理保の目覚め




 元旦に北野神社から優里亜のうちまでずっとおしがましていた理保ちゃん。
昨日の日曜日に、彼女の経験話を入手することに成功したので、小説風にまとめてみました。

 神崎理保(かんざきりほ)当時15歳。
理保が住む坂本という地域は、戦国時代、明智光秀が城を持った事で知られ、比叡山への滋賀県側からの入り口になる。
最寄り駅はJR湖西線比叡山坂本駅。
新快速も停車する駅だけれど、まだまだ開発が進んでいなくて、駅を降り立ってもコンビニすらない殺風景な光景が広がる、そんなのどかなところだ。
 理保は元々京都に住んでいて、ある女子大の付属小学校に通っていたが、中学に上がる時にこの坂本の地に家を新築して引っ越してきていた。
しかし他府県への越境通学が認められていなかったので、中学はやむなく地元の公立に通うしかなかった理保。
 それだけに高校はやっぱりかつての古巣、女子大の附属に通いたい。
仲のよかった小学校時代の友達は、みな内申で上がってくると聞いていたので、理保は猛勉強して、絶対の返り咲くと決心していた。

 今日はその受験の日。
理保の中学からその女子校を受験する子がほかに2名いたので、試験会場へ向かう道中の心細さは少し救われていたが、別のクラスであまり親しくない子たちだったので、行動は共にしていたものの、ほとんどしゃべらずにいた。
 女子校の正門前まで来ると、かつての友達3人が待っていてくれ、受験に挑む理保にエールを送ってくれる。
その励ましを受け、理保は笑みを浮かべながら試験会場に向かっていった。

 猛勉強してきた甲斐あって、5教科すべてにおいてかなりの手応えを感じた理保。
試験が終わるのをずっと待っていてくれた友達が、終了と同時に会場にやってきて、高校の中を探索して回ろうと理保を誘い出す。
坂本から一緒に来ていた2人は、先に帰ると行ってその場を去って行った。
 内申から上がってきた友達は、すでに勝手知ったる校舎なので、理保の手を引いて得意げに歩き出した。
が、理保はこのとき猛烈にトイレを我慢していた。
 途中の休憩で一度トイレに向かったものの、受験の女子ばかりが一気に殺到していたために、あまり要領のよくない理保は並んでいる列からはじき出されてしまって、用を足せずにいた。
 その時は念のために行っておこうと思う程度であったので、以後の試験にさほど影響はなかったものの、それでも最後の方になるとさすがに尿意の波がおそってきて、問題に集中できなくなってしまっていた。
幸いその教科が得意の英語だったので、かろうじて事なきを得たといえる。
席が窓際で日が当たって寒くなかった事も幸いして、時間ギリギリまで我慢して問題と向き合っていた。
 そんな理保の状態などお構いなしに、友達はワイワイ騒ぎながら理保を連れ回す。
「ね、私ちょっとトイレ…」
 理保はたまらなくなって腕を引っ張るその子に訴えた。
友A「あ出た〜、理保ち〜のトイレ告白〜!」
友B「やっぱ相変わらずトイレ近いんだ〜!」
友C「昔のまんまじゃん!」
 そうなのだ。理保はほかの3人と比べて小学生の頃からトイレが近い方だった。
身長も体格も友達の中で中ぐらいで、水分摂取量が他の子よりも多いとも思えなかったが、なぜか理保だけがいつも真っ先にトイレ告白する日が多かった。
 友達関係ができたての小学校中学年の頃は、何となく恥ずかしくて、ほかの誰かがトイレに行くまで必死で我慢していた事もあったが、気心が知れてくると、その恥ずかしさは消え去って、真っ先のトイレ告白が理保のキャラにもなってしまっていた。

 校舎内を一回り探索して、理保たち4人はバスで京都駅に出た。
地下街のファーストフードで、遅い昼食を一緒にとり、小1時間ほどダベリングした後、中央コンコースで解散した。
 これから理保は湖西線の電車に乗って坂本まで帰る。
合格すれば毎日このルートを往復することになる。
(合格しますように!!)
 そう念じながら、券売機で坂本までの切符を買っていた理保は
(あ…またトイレ行きたくなってきた…)
 ブルッと震えてそう感じ出す。
この季節、学校の制服にコートを羽織っていても、生足なのでさすがに足下から冷えてきてかなり寒い。
みんなにトイレ告白をして用を足してからすでに1時間半以上経過して、ファーストフードでコーラまで飲んでいたので、当然と言えば当然の現象だった。
(えっとぉ、ここは中央改札だからぁ…・)
 理保は一番近いトイレの場所を思い巡らしていた。
しかし坂本に引っ越してからは、何度か京都駅を利用しているものの、いつも素通りしているだけでトイレを利用したことがなく、幼かった頃の記憶はすでに消え去ってしまっていた。
 実は理保が立っている中央改札から西の方へ数十メートル行けばトイレがあるのだが、その表示が目に入らない事が多い。
(改札入ったら…中にもあったっけ?、)
 ホームにトイレがない事は何となくわかっていたが、どこかにあったような記憶がよみがえってきて、理保はそのまま改札に入ろうとした。
ちょうどそのとき
「おう神崎!!」
 聞き覚えのある男子の声がする。
クラスメイトの男子2人と隣のクラスの男子1人、それにさっき受験会場で別れた女子2人が理保の後ろにいた。
その男子たちも今日が高校の受験日で、駅で先ほどの女子とバッタリ会ったので、2階のドーナツ店でしゃべっていたという。
「一緒に帰ろうぜ!」
 と軽く言われてしまい、トイレを探す理由で断る訳にもいかなくて、理保はそのままみんなと連れだって改札をくぐってしまった。
(トイレ…どうしよう……?)
 今はそれほど切羽詰まった状態ではないものの、これから先、トイレに行ける環境があるのかどうか、それがすごく気になる理保であった。

 湖西線の電車は主に3番ホームから出る。
そこへ降り立つと運良く折り返しの普通電車が入ってきた。
始発なので座れる確率が高いが、普通電車だと途中で金沢方面への特急待ちなどがあったりして、時には坂本まで20分以上かかる事がある。
みんなは座れるからと喜んでいたが、理保はひとり浮かない顔をしていた。
 改造されてロマンスシートになっている座席を向かい合わせにし、理保とクラスの男子2人が向かいに。
通路を挟んだ隣の席にもう一人の男子と女子2人が座った。
昼間なのでそれほど車内は混んでおらず、そのままほかに誰も座ることなく、しばらくしてその普通電車は出発した。
 車掌のアナウンスで、停車駅とおよその到着時間が告げられる。
坂本駅の到着時刻を聞いて、理保はそっと腕時計に目をやった。
(やばっ、やっぱり20分以上かかるじゃん…)
 やはり運の悪いことに、この電車は西大津駅(現大津京駅)で特急待ちをするようで、途中の唐崎駅を通過する新快速と比べて5分以上時間がかかるようだ。
(こまったなぁ…トイレ行きたいけど……)
 理保が乗り込んだ車両には確かにトイレの設備があった。
しかしそれはデッキにあるのではなく、座席に隣接して設置されているので、そこへの出入りは座席から丸見えの状態だ。
いや、仮にそのトイレが座席から見えないデッキにあったとしても、気の弱い理保には、男子の前で
「トイレ行ってくるね。」
 と軽く言って席を立つ事などできるはずがなかった。
(坂本まで我慢して…けど…坂本駅で行けるかなぁ……?)
 車内のトイレが使えないのなら、降りる駅のトイレまで我慢するしかないが、クラスメイトの男子たちと一緒である以上、そこでトイレに行く事ができるのかどうか、理保には全く自信がなかった。

 男子たちは試験問題の話で盛り上がっている。
理保もそれなりにその話におつきあいをしていたが、山科、西大津と、一駅ごとに停車して行く電車の動きに比例するかのように、感じている尿意は分を追って高まり出していた。
 特に湖西線に入ってからは、駅がすべて高架になっているからか、停車のたびに開くドアからの風が異様に冷たくて、ハイソックスだけの足下を直撃してしまう。
(あ……おしっこしたいよぉ…)
 予想以上に、西大津を超えたあたりから理保はかなり尿意に苦しめられ出し、次の唐崎ではドアが開いたときに身震いをするほどになっていた。
体が冷えてしまったのだろう、その尿意はかなり急激に高まっている。
(やっぱり…坂本駅で行こう…誰かトイレに行かないかなぁ……?)
 女子の誰かが駅でトイレに行くと言ってくれたら、理保も便乗するように行きやすくなる。
そう願いながら、理保は男子たちの高笑いに引きつった顔で愛想笑いをしていた。
 しかし女子たち2人は京都駅かどこかでトイレに行っていたのであろうか、坂本駅に到着しても誰もトイレに行こうとしない。
(え〜、うそぉっ、誰も行かないのぉっ!?)
 密かに期待していた便乗トイレが打ち砕かれてしまった理保。
もうこうなってしまっては意地でも家まで我慢するしかない。
(でも…もうほんとにおしっこ…したいよぉ…)
 一段一段階段を下りていく振動が、パンパンに張り詰めだした膀胱に強烈な刺激を与えだしていた。

 びわ湖から吹き上げてくる風と、比叡山から吹き下ろす風が複雑に絡み合うこのあたりは年中風が強い。
時にはその複雑な風の流れがスカートを落下傘のように大きく膨らませたりもして、恥ずかしいパンチラを見られてしまう事がある。
 長めのコートを着ているために、今日の理保はスカートを気にする必要はなかったが、その強い風は容赦なくスカートの中に入り込んできて、ただでさえ必死におしっこを我慢している下腹部を刺激してしまう。
(つ…おしっこ……したいっ!)
 殺風景な駅前に出たとき、理保はそのあまりな尿意にそう叫びたくなる衝動を覚えていた。
(やっぱ…おしっこ……トイレってどこかなかったかなぁ……?)
 ここでみんなと別れるのなら、そのあとひとりで駆け込めるトイレはと理保は頭を巡らせた。
トイレを借りるならコンビニだが、それは国道161の方に出ないと無い。
理保の家はその逆方向、山の手になる。
そして家までの間にはトイレを借りることができるような施設は何もない。
(どうしよう…やっぱり駅で借りようかなぁ…?)
 そうは思ってみたものの、そのトイレは改札の中にしかない。
駅員に頼んで入れてもらうのはすごく恥ずかしいし、入場券を買ってトイレにだけ入るのはもっと恥ずかしいと思った。
(でも…おしっこ…したいぃっ!)
 皆が何か立ち話をいているその脇で、理保はひとり足をクネクネさせながら尿意の事ばかり考えていた。
「さ、行こうぜ。」
 ひとりのクラスメイトにそう促されて我に返る理保。
いつの間にか皆は解散し、国道の方へ向かう者、線路沿いを南北に向かう者に別れていて、残ったのは山の手に向かう理保とその男子だけになっていた。
(え…いっしょに帰るってっ!?)
 ただでさえおしっこがしたくてたまらなくなっているのに、その上男子と一緒に歩かなければならないなんて、理保は気が遠くなるような思いを感じた。
(この男子たちと出会っていなかったら…)
 そう、もしそうだったら京都駅でトイレに行けたかもしれない。
電車の中でも、あるいは坂本駅でも行けたはずだ。
そんな事を思ってしまうと今更にして、理保は男子たちと出会ってしまった事が腹立たしくてならなかった。
(だって…もう…おしっこ出ちゃいそう…)
 男子よりも一歩遅れて歩き、コートのポケットに入れた手で前を押さえてしまう。
実際にはポケット越しであるために完全に押さえられている訳ではないが……。
(おしっこ…おしっこ…もうどこかその辺で……)
 ポケットに入れている手にまで、そのおしっこで膨らみきった膀胱の丸みが感じ取れる理保は、もうほんの一瞬の気の緩みでもおしっこを漏らしてしまいそうになってしまって、家までの我慢をあきらめて隠れる場所がないかと目を泳がせていた。
 しかしそのあたりは新興住宅地で、造成中の空き地は点在しているものの、逆に言えば身を隠せるような場所など何もない。
いや、仮にそういった場所があったとしても、
「ごめん、ちょっとトイレしてくる!」
 などとその男子に言ってできるはずがない。
そうはわかっていても、理保はおしっこがしたくてたまらなくて、そういった妄想が頭をよぎってしまっていた。
 比叡山からの吹き下ろしの向かい風を受けて、体は完全に冷え切ってしまっているが、理保の体は熱い。
風をまともに受ける額はそうでもなかったが、脇や背中は少し汗ばんでいるように感じられた。
(おしっこ…もう出る…もう出ちゃう……)
 何度もそう弱気になってしまう。
しかし親しくないクラスメイトの男子がいるのに、ここでおしっこを漏らしてしまうことなど絶対にあり得ない。
理保は気が遠くなるようなめまいを感じながら、それでも気力を振り絞ってなんとか一歩ずつ歩き続けていた。
 なにか話しかけられていたが、もうそれさえも耳に入らず返事すらできなくなってしまっていた理保。
「どうした。しんどいのか?」
 あまりにも動きがおかしい理保に気づいて男子が振り返る。
とっさに理保はポケットの手を移動させ
「あ…ごめん…ちょっと疲れたぁ…」
 と、なんとか言い訳をする。
その一言だけでも必死だった。
「そっか。じゃぁ俺はこっちだから!」
 男子はそう言いながら路地を左へと曲がっていった。
「ありがとう…ごめんね…」
 理保は何に対してお礼を言い、何に対して謝ったのか自分でもわからなかったがそう言っていた。
そして
(あぁ、やっとおしっこができるっ!)
 と、まだ自分の家に着いた訳でもないのに、男子がいなくなったことで少し開放感を覚えていた。
しかしそれは一種の気の緩みをもたらしてしまう。
何度も強い尿意の波が襲ってきていたが、そのことで最大級の危機が押し寄せてしまった。
(あっだめっ!!)
 思わずその場にしゃがみ込んでしまう理保。
ちょうどかかと押さえのような姿勢をとり、なんとかその波を乗り切ろうと、理保は全神経をおしっこの出口に注いだ。
その甲斐あって、何とかその場を乗り切った理保。
最後の力でそっと立ち上がると、よろめきながらもそっと歩き出した。
(あの角を曲がったら……)
 もう家はすぐそこに迫っている。
走って帰りたい。
しかしそれは絶対にできない。
今走ってしまうと一気におしっこの出口が開いてしまいそうだった。
もどかしい。
理保は息を切らせながら、すり足のようにしてゆっくりと家を目指していった。

「理保ーおかえり。どうだった?」
 母親が隣の家の玄関先で立ち話をしている。
「ぁ…ただぃ…ぁあとで話すねぇ!!」
 今は立ち止まって話す余裕など全くない。
理保はお隣への挨拶もできずに、体を折り曲げたままの状態で玄関へと急いだ。
「なぁに、トイレなの?」
 母親にはもう気づかれている。
この格好を見れば誰でもそう気づくであろうが……。
(お母さんが外にいるって事は…玄関に鍵はかかってないっ!)
 理保はそう確信して一目散にトイレに駆け込むことを想定した。
(あぁ…あぁ…やっとおしっこができるぅっ!!)
 とにかくこんなに我慢したことなどなかったおしっこから解放される。
そう思った理保が玄関に飛び込んだとき、やはり気が緩んでしまったのか、まだ靴を脱いでいないのに
[シュッ]
 と、不快な音を出してパンツの中に広がる暖かいものを感じてしまった。
(うそぉやだよぉっ!!)
 あわててスカートの中に手を入れ、グイッと押さえつける。
その指先には漏れ出したおしっこの感触が伝わってきた。
(やばいやばい…でちゃうぅぅっ!)
 もう靴など脱いでいる余裕はない。
理保はままよとそのまま土足で上がり込み、すぐそこにあるトイレのドアを勢いよく開いた。
片方の手で便座のふたを開け、コートとスカートをめくりあげようと押さえている手を離したその瞬間、
[シュルシュルシュル……]
 と、言いようのない音が聞こえて、我慢に我慢を重ねてきたおしっこが勢いよく吹き出してしまった。
(や〜ん、まだ待ってよぉっ!)
 そう思っても、おしっこはパンツの生地を突き抜けてバシャバシャと便器やトイレの床にたたきつけだしている。
「もうおぉぉっ!!」
 理保は叫びながら便座に腰を下ろした。
おしっこでぬれてしまった便座が太ももに不快感を伝える。
(はぁあ…パンツ…脱げなかったよぉ……)
 これまで感じたことがない罪悪感のようなものと、秘密めいたスリルのような感情を感じた理保。
(あ…でも…気持ちいいっ!!)
 パンツの中で渦を巻くおしっこは、おしりの方にまで広がってバシャバシャと全面からおしっこがたれ落ちていく。
それが不快ではあるものの、理保は何かしら気持ちよさを感じていた。
(お母さんが戻るまでに後始末…しなきゃ……)
 比較的トイレが近い理保が、ひょっとしたらおしがまの気持ちよさに目覚める第一歩になりかかっていたのかもしれない。



目次へ