真理っぺのおしがま 前編




「やっほー由衣、元気かー!?」
穏やかな日が続いていた11月3日、夕食の支度をしていた由衣に甲府の真理から電話がかかってきた。
「今な、新宿に居るんだけど、出てこれるか?」
軽いノリで誘ってくる真理であったが、夕食の支度に取りかかったばかりの由衣には無理な話。

由衣「真理っぺ、いつ東京に出てきたの?」
真理「さっき着いたばかりなんだけどさ、晩飯いっしょにどうだ?」
由衣「そんなあ、いきなりだよぉ!」
真理「そっかあ、まあ人妻だから自由が利かないわな!」
由衣「うん、それより・・急にどうしたの?」
真理「まあ彼氏がな・・・」

 話によると真理は、仕事の関係で上京した彼についてきて、日曜日まで都内のホテルに滞在するという。
「5日の土曜日ならお休み取れるよ。」
由衣はそう言って、希美も誘って一緒に会う約束を交わした。

 土曜日、由衣は東京駅で真理を待った。
希美の結婚式から1年と3ヶ月ぶりの再会である。
中央線快速から吐き出される人混みに埋もれて、ミニサイズのふたりがお互いの存在を確認しあうのは容易なことではなかった。
 久しぶりの再会を喜びながら、ふたりは大森駅へと向かう。
そこにはベビーカーに子供を乗せた希美が待っていた。

真理「ようののたん、相変わらずちっちゃいな!」
希美「よく言うよぉ。真理っぺが一番小さいくせにぃ!」
真理「へへん、おうおう、この子がカリーナちゃんか!?」
希美「カリーナじゃないよぉ、芹香!」
真理「ああ、セリカちゃんだったっけ!何ヶ月になる?」
希美「もう10ヶ月だよ。」
真理「そうかあ、納車10ヶ月かあ!ベロベロバー!」
由衣「真理っぺは相変わらずだねえ。」
真理「まあな、オイラ半分は冗談の人生だもんな!」
由衣「まだオイラっていう癖、直ってないんだ!」
希美「ほんとだ。彼氏の前でも言ってるの?」
真理「んー、そういやぁ言ってるような・・。」
由衣「へ〜え、じゃあ作っていない真理っぺなんだね。」
真理「なんだよそれ!?」
由衣「だってぇ、前の彼氏の時はさあ・・」
希美「そうだよね。無理して女の子してたみたいだった!」
真理「バカ言うない!、オイラはいつだってオイラだよ!」
由衣「ううん、今の真理っぺがホントの真里っぺだ。」
希美「ののもそう思うよぉ!」
真理「おいおい君たちねえ!!」

 この3人がしゃべり出すと止まらなくなる。
香織がいっしょなら、必ず割って入ってくれたので、ある程度のところで収まっていたと言えるだろう。
 3人は芹香ちゃんを連れたまま、駅前のモ◎バーガーに入り、久しぶりに会ったうれしさで盛り上がっていたが、芹香ちゃんが泣き出したところでいったん店を出て、希美のうちに押し掛けることになった。旦那さんは仕事で留守だという。
 泣きやまない子供を抱っこする希美は、幼い顔立ちの中にりりしさがにじみ出ているようだ。空のベビーカーを押しながら、由衣は思っても仕方がないうらやましさを感じていた。

 大森駅から歩いて15分ほどの住宅街の一角に、希美たちが住むマンションがあった。
由衣も真理も訪問するのは初めてである。
3LDKのそこは、由衣たちが購入したマンションとほぼ同じ間取りで、リビングにはソファーを置かず、広い空間を作っていた。
 トイレを借りた由衣が出てくると、希美は芹香ちゃんを寝かしつけてお茶の用意をしていた。

由衣「のの、この前お漏らししたのはこのトイレ?」
希美「ゆ・由衣ちゃんっ!!」
真理「なんだあ!、ののがお漏らしぃ!?」
希美「もうぉお。由衣ちゃんバカッ!!」
由衣「あ、ごめ〜ん・・」
真理「おいおい、ののがお漏らしって?」
希美「もうっいいの、そんな話はぁ!!!」
真理「子供を産んで締まりが悪くなったのか?」
希美「ち、ちがうよおっ!」
由衣「・・・・(@_@):」
真理「はは、ののが真剣に怒ってるぞ。聞かせろ由衣!」
由衣「あ・・えっと・・」
希美「もうおぉ、ふたりともキライッ!」
由衣「まあさ、もうこの際だから言っちゃおうよ。」
真理「そうそう、おしっこ博士の由衣がそう言ってるんだから!」
由衣「私は博士じゃないよ。博士は水風船って人!」
真理「ああそうだっけ。で!?」
由衣「うん・・ののちゃん、あれはいつごろだったっけ?」
希美「・・先月の事だよ。」
由衣「ののがね、芹香ちゃんを連れて西友に買い物に行ったんだって。」
真理「うんうん。」
由衣「赤ちゃん連れてだと、トイレ行きにくいじゃない!」
真理「抱っこしたままじゃあな。けどベビーカーだったんだろ?」
希美「トイレが狭いからベビーカーごとは無理だよぉ。」
真理「誰かに預けてって訳にもいかないか。」
希美「そうだよぉ。心配だもん!」
真理「身障者トイレなかったのか?」
希美「あったんだろうけど・・そこまで気が回らなかったよ・・」
真理「はは・・それでガマンしながら帰ってきたって訳か?」
希美「うん。」
由衣「けっこう必死だったんだよね!」
希美「まあね。」
由衣「泣きそうだったって言ってたじゃん!」
希美「・・・」
真理「ののは昔からトイレ近いもんな!」
由衣「でさ、トイレに飛び込んだら気が緩んじゃったんだよね!」
真理「ああ、わかるわかる!」
希美「ジーパンのホックがはずれなかったんだよぉ!」
真理「そうとう焦っていたんだ!」
希美「もうパンパンだったもん!」
真理「え、じゃあジーパンのままやっちゃたのか!?」
希美「・・・うん・・」
真理「あちゃー、」
由衣「大急ぎで拭き掃除してシャワーして、大変だったんだよね!」
真理「由衣にそうやって話してたんだ!」
由衣「うん、電話してきたよ。やっちゃったーって・・。」
真理「ははは・・、さすがおしっこ情報収集家!!」
由衣「それってホメてるの?」
真理「ホメ言葉だよ。」
由衣「そうお?、そうは聞こえないよ〜。」
真理「怒るなよ。オイラもひとつ情報をやるからさ。」
希美「真理っぺもお漏らししたのー?」
真理「バカ言うな。ののと一緒にするなよ。」
希美「ひっどーい!」
由衣「ねっね、どんな情報?」
真理「ほーら食いついてきた!!」
希美「お漏らしじゃないんだぁ・・。」
真理「オイラのは・・なんて言ったっけ・・そう、おしがま!!」
由衣「真理の?」
真理「そう。できたてホヤホヤ!!」
由衣「へ〜!」
真理「厳密に言うとさ、おとといと昨日の2回・・かな?」
由衣「そうなんだ!(ワクワク!!)」

 11月3日、真理と彼は昼過ぎに甲府を出た。
祝日の割に中央道は空いていて、都内まではスムーズに走ってこれたが、高井戸を降りた途端に渋滞に巻き込まれ、立ち寄ることになっていた中野の取引先には、30分近く遅れて到着していた。
「ここの社長に商品見本を手渡すだけだから。
彼はそう言って車を降り、雑居ビルの中に消えていったが、すぐに戻ってきて、
「社長が真理にも会いたいってさ。」
助手席の窓越しにそう言った。
「えーっ、オイラやだよぉ!!」
真理はそう言って渋ったが、待たせては悪いからと促され、重い足取りで事務所へと向かった。
「やだなぁ・・・」
真理は途中、何度もそうつぶやいていた。
初対面の人に「彼女です!」と紹介されることが恥ずかしい。
どう言って挨拶したらいいのかわからない。
フリースにジーパン姿では失礼にならないか?
長話になったらどうしよう・・
そう考えるだけで足取りが重くなる。
さらに加えて、真理はこのとき尿意をこらえていた。
甲府から休憩なしで走って来たために、もう3時間以上トイレに行っていない。
高井戸あたりから感じだした尿意は、この時点でかなり強くなっていた。
かと言って彼の取引先の会社でトイレを借りる勇気はなく、宿泊予定のホテルまではあと30分もあれば着くからと、我慢する覚悟をしていた矢先に降りるように言われたのであった。
 休みで誰もいない事務所を通り抜け、雑然と書類が積み上げられたせせこましい社長室で、真理は恥ずかしそうに挨拶を交わした。
古めかしいソファーに腰を下ろすと、思ったよりも腰が沈んでジーパンがおなかを圧迫する。
二人のなれそめなどを聞かれたが、真理は緊張して更に尿意が高まり、しどろもどろにしか口を開くことが出来なかった。
出された缶コーヒーを口にすることもできず、じっとうなだれたように下を向いてしまう真理に代わって、彼がいろいろと話してくれ、その後は仕事の話へと移っていく。
それは真理に全く共通性がない話で。黙って座っているだけでは居心地が悪い。
その疎外感が、真理の尿意をますます膨らませていった。

 わずか10分ほどの話が、30分以上に思えるほど長く感じられた真理であったが、やっと解放されたと思うと、あれほど高まっていた尿意も少し落ち着いてきたように思われ、挨拶もそこそこにして逃げるようにビルを飛び出した。
(トイレ・・行っておこうかなあ・・?)
車の前で一端立ち止まった真理。
そこは雑居ビルなのでトイレは共同であった。
事務所を出る時にそのことに気づいた真理は、彼にそう言って引き返そうと思い振り返ると、
「!」
先ほどの社長がビルから出てきて、ふたりの車のそばにやってきた。
社長は、仕事の件でいい返事ができるだろうと彼に言い、彼は、
「宜しくお願いします。これで失礼します。」
と頭を下げている。
そんなやりとりを目の前にして、真理はその場を離れることができなくなってしまい、彼に会わせてお辞儀を繰り返していた。

 夕闇が広がる街並みを、新宿◎シントンホテルへと向けて走る。
彼は上京するとき、いつもこのホテルに泊まっていた。
祝日の夕方ということもあって道路はどこも混雑で、ホテルの契約駐車場に着いたのは、それから30分後であった。
真理はその間、なんとか気を紛らわそうと、あえて自分から話題を振ってしゃべり続けていた。
 駐車場からホテルまでは少し歩かなくてはならない。
3日分の着替えなどを入れたバッグを抱えた真理は、激しい尿意を抱えているために、どうしても彼の歩調に併せて歩くことができない。
「重いのなら持ってやるよ。」
優しい彼は真理のバッグを取り上げ、肩に担ぐようにしてから真理の手を取った。
それでも真理の歩調は軽くならない。
元々30センチ近い身長差のふたりの歩調は合っていないのに、パンパンに膨らんだ膀胱をかばうようにして歩く真理は、まるでヨチヨチ歩きの幼児のようであった。
「どうした?」
さすがに彼も気になって、真理の顔をのぞき込んだ。
「あは・・オイラ・・トイレ行きたくってさあ・・」
真理は照れ笑いをしながらそう言う。
「ああそうか。じゃあ急ごう!」
「・・それが・・急げないんだよお。」
「ん?」
「実は・・かなりキテるんだぁ。」
「なんだ、ずっと我慢してたのか?」
「うん・・あの会社の前ぐらいから・・。」
「そうか、悪かったな。」
彼はようやく真理の置かれている状況を知って、いたわるように肩を抱きながら歩いてくれた。
 エスカレータに乗って3階のフロントに向かう。
時間的にチェックインは混んでいて、数人ずつの列がいくつか出来ていたが、比較的スムーズに進んでいるようでもあった。
「そこのエレベーターのそばに、たしかトイレあったぞ。」
ホテルカードをカバンから出しながら彼が言った。
「いいよ。部屋まで我慢するから。」
真理は、この進み具合だと彼を待たせることになると考え、それでは悪いと思ってそう答えていた。
「大丈夫か?、途中で漏らすなよ!」
「ばかっ、オイラ子供じゃないよっ!」
そうはいったものの、真理は内心ハラハラしていた。
彼にくっついて列に並んでいるのはつらい。
ジーパンの前はフリースで隠れてはいるものの、恥ずかしいぐらいに丸く膨らんでいる。
できることならその場でしゃがみ込みたい心境であった。
 ホテルカードを持っている彼のチェックインはサインだけで済み、すぐにカードキーが手渡された。
「あちゃ、今日は別館の方だ!」
「?」
「真理、また少し歩くぞ。大丈夫だよな?」
「ひえっ、どういうこと!?」
訳が分からないまま、真理は彼について1階まで降りた。
そして香ばしいパンのにおいがするカフェ横の扉を抜け、渡り廊下のようなところを通って別棟へと入っていった。
「ここの17階だよ。」
エレベーターを待ちながら彼が言う。
「ひゃー、もう最悪ぅ!!」
周りに誰もいない事で、真理は体をくの字に曲げ、膝に手を置いて足をくねらせながら叫んでいた。
「だからさっき行っておけばよかったのに。」
「もうおぉ、今更言うなよぉっ!」
確かに真理は後悔していた。
カードキーを受け取ったとき、もうすぐトイレに行けると気が緩んでしまって、激しい排尿感がおそってきていた。
なのにそれからまた歩かされ、いや、歩いているときはまだましで、こうして立ち止まってエレベーターを待っていると、最大級の波がやってきて、膨らみきった膀胱を縮めようとする。
「つぅっ!」
真理が小さく叫んだとき、ようやくエレベーターがやってきた。
幸い誰も乗り合わせる人は居ない。
少しでもおなかの圧迫をゆるめたい真理は、彼の後ろに回り込んでジーパンのホックをはずそうとしたが、上昇するエレベーターのGに耐えられなくなり
「ひゃうぅっ!」
子犬の鳴き声のような悲鳴を上げて彼の腕にしがみついた。
「大丈夫か?」
「・・まあ・・なんとか・・」
途中で誰も乗ってきませんように・・などと祈りながら、真理は必死でホックをはずしていた。
(はあ・・少し楽になったあ!)
ホックをはずしファスナーを下げたことで、おなかの圧迫が和らいで、激しい尿意が少しだけ軽くなったように感じ、真理はホッっとしていた。
(ひゃぁ、もう4時間以上・・しっこしてないのかあ!)
甲府の家を出る時にトイレはすませていたものの、昼食で紅茶なども飲んでいたから、それらが今、真理の小さな膀胱いっぱいにたまり込んでいる。
(ふぇえ・・早くしっこしたいってばっ!)

 17階のドアーが開き、廊下に人の気配がないことを確認しながら、真理は前屈みの姿勢で、両手を股間に挟んだままヨチヨチと歩きだす。
「大丈夫か?漏らしてないか?」
彼が半分笑いながら聞くが、真理はそれには答えず、
「いいから先に行って・・ドアを開けて!!」
かすれたような声でそう頼んだ。
今もしどこかの部屋から人が出てきたら、真理はすごく恥ずかしい格好をさらすことになってしまう。
しかし、あと数メートル先まで歩けばトイレに入れるという安堵感が、かえって真理を苦しめることになってしまい、もう身なりなどかまっていられなくなっていた。
 ドアを開け、壁のキーボックスにカードを差し込むと、部屋の明かりが薄暗く灯った。
「トイレのドア開けて!電気もつけてっ!!」
真理は叫ぶようにいいながら、それでもヨチヨチとトイレに向かう。
バスルームの一段高くなっている部分が、地獄の段差にも感じられた。
「覗くなよっ!音聞くなよぉっ!!」
自分でトイレのドアを閉める余裕などない真理は、スニーカーの足音をバスルームに響かせながら、
「もうぉお、」
消毒済みと印刷されたリボンをひっぺがし、ふるえる手で便座のふたをあげ、ジーパンとショーツを一気にずり下げてしゃがみ込んだ。
(ふいぃぃ・・間に合ったよぉっ!)

希美「ほんとに間に合ったのぉ!?」
真理「ばかやろうっ!オイラをののと一緒にするない!」
希美「でもさあ、すっごく我慢してたんでしょぉ?」
真理「ああ、一時はもうダメかと思ったぐらいだったよ。」
希美「じゃあやっぱり少し漏ら・・」
真理「うんにゃっ!オイラはしまりがいいからあり得ないのっ!」
希美「わっ、私は締まりが悪いみたいな言い方だあっ!」
由衣「ののは出産後だから仕方がないよ。」
希美「由衣ちゃんだってお漏らししたって言ってじゃん!」
由衣「げっ!」
真理「ほえー、由衣もか?」
由衣「わ・・私はホラ・・入院してたときさ・・」
希美「オシッコの管入れられてたんだよね。」
真理「ああ、その後遺症でかよ?」
由衣「だと思う。もうそんなことないもん!」
希美「四日市でお漏らししたって言ってたじゃん!」
由衣「・・・(-_-;)」
真理「四日市?・・ああ旦那の出向先か!」
希美「エッチしてる時にもオチビリしたんだよね!」
由衣「・・・(-_-;)(-_-;):」
真理「おいおい、ののは結婚した途端に言うようになったなあ!」
由衣「ほんとだよ〜。一番オクテだったのにさぁ!」
希美「みんなに鍛えられたんだもん!」
真理「けっ、よく言うよ。きっと素質があったのさ!」
由衣「そんなことよりさ、昨日はどんなおしがまだったの?」
真理「はは・・由衣はやっぱりそっちの方が気になるか?」
希美「あーっ、話をそらしたーっ!」
由衣「私のことはいいの。」
真理「似たようなことだから・・あんまりおもしろくないぞ。」
由衣「いいよ。聞かせて!!」
希美「ふぎぃー!」


後編へつづく

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