし、またトイレに戻って出来る限りの後始末をした。
 祐介はそれからしばらくして、また新しいコーヒーを持って部屋に戻ってきた。
唯がトイレに入った直後、彼はすぐにコーヒーを入れに母屋の方へ行ったそうである。
それが本当かどうか確かめるすべはないが、仮にウソであっても、そういう彼の優しさがうれしく思えた唯であった。

 明日は新座に帰らなければならない。
今日が過ぎてしまえば離ればなれになってしまう。
そう思うと唯の心は張り裂けそうになり、ついつい涙があふれてしまう。
彼は優しく唯を抱き寄せていた。

そしてその少し後、唯は彼の部屋で大人になった・・らしい。

 その話にはとんでもないオマケがついていて、ビールの作用がまだ残っていた唯は、行為の途中からまた激しい尿意におそわれ、それを我慢して無我夢中で彼を迎え入れた。
その彼が唯の体から離れた瞬間、放心状態になった唯の堰が切れ、噴水のように吹き上げてしまったという。
部分的に紅く染まったおしっこが散らばって、後片付けが大変だっとも聞く。

 その後二人がどうなったのか、唯はいっこうに口を割らない。
ということは、案外まだ・・・


ゆいちゃんシリーズ おしまい!

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