二人の軌跡 12(砂に消えた‥‥)




 太陽を仰ぎ見ながら大きく腕を回して背泳ぎをしていると、小学校のころ水泳の選抜選手に選ばれた時の事が翔太の頭をよぎってきた。
そんなに泳ぎが得意ではなかったのに、なぜか背泳とクロールに選ばれた翔太。
実はあの頃、翔太は単にカッコよく泳ぐマネゴトをしていただけであったのだが、周囲がそのお代ぎっぷりに注目して、あれよあれよと思う間に選抜選手になってしまっていたのであった。
しかし元々運動神経がいい翔太である。
選ばれたことによって自然に泳ぎがうまくなっていったのも事実であった。
 そんな回顧をしていると自然と体から力が抜け、今度はクロールで大きく足をストロークしながら更に沖へと泳ぎ出す翔太。
それからかなり泳いで振り返ると、砂浜は遙か遠くになり、人影が豆粒ほどにしか見えないほどの距離があることを認識して、
(ちょっと調子に乗って沖に来すぎたかな‥?)
 さすがに少し疲れてきた事と、あまり遅くなるとミカが心配すると思った翔太は、引き返そうと向きを変えながら、
(それにしても‥‥)
 軽く立ち泳ぎをしながら、また先ほどの事を思い出していた。
《はぁはぁ‥翔ちゃ〜ん‥おしっこ出てるぅっ‥気持ちいいよぉっ!!》
 おんぶしているミカが首に回した手に力を込め、その背中でおしっこをしながら発したあの時の声‥‥。
あえぎ声ともとれるそんな声と、背中から腰辺りに広がってくるホワ〜ンとした生暖かいおしっこの感触に刺激され、翔太は海パンの中を硬くしてしまっていた。
そんな状態では水から出られないと思い、それを沈めるためにミカを砂浜に残したまま沖に出てきていたのであった。
(ミカはきっと感じていたんだろうなぁ‥)
 ミカの声と、背中に感じた生暖かいおしっこの感触を思い出し、
(いけねっ、また大きくなってきたぁっ!!)
 翔太はまた海パンを盛り上げてしまった。
(はは‥‥、俺もミカのこと言ってられないや‥‥)

 疲れてきた腕と足をめいっぱいに使い、何度か休みを入れながら砂浜に戻ってくると、ミカは一人でパラソルの下に座ってビールを飲みながらポテチを食べていた。
「お・ま・た!!‥‥へへぇ、やっと大人しくなったよ。」
 翔太は少し照れ笑いをしながらそう言ってその横に座り込む。
「も〜、どこ行ってたのよ。ひとりで寂しかったんだからぁっ!!」
「え、そんなに時間たったかなぁ!?」
 そう言って翔太はダイバーズウォッチに目をやったが、確かに20分以上泳いでいたようであった。
「私を一人にしてぇ、変な男にナンパされたらどうするのよぉっ??」
 そう言うミカのロレツ少しおかしい。
クーラーボックスに目をやると、空になったビールのロング缶が転がっていて、残りの1本はミカの手にあった。
「ありゃミカ、お前ビール飲み過ぎだぞぉ。俺のが無くなるじゃんか!」
「だぁ〜ってぇ暑いしぃ、それにすっごく喉が乾いてたの〜。」
「まぁいいけどさ‥、俺も喉乾いてるし‥ミカ、それちょっと飲ませて!!」
 翔太はミカからロング缶を受け取ると、一気にその半分ほどを流し込んで一息入れ、しばらく沖から見た砂浜の景色の事などを話したあと、
「さ〜て、オイルでも塗って少し焼こうかな。ミカ、背中に塗ってくれる?」
 と言って、缶を置いた手でオイルのボトルを取り出してミカに手渡した。
「いいよ。じゃぁそこに横になって。けどさぁ、砂が熱いと思うよぉ。」
「う〜ん、そうでもないよ。体が濡れてるから大丈夫そうだ。」
 翔太はそう言いながらゆっくりと腹ばいになってミカに背中を向けた。
少し酔っているミカは上機嫌で、鼻歌でリズムを取りながら翔太の背中にオイルを塗っていき、それが一通り終わると、
「きゃ〜手がべとべとぉ〜。ねえ、ちょっと海で洗ってくるね。」
 そう言いいながら立ち上がり、ヨタヨタした足泥で波打ち際まで走って行くと、そこにしゃがみこんで水に手を入れ、ジャブジャブと洗いはじめたようであるが、
「あ〜ん、なかなか取れないなぁ〜」
 と、思うように手がサラリとしない様子で、何度もおな自己とを繰り返していた。
「ミカ〜、手に砂をまぶして洗うんだよ〜!!」
 翔太が少し身を起こしながら言うと、
「そうなのぉ?」
 と半信半疑ながらも砂をすくい、それで手をこすると意外なほど良く落ちる事に喜んで、ミカはひとりではしゃぎながら、2度3度と砂をすくっていた。
 この時ミカは和式トイレにしゃがむような格好であったため、水着のちょうどおまたの辺りに寄せる波が何度もしぶいて、波が引くたびにそれがしずくとなって垂れていき、
「きゃっエッチぃっ!!なんかお漏らししてるみた〜い!!」
 と、冷たくなった自分の股間を覗き込んで、垂れ落ちる滴を見ながらそう言って笑っていた。
 いそいそとパラソルに戻ってきたミカに、
「なあミカ。ちょっと疲れたし、しばらくボケ〜っとしてようよ。」
 翔太は少し睡魔に教われだしてそう言った。
「うんそうだね。何にもしないでのんびりするのがリゾートだって言うしね。」
 酔ったけだるさがあったのか、ミカはすぐにそれに同調し、
「あ、でも私、焼け過ぎると痛いからさ、パラソルの中に居てもいいよね?」
 と言って日陰に体を移動させていく。
パラソルから半身を出したままの翔太は、背中にジリジリと真夏の太陽を感じながらも、やがて目を閉じてウトウトとし始めた。
パラソルの日陰で同じようにうつぶせになり、その寝顔を眺めていたミカもまた、ビールによる心地よい睡魔に誘われ出してまどろみだした。
刺すような暑さの陽射しであったが、やはりそれは8月中旬の気候へと変化していて、湿気の少ないほどよい風が吹き抜けて、それが汗ばんだ肌の上を通り過ぎる心地よさに二人は包まれていた。

 ミカは急激な尿意に目を覚ました。
(え‥、どの位眠っちゃったのかなぁ〜?)
 翔太のダイバーセグメントを見ると、さっきから20分ほど経っている。
(なんかまた‥すっごくおしっこしたくなってる‥‥飲みすぎちゃったかなぁ‥?)
 翔太を待つ間、ビールのロング缶を1本半ほど空けていたミカであった。
(どうしよっかなぁ‥翔ちゃんよく寝てるしなぁ‥‥)
 翔太は完全に寝入っている様子で、それを起こすのは気が引けるミカ。
まだ我慢できないわけではない。翔太が起きるまでもう少し待っていようと思って、ミカはまた目を瞑ってみることにした。
しかし一度発せられたおしっこ注意報は鳴りやむどころか、わずかの間に警戒警報へ発達しそうになっていた。
いや、これまでのミカの経験からすると、警戒警報はあっという間に避難勧告にまで発展するケースが多い。
(どうしよう‥ひとりで海に入って‥でもぉ、やっぱり怖いし‥恥ずかしいなぁ‥」
 次第にミカはうつぶせで寝ていることが辛くなってきた。
(どうしようかな〜、翔ちゃん起こして‥‥連れてってもらおうかなぁ‥?)
 ゆっくりと体を起こし、シートの上で正座するミカ。
右足のかかとはしっかりとおまたを押さえている。
(どうしよう‥‥‥なんかヤバいよぉ〜っ!!)
 海の家から聞こえてくるセンスの悪い音楽に、ミカは無理矢理リズムを合わせて上半身を揺らしはじめた。
そんなことをしながら何曲目かになると、上半身だけでなく腰のあたりもリズムに合わせだし、
(ああやばいっ!!やばいよぉ〜。どうしよう〜‥‥)
 ミカはいよいよ焦りだして翔太を起こす決心をした。
「ねえ翔ちゃ〜ん。起きてぇっ!!」
 翔太の腕を軽く揺する。
「ん‥?、あれぇ、寝ちゃってたか、悪い悪い。」
「ううんいぃの。‥それよかねぇ‥‥」
「ん‥なんだ?」
 翔太はまだはっきりと覚め切っていないようで、目をパチクリとしている。
ミカはそんな翔太の顔に向かって「お・し・っ・こ」と口パクで告げた。
「え、なんだよ。なんて言った?」
 日差しのまぶしさもあって、目を細めながら唇の動きをとらえられないでいる。
「だからぁ〜」
 ミカはまた口パクで「お・し・っ・こ」と、必死になって大きく口を動かした。
「え、おしっこって言ったの?、またかぁ!?」
 翔太は少し呆れたような口調でそう言った。
「バカバカぁっ、大きな声出さないでよぉっ。あのね、ビール飲んだも〜ん。」
「それだったらさ、さっき海の中でしたじゃん。今度はひとりで行っといでよ。」
 翔太が小声でそう言うと、
「やだぁ〜、ひとりじゃぁ恥ずかし〜もん‥‥」
「え〜、二人の方が恥ずかしいんじゃないのぉ?」
「だって〜、してるとこ誰かにバレたら恥ずかしいじゃん!!」
 そう言うやりとりをしている間に、ミカのおしっこはすでに限界点まで達してしまったようで、すぐにでも飛び出しそうになってきていた。
「う〜ん、せっかくオイル塗ったんだからなぁ、俺もう少し焼きたいしなぁ‥」
 翔太は消極的だ。
「ね、ね、お願い!一緒に行こ、ね?翔ちゃん一緒に行って!!」
 翔太の手を取って、自分の体の動きに合わせてそれを左右に揺すりながら、ミカは少し甘えるようにお願いしていた。
「もう少し我慢できない?、そうだなぁ、あと10分ぐらい‥?」
「違うのぉ〜、さっきからなのぉ〜!!」
「?」
「もう10分じゃなくてぇ〜‥‥もう1分なのぉ〜!」
「はぁ!?」
 すでにミカは秒読み段階にはいっているようだ。
「え〜、そんななのぉ。も〜しょうがないおしっこチャンだなぁ〜」
 普段ミカの限界が唐突に来る事は良く知っている翔太であったが、まさか今がそんなに焦った状態になっているとは思っていなかった。
「じゃぁ行ってあげるから、その前にそこのビール取ってよ。喉カラカラでさ〜」
 ミカは必死で腰を上下に揺すりながら、そっと翔太に缶ビールを手渡すと、そのまま両手を股間に潜り込ませてしまった。
「あん‥もぅ漏れちゃうぅ漏れちゃぅよぉっ!!」
 ミカは早口でそう言うと、正座したままヒザ立ちで翔太の方へにじり寄り、シートの切れ目の焼けた砂の上で、おしりだけを砂の上にペタンと降ろしてしまった。
「あ、あっ‥」
 と小さな声を出したミカが急におしりを浮かせる。
そして膝に両手をついてお尻を上下に揺すったかと思うと、ピタリとその動きを止め、次の瞬間ジュジュ‥ジュルル〜〜と音を出しながら、ミカの足の間からおしっこがあふれ出してきた。
それは水着のおまた一杯に広がって、小さな布全体からこぼれだし、太ももを伝ったり、あるいは太い水柱のようになって落下したりしながら、ヒザ立ちしているミカの足の間で大きな水たまりになったかと思うと、みるみるうちに砂の中へと吸収されていった。
おしっこを吹き出しながら、またペタンと砂の上におしりを着けてしまうミカ。
うつぶせになったままでいた翔太は、ミカのビキニの真ん中から勢いよく溢れ出てくるおしっこと、それが足を伝ったり真っ直ぐに落下していく様子と、水たまりがじんわりと消えていく情景を目の前数センチで見ていた。
「あららぁミカ、漏らしちゃったの?」
「も〜バカぁっ!!、翔ちゃんが早くしてくれないからだぁ〜っ!」
「そんなこと言ったって〜、そうならそうと言ってくれたらいいのにぃ。」
「だから、そうだって言ったじゃん!」
「はは、でも良かったじゃん。砂がみんな吸い取ってくれたよ。でも立ち上がったらバレちゃうかもね〜、でへへ‥‥」
「もうおっ、スケベな笑い方しないでよぉっ!!」
 そう言って翔太を睨みつけるミカであったが、内心、熱い砂の上にワレメを押し付けた時、ビクビクっとなった自分を感じていた。
それは海の中でおしっこをした不思議な感覚に勝るとも劣らない、ほかに例えようがないほどの快感で、一点に神経を集中してみると、ジワジワと熱いものがあふれ出してくるようで、それが自分で恥ずかしく思えてならなかった。
「ねぇ翔ちゃん、このまま立ったらお漏らしバレちゃうかなぁ?。そっと動くから砂かけて隠してよぉ‥」
 翔太にそんな自分を悟られないように、ミカは気を落ちつかせてからそう言った。
「あぁそうだな。こっちの白い砂を少しづつ送るからさ、砂遊びでもしてるフリしながら上にかけていっちゃえよ。」
「え〜、翔ちゃんしてくれないのぉ〜?」
「う〜ん、実は俺‥今ちょっと動きづらいんだよ〜」
 そう言って翔太はなかなか起き上がろうとしない。
「まさかぁっ、翔ちゃんも寝転んでお漏らししちゃったのぉっ!?」
「バ〜カ、そうじゃねぇよ〜。俺だったら海へ走るさ。今はそうじゃない現象が起きてて、ちょっと動きづらいんだよ。」
「なによぉ〜そうじゃない現象ってぇ〜」
「あのなぁ〜全部言わせるなよ〜」
「なによぉ〜、判んないこと言わないでよ〜」
「ったくも〜、あのなぁ‥ミカのお漏らし見てたらまた大っきくなったんだよっ!!」
「キャッ!!、また大っきくなったのぉ、ふぇ〜ん翔ちゃんのエッチィ〜!!」
「あ〜笑ったなぁ〜。しょうが無いだろぉ。あんなの目の前で見せられちゃ‥‥」
「だぁってぇ、さっきもミカのおしっこ背中で感じて大っきくしてたじゃん!!」
「ぁ、ああ‥‥」
「今度もなのぉっ?、翔ちゃんてミカのおしっこ好きなのねぇ〜、ふふん‥‥」
「あほっ、そういう事を言うかぁっ!!、じゃあミカはなんだよ!おしっこ我慢してお漏らして、で[あん!!あん!!] なんて‥・」
「あ〜言ったなぁ〜。そういう風にさせたのは翔ちゃんじゃないのぉっ。それよか大っきくなったのどうすんのぉ?、ここじゃ何もしてあげれないよぉっ!!」
 そう言ってミカは怪しく笑う。
「え?あ、そう、そうだよなぁ〜。じゃ海の中でしよっか?」
「何言ってんのよぉっ、バイ菌が入ったらどうすんのよぉ。それにそんなことしたら警察に捕まっちゃうヨ!!」
「冗談だよ、冗談。でもミカこそお漏らししたままの水着じゃ困るだろ。海に入って中和しようか?」
「そうだね。ちょっと泳ごっか?」
 二人はせ〜ので一斉に立ち上がると、脇目もふらずに砂浜を駆け出して海に飛び込んで行った。
ミカの座っていた跡には、まだ砂をかけきれていない黒く濡れたままの部分がポツンと残っており、翔太の立ちあがった跡には、なんとなく縦に1本深いくぼみがあるように見えた‥・とか。



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