おしがま優里亜 12(やっちゃった!!)




 寒いですね。
そんな寒い中、22日に忘年会がありました。
私たちは京都駅ビルのホテルグラ○ヴィアであったんです。
ロビーから駅前広場が見下ろせて、京都タワーがすぐ目の前にあって、とてもすてきなホテルでした。
 ただ、トイレが宴会場のずっと端の方にあって、それはいいんだけど、そのトイレの男女入り口の中間に喫煙スペースがあるんです。
男の人たちがいっぱいたむろしていて、すごくたばこ臭くて、そしてトイレに入る私たちをなんかジロッと見ているような、そんないやな気分もありました。
 私のいる情報システム部は本部や総務部と合同の忘年会だったので、由衣ちゃんのご主人やケンちゃんとは一緒だったんですけど、由衣ちゃんたち診療部関係はホテルオー○ラだったので別々です。
 二次会は、由衣ちゃんのご主人たち幹部は連れだってどこかへ行くし、ケンちゃんもそれに誘われていたので、私は由衣ちゃんや別の会場にいる仲間たちと待ち合わせて、別の二次会へ行くことにしていました。

 駅からタクシーに乗って向かったのは、丹波口駅ちかくにあるカラオケ。
そこで男女12名の大カラオケ大会です。
 で、想像した人がいるかもしれませんけど、やっぱり由衣ちゃんはスマイレージの曲を歌ってました。それも振り付きで。
普段の声もかわいい感じだけど、歌うとぐっと幼くなります。(ごめんネ)
スマイレージで言う前田憂佳の声をもう少し高くしたような感じなのかな?
わかる人だけわかってください。
夢見る15歳という曲は、歌もダンスも完璧でした。(笑)
やっぱり相当好きなんですね。
 私はあんまり歌が得意じゃないのでほとんど歌っていないけど、そのかわり場を盛り上げることに専念です。
でもそのせいで……トイレに行くタイミングが中々なくて……。
歌い終わった子たちは、由衣ちゃんも含めてその足でトイレに行ったりしてたけど、私はずっと座ったままだったから、なんとなく行きそびれていたんです。
だからお開きの11時半頃になると、もうおしっこがパンパンになっていました。
そりゃそうですよね。
ホテルを出る前に行ったきりで、それから後もお酒とか結構飲んでいたんだから。
 でもその場は私が幹事だったから、会計も私の役目。
おしっこしたいけど、時間ぎりぎりまで歌っていたから、あわてて部屋を空けてフロントに向かったんです。
 この後はみんなと別れて由衣ちゃんとふたりで、ご主人やケンちゃんと合流する予定になっています。
だから会計が済んだらゆっくりトイレに行こうと思って、私は少し足をクネクネしながら会計を済ませました。
「あのね、ゆりあぁ、旦那に電話したらね、もう少し遅くなるって言ってるよ。」
 由衣ちゃんが言います。
「え、むこうはまだ終わりそうにないのぉ?」
「うん。だからどこかで時間をつぶしてろって言うんだよぉ。」
「えぇえ、どうしよう……」
「時間をつぶすったって…私、このあたりのこと知らないよぉ。」
「うん。私も知らない…」
 そんなことをふたりで話し込んでいたら、
「なにコソコソ話しでんだよ。さ、ラーメン食いに行こうぜ!」
 男の人がそう言って私の肩に手を回してきて、まだコートも着ていないのに、そのまま表に連れ出されてしまったんです。
トイレに行きたいのにぃっ!!
(さむっ!!)
 ニーハイだけどさすがにスカートでは風が冷たすぎます。
とたんに私のおしっこ信号は完全に赤信号になりました。
それも点滅ではなくて点灯!!
でもいったん外に出てしまったので、今更「トイレ借ります〜」なんて言って店に戻る勇気はありません。
 確かに少し小腹が空いた感じはありましたけど、こんな時間からラーメンなんて私はムリです。
それにそんなことよりおしっこしたいっ!!
「悪いけどさ、私はラーメンはパスね!」
 さすが由衣ちゃん。
こう見えてもこの中では一番年上の由衣ちゃんです。
キッパリそう言いのけてくれました。
「でさ、この辺に喫茶店とかないかなぁ?」
 そして時間をつぶす場所がないか聞きます。
でもこの辺は飲食店もなにもないところで、男子たちが行こうとしているラーメン店も、少し先にあるIT関係の会社なんかが多く入っているリサーチパークと言うところを下がった(さがった)、かなり先だそうです。
 ほかの女子たちもやっぱりラーメンはパスで、ほかの店に行くんだといってタクシーに乗ろうとしています。
私たちも誘われたけど、ケンちゃんたちとの待ち合わせがややこしくなりそうなので、それも断りました。
男子たちは「フラレた〜!!」とか言いながら西の方に向かって歩き出して行きます。
 残ったのはおしっこしたくて寒くてブルブル震えている私と、コートのポケットに両手を突っ込んでピョコピョコ跳ねている由衣ちゃんだけ。
「困ったねぇ、どうしよっか?」
 そう言う由衣ちゃんの息は白くなっていました。
それを見たらまたおしっこの波がっ!!
「仕方ないからさ、ケンちゃんの部屋に行かない?」
 私はとにかく早くおしっこしたいから、そう言って由衣ちゃんを誘いました。
ケンちゃんの部屋ならここからタクシーで10分もかかりません。
そこでゆっくりおしっこしようと……。

 横断歩道を渡って西向きのタクシーを待ちます。
でも……
中心部へ向かう東向きは空車がいっぱい走るのに、中途半端なこのあたりは、西向きの空車がないんです。
 寒くて寒くて、おしっこちびってしまいそうで、私は前屈みになって足をじたばたさせて落ち着きません。
「あれぇ、ゆりあって今おしがまちゃん?」
 めざとい由衣ちゃんが気づきました。
「うん。実はカラオケで一回も行ってない……。」
 私が正直にそう答えると、由衣ちゃんはどれどれとか言いながら、意地悪くおなかを押さえにきます。
「やめてやめてっ、今は冗談でもやめてぇっ!!」
 私はそんな風に叫びながら身を引きます。
ほんとにもうおしっこが飛び出しちゃいそうになっていたんです。
「あのね…ちょっとキツイ…」
 私は力なくそう言いました。
「けどタクシーもなかなか来ないし、そんなで部屋まで持ちそう?」
「……正直…自身ないんだよね……。」
「駅で借りたら?」
 すぐそこにJR丹波口駅があります。
私は由衣ちゃんの提案にすぐ乗って、急ぎ足でそこに向かいました。
 でもここは小さな駅です。
やっぱりトイレは改札の中にしかありません。
駅員さんに
「トイレ貸してください。」
 とは恥ずかしくてとても言えないし、こんな時間に入場券を買って入るのも、すごく不自然で、かえって恥ずかしい感じです。
私は駅のトイレをあきらめました。
 でも、いったんトイレを借りようかと思ったりしたもんだから、膀胱が収縮を始めようとしています。
ますますおしっこしたい感覚が募ってきてたまりません。
 ホテルで飲んでいたビールの残りと、カラオケで飲んだカシスオレンジ2杯の水分が、もう全部私の膀胱の中に移動してしまって、中から「出せ〜っ!」って叫んでいるみたい。
 スカートの中に風が回り込んで、ギュッと閉めているおしっこの出口が寒さでマヒしてしまって、さっきからしびれたような感じになっています。
もうほんとに…お漏らししてしまいそうな感じで、今タクシーが来たとしても、ケンちゃんの部屋までは絶対に我慢できません。
(どうしよう…どうしよう……!?)
 頭の中はそればっかりです。
「あ、コンビニあるじゃん!!」
 由衣ちゃんが言いました。
そうなんです。向かい側にコンビニがあったんです。
タクシーを待つことと、駅のトイレを借りるかどうかばかりに気をとられていたから、向かいのコンビニが目に入っていなかったんです。
(たすかった〜っ!!)
 私はそう思って、由衣ちゃんの手を握ったままで横断歩道へ移動しました。
けど…
運悪くちょうど赤信号になったところです。
 ここは道幅が広い五条通り(国道9号線)です。
そう、なかなか青にはならないんです。
けど頭の中は、もうコンビニのトイレでおしっこする準備態勢をとってしまっているから……漏れ出しそうです。
「ぁ…ゆいちゃん…やばい…かも…」
 私はそう言いながら思わずその場にしゃがみこんでしまいました。
「ゆりあ、がんばってぇっ!!」
 さすがの由衣ちゃんも月並みな言葉しか出てこないみたいです。
最大級の波をどうにか乗り越えて、由衣ちゃんに支えられながら体を起こした時は、せっかく青になっていた信号が点滅し出した時でした。
また1分半ほど待たなければ青になりません。
それから横断歩道を渡って、コンビニに入ってトイレを借りることを伝えて……なんて、もう漏れ出しそうになっている私には絶対ムリだとわかりました。
「由衣ちゃん…もう…漏れる…」
 そう言った私に
「こっちっ!」
 由衣ちゃんは私の手を引きました。
JRの高架沿いに、車が1台通れるぐらいの細い道があります。
中央市場関係の施設とか倉庫が建ち並んでいるらしくて、この時間は真っ暗な路地です。
由衣ちゃんはそこへ私を連れて行きます。
私はもうしっかり片手で押さえていました。
そうしていても、なんかもうおチビリしているような感覚です。
 少し行くと小さなT路地がありました。
はっきり言って真っ暗で、遠くにある街路灯だけでかろうじてあたりが見える程度です。
「ここっ、早く!!」
 そのT路地を曲がったところで、由衣ちゃんは私をそう促しました。
怖いです。
周辺がどうなっているのかもわからないし、もし誰か通りかかったら……。
そういう恐怖感はいっぱいありました。
でもおしっこはもう出かかっています。
 私は由衣ちゃんの手を離すと、コートごとスカートをめくりあげて、パンツを下ろしながらしゃがみました。
同時にジョ〜〜と勢いよくおしっこが飛び出してきます。
そしてアスファルトの地面にジョロジョロと音を立てて跳ねていき、モワ〜っと湯気を立てます。
周りが静かだから、そのおしっこの音は異様に大きく感じられて気が気ではありません。
 でも、すごい爽快感です。
コートが垂れないようにずっと両手で持ち上げているから、おしりに冷たい風が当たってヒンヤリします。

 ずっと周りを見張っていてくれてると思った由衣ちゃんは、時計を見ていました。
「残念、52秒だよ。もう少しで1分の大台だったのにね。」
 私のおしっこの出ている時間を計っていたようです。
そう、由衣ちゃんはそういう人なんです。(怒)
けど両手がふさがっている私のために、バッグから自分のティッシュを手渡してくれるやさしい人です。
 後始末をしてパンツをあげたら
「!!」
 すごく冷たいんです。
やっぱりかなりおチビリしてました。
「フライングしたの?」
 由衣ちゃんは少しニマ〜っとした顔でそう聞いてきました。
「やっちゃった……。」
 そう答えるしかない私です。
「今日は換えのパンツ用意してるの?」
 ケンちゃんちにお泊まりすることになっているけど、実は換えは用意していませんでした。
「しょうがないなぁ。とにかく早く行こ!!」
 そう言って、私たちはそこから逃げるように立ち去りました。
幸い誰にも見られていないし、誰も通らなかったようでした。(たぶん)

 このあと10分ほど待って、ようやくタクシーが捕まりました。
ケンちゃんちに着くと同時ぐらいに電話がかかってきて、由衣ちゃんの旦那さんも一緒にこっちに向かうとのこと。
 そのあと4人で少し飲みながらおしゃべりして、由衣ちゃん夫婦は仲良く腕を組みながら帰って行きました。
腕を組むと言うよりも、由衣ちゃんがご主人にぶら下がっているって感じです。
 で、私たちは朝方にかけていろ〜んなことをして、グッタリして眠りました。
パンツは、いろ〜んなことの前にお風呂に入ったから、そのときに脱いだことにしてました。
ケンちゃんはきっと「エッチな女だなぁ!」と思ったかもしれないけど、痕跡を消すために水洗いして、隠して干していたんです。あは……。



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