MOTOKA 第15章




 パステル調の青空には雲がひとつもない。今日もいい天気だ。

 新しい年が明けて3日目の今日、優里は素香と一緒に明治神宮に初詣に行く約束をしている。
 待ち合わせの渋谷のモアイ像の前に着くと、すでに来ていた素香が小さく手を振りながらこっちにむかって歩いてきた。
「明けましておめでとう!」
「おめでとう!」
 街は晴れ着を着た女性の姿があちこちに見られて、今日ばかりは渋谷の街も普段とはちがう空気が流れている。
 素香は日本の『キモノ』にとっても興味があるみたいで、晴れ着姿の女の人を見る度に「わー、きれいー」と言いながらじっと見入っている。
 素香と手をつないでファイヤー通りを歩きながら、わたしはクリスマスイブのことを思い出していた。
 素香の両親に招待されて、飯倉にあるフランス料理のお店でディナーを御馳走になった。
 本格的なフランス料理のレストランは生まれて初めてで、ものすごく緊張していたのだけれど、初めて会った素香のお父さんとお母さんはとっても気さくな人で、ニコニコしながらごく自然に基本的なマナーを教えてくれて、まるで友だちのようにわたしと会話してくれた。
 料理もとっても美味しかったし、素香の御両親もすごくフレンドリーで素敵な人だったし、ワインも少しだけ飲んで、本当に楽しかった。素香のお母さんは、むこうでファッションモデルをやっていただけあって信じられないくらい素敵な人だった。
 その日は素香の家に泊まって、素香のベッドで何度もキスをして抱き合いながらいっしょに眠った。

 消防署の前を通り過ぎて原宿の駅に近づくにつれて、だんだん人が増えてきた。駅へ向かう歩道橋の上から見下ろすと、あたりはもう人だらけだった。
「すごい人だねえー」
 素香はあまりの人の多さに本当に驚いていた。
 歩道橋を降りると、参道まではもう人でいっぱいだ。わたしは少しおトイレに行きたくなってきたのを感じながら素香と手をつないで森の中の参道に入っていった。今朝家を出る前に昨日から泊まっていた親戚の叔父さんとお父さんがおせち料理をつつきながらビールを飲んでいた。
「おはよう、お正月だから優里ちゃんも一杯どお?」
 と叔父さんがニコニコしながら言ったので「えー、、、わたし未成年だしー」って笑って答えたら、お父さんが「いやー、まあ、正月だからいんじゃない」って言ったので、朝起きてのども渇いていたし、グビグビとコップに注がれたビールを飲んでしまった。朝からフワフワといい気分になったわたしは、そのあと叔父さんと学校の話なんかをしながら、お母さんが作ってくれたお雑煮を食べてから家を出た。きっとあのビールが膀胱に溜まってきているんだろう。
 途中で公園内の公衆トイレがあったけれど、女性用は外まで人が並んでいた。昔のわたしだったらたぶんここで並んでおトイレをすませたのだろうけど、今のわたしは夏休みからの訓練のおかげで、まだしばらくはガマン出来る自信があった。
 冷たい空気を大きく吸い込んで何となく空を見上げると、鬱蒼とした常緑樹の間から、おこがましい感じの、雲ひとつない青空がのぞいていた。ふと、加代子の家に泊まりに行った時のことを思い出した。

 加代子は本当に小さい時からずっとおしっこのことに興味があったみたいだった。
 おしっこを我慢している時の感覚が実はずっと好きだったって言っていた。おしっこのことに関しては、わたしよりずっとずっと先輩っていうことになるのかな。
 あの日は楽しかった。
 今までずっと、おしっこをガマンする事なんかに興味があるのはわたしだけだと思っていたのに、世の中に、それも同じクラスにわたしと同じ趣味のコがいたなんて、ものすごい偶然だと思った。きっと加代子もそう思ったにちがいない。
 加代子の家はJRの駅から5分くらいの距離なのにとても静かな場所で、東京都が管理しているという庭園のある公園に隣接している瀟洒なマンションの4階だった。
 海外の装飾品や調度品がセンスよく並べられたエキゾチックな雰囲気の洒落たリビングで、買ってきた料理をお皿に出して、テーブルの上に並べて二人で乾杯をした。加代子はキッチンの冷蔵庫を開けると「ねえ、ビール飲んじゃおーかー」と言って緑色のかわいい瓶のオランダのビールを2本テーブルに持ってきた。お正月におばあちゃんの家に親戚が集まる時や、大晦日の夜に家でスキヤキを食べる時に何度かビールは飲んだことがあったけど、大人がいないところで飲むのは初めてだった。
 加代子がアフリカンドラムのCDをかけて、二人でビールを飲みながらエビチリと酢豚と八宝菜と五目焼そばを食べた。
 リビングを包むように静かに流れるアフリカのパーカッションのビートがとても気持ちよくて、料理を食べながら緑色の瓶のビールを一本飲むと頭の中がホワっとハイな気分になってきた。
 加代子がキッチンから2本目の瓶を持ってきてから、自然に話題がおしっこのことになっていた。
「ねえねえ、おしっこ我慢してるとドキドキしちゃう時ってない?」
「あっ、あるあるー、おトイレに行けない状況でしたくなっちゃった時とかー」
 駅ビルの地下で買ってきた料理はけっこう美味しかったし、ビールを飲んで全身がフワフワと浮いたような気分になってきて、部屋に流れるアフリカのパーカッションのビートがこの上なく心地よかった。それにさっきから少しづつおしっこもしたくなってきている。
「ねえ、加代子っておしっこガマンするの得意なほう?」
「えーー、わかんないー、でも我慢するのは嫌いじゃないよ」
「ねえねえ、おしっこどれくらいガマン出来るか計ったことあるー?」
「えー、ないよーー、そんなことーー」
「ねえ、じゃあさあー、今日計ってみないー、誰もいないんだしー」
「えーー、はかるって、、どーやってはかるのよー?」
 加代子は楽しそうだった。かわいい瞳をクリっと輝かせている。
「それにさあ、ところで優里、何でおしっこ我慢する練習なんかしてるんだっけ、、、」
「あっ、そうそう、実はさあーー」

 わたしは今年の夏から始めた『我慢訓練』の話を加代子に告白しはじめた。
 加代子は身を乗り出して、そして時々「ああー、おトイレいきたいー」ってつぶやいて椅子から腰を少し浮かせながらわたしの話を真剣に聞いてくれた。
 もちろんわたしもトイレに行きたいのをガマンしていたので、気をまぎらわす意味もあってたぶん相当真剣な顔をして告白していたような気がする。
 自分が小さい時からトイレが近かったことから始まって、小学校でのおもらしやハプニングを思いつくまま加代子に話した。
 加代子は加代子で同じようにトイレをガマンしたエピソードが色々とあって、加代子がその話をしてくれる時には逆にわたしが身を乗り出して加代子の話を聞いた。
 そうやって二人でトイレをガマンしながら時々「あー、おトイレ行きたい、、、」とか言って、お互いのガマンしている姿を目の前に楽しみながら飲みなれないビールを飲んで色々とおしっこの話をして、妙なハイテンションで盛り上がっていった。
 結局わたしの方が先に限界になってしまって「あーー、、もうダメだ、お願い加代子ー、おしっこさせてー」と懇願しながらあそこを押さえてリビングのフロアーにうずくまってしまった。
 部屋のスピーカーからは相変わらず低い音でうねるような心地よいビートが流れていたのを憶えている。
「コレにしようよー!」
 と楽しそうに言いながらキッチンから加代子が出てきた。
 手には透明のガラス製の大きなサラダボールを持っている。
 わたしは下着を降ろすと同時に、加代子から渡されたサラダボールの中におしっこを迸らせてしまった。
 普段使っている、それもよその家の台所用品におしっこをするのはすごく抵抗があったけれど、膀胱はもう破裂しそうで、本当にガマンの限界を超えていたので勢いよくその中におしっこをしてしまった。
 途中で顔を上げると、加代子が目の前で嬉しそうにわたしのあそこからおしっこが出ているのを見ていた。
 やっとおしっこを全部出しおわって大きくため息をつくと加代子がティッシュの箱を渡してくれた。
「ひゃ〜、すごい〜、あたし女の子のおしっこ出るとこ初めて見たよ〜」
「ああ〜、でももうあたしもダメだ〜、優里のおしっこ見ちゃったらもう我慢できなくなってきちゃったよ〜」

 ずっとガマンしていたおしっこを全部出してすっきりしていたわたしは、今にもおしっこをしようとしている加代子を何とか押しとどめた。
「加代子、まだだめだよー、まずはこれ計らなくっちゃ、、どーやって計る?」
 あたしは黄色いおしっこが溜まって暖かくなったサラダボールを手にとって加代子の顔を見る。
「え〜、そんな〜、、、ちょっと待ってて、、、」
 加代子が前屈みの内股でキッチンへ入っていった。バタバタと少し慌てた様子でキッチンの中の引き出しや扉を開けたり閉めたりしているみたいだ。
「あったー」
 と言って、加代子がPYREX製の透明な料理用メジャーを持ってきた。
「これ1000ml用だから、だいじょーぶだよね」
「うん、だいじょーぶ」
「ねえお願い、早くして、、、あたしももうマジで限界なんだからー、、」
 加代子はせつない表情をして、少し前屈みのまま両足をバタバタさせている。
「ちょっと待ってて」
 と言って、テーブルの上にPYREX製の料理用メジャーを置いて、床の上にあったわたしの黄色いおしっこの溜まっているボールを手にとった。
「あ〜〜、もうダメだあ〜、優里いー、おねがい、早くしてーーー」
 加代子はジーンズのホックを開けると右手でファスナーを降ろしている。
「もうちょっと待ってー」
 と言いながら、ものすごく興奮してしまった。心臓がドキドキして頭の上に血がさかのぼってきた。わたしはテーブルの上で、おしっこをこぼさないように持ち上げた。おしっこはまだ温かかった。こぼれないように慎重に慎重にボールから料理用メジャーに注いでいる時、
「いゃー、もうダメーー」
 という加代子の悲鳴が聞こえた。
 あと少しボールの中に残っていた最後のおしっこを一気に注ぎおわると、加代子はもうジーンズと下着を膝まで降ろして可愛いお尻を丸出しにして床の上にうずくまっていた。わたしはスカートを履いていたのでパンツを降ろすだけでおしっこが出来たけれど、ジーンズの加代子はお尻が全部丸出しだった。急いで加代子にボールを手渡すと、加代子は慌ててそれを股間にあてがったけれど、すぐにはおしっこせずに、
「ねえ、優里、こぼれないか見ててくれる」
 と言って、バンビのような可愛い瞳がわたしに向かって恥ずかしそうに哀願していた。膝の上まで降ろしたジーンズに邪魔されて、加代子は自分で股間の様子を見ることが出来ないのだった。わたしは加代子の前に屈みこんでジーンズの下の股間を覗きこんだ。片手でボールの縁をつかんで大体の位置を確認しようとしたけれど、ジーンズが邪魔でよく見えない。急いで床に腹這いになると頭を加代子のジーンズの下に潜りこませて、両手でボールを抱えるようにした。これならよく見えるし、すぐにボールの位置の修正が出来る。
「加代子、これでたぶんだいじょーぶダヨ」
 目の前の加代子の股間を覗きこむ。
 少しだけ開いた加代子のアソコがすぐそこにある。
 この割れ目のどこらへんから出てくるのだろう。
 どこから出てきても対処出来るようにボールを少し床から浮かせて構えた。
「加代子、してもいいよ」
 わたしは息をのんで、おしっこが発射される瞬間を待った。
 それはまるで時間が止まっているか、もしくはものすごく遅いスローモーションで世界が動いているかのような感覚だった。
「うん、、、なんか我慢しすぎてなかなか出ない、、、それに優里に見られてるって思うと、、、」
 おしっこがいつ出てきてもいいように更に緊張してボールを構えなおす。
 加代子の荒い息遣いが聞こえる。
 ボールの内側には今まで入っていたわたしのおしっこの滴が残っている。
 よく見ると加代子のあそこは濡れてキラキラと光っていた。
 自分の心臓の鼓動が耳の内側から聞こえてくる。

「あっ、、出ちゃうっ、、、」
 頭の上の方から加代子のかよわい声が聴こえた。
 ポタポタっと何滴か雫がたれると、そのあと「シュッ、、」という小さな音がして水流が迸りはじめた。
 正面よりも少しだけ左の方に向かって放たれているその水流は、すぐに「シューー」という力強い音とともに勢いを増してボールの底に叩き付けられて、四方八方に細かい飛沫を散らしはじめた。
 水流の出てくる場所は、思ったよりも下の方だった。
 細かい飛沫は加代子の太股や床に少しずつ飛び散って、わたしの顔にも時々その飛沫が感じられる。
 と、その時わたしは大変なことに気がついた。
 水流の一部が加代子の左側のお尻をつたわって、ボールの向こう側の床にポタポタと垂れているのだった。
 あっ、大変だ、わたしは慌てて雫が何とかボールの中に収まるように位置を修正した。
 結局わたしのおしっこはは610ml。こんな正確な目盛りのついた容器で計るのは初めてだった。でも、たぶんこれが今までのわたしの最高記録に違いない。
 ところが何と加代子は720mlもガマンした。
「すごーい、加代子」
 PYREX製の透明なメジャーの赤い目盛りの向こうには、綺麗に透き通った加代子の黄色い液体が入っている。


「ねえ、ねえ、それにしてもすごい人出だねえ」
 加代子との事を思い出してエッチな気分になっていたけど、素香の声で急に現実に引き戻された。
 わたしたちは相変わらず人ごみの中、手をつないで参道の砂利を踏みながらゆっくりと進んでいる。
 そういえばおトイレに行きたかったことも思い出した。
 人で埋まった広い参道の曲り角のところに、神社の係りの人が立っていて、その横に白い和紙が貼られた木の案内板が立っている。白い紙には黒い墨で「本殿まであと約15分」と書かれていた。まるで高速道路の渋滞情報みたいだ。
「見て見て、あと15分もかかるんだって、、、」
 素香がびっくりした表情で指差した。
「ホント、すごい人だねえ、、、」
「おトイレ我慢してたら大変だよねえ、、」
 素香はきっと夏のことを思い出しているにちがいない。
「実はわたし、おトイレいきたいんだよ、、、」
と素香の耳許で囁いた。
「えっ、ほんとに?大丈夫?」
「うん、たぶんあと30分くらい何とかガマン出来ると思う」
「お参りすんだら急いでおトイレ探そう」
 何だか一度にいろいろなことを思い出してしまった。それもエッチなことばかり。わたしったらお正月早々なに考えてんだろう、まったく。
 加代子はあの後、酔っぱらってわたしに抱きついてキスをしてきた。リビングの照明をぐっと落として、パーカッションのビートが深く流れる中、ソファーの上でキスをしながらわたしのスカートの中に加代子の手が侵入してきた。加代子は指の使い方が信じられない程上手で、わたしは気がついたらソファーの上でまったくおかしくなってしまっていた。あんなになったのは生まれて初めてだった。あのあと加代子に、何でそんなに上手なの、って聞いたら、ふふふ、だっていつも自分でしてるもん、って言って笑っていた。でもわたしだって時々自分でしてるけど、加代子みたいに他の人に対してそんなにうまく出来るかというと、まったく自信がない。きっと人それぞれ感じ方が違うような気がするし。もしかして加代子ったらそういう経験が豊かなのかな、なんてつい考えてしまう。
 思わず加代子が素香のことを愛撫している姿を想像してしまい、チラっと隣の素香の方を見たら、思いっきり素香と目が合ってしまった。
「なに?」
ニコリと可愛い顔をして素香が言う。
「えっ、ううん、、何でもないよ、、、」
 ああ、ビックリした。まさかわたしが考えていたことを素香がわかるはずないよね。

 そういえば秋の林間の次の日に麻依が遊びに来た時も、エッチな実験をしちゃったっけ。
 加代子と麻依は仲がいいから、もしかしたら二人でエッチなことしてんのかなあ、なんて。
 こんど探ってみよう。

 そしてわたしはすごくいいことを思いついた。
 もちろんエッチなことだけど。
 メンバーは素香と加代子と麻依とそしてわたし。
 ふふふ、、、


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