電車ごっこ




とある電車の中、ほぼ満席で乗客はスマホをいじったり、目を閉じ揺れる電車に身を任せている。
その中で1人の女性が、体を硬直させて座っている。目が大きく整った顔立ちで色白、セミロングのやや明るい髪色のこの女性、時々、スカートを履いた太ももを擦ったり、目をキョロキョロさせたり落ち着かないような様子もある。
(早く着かないかな…)
車内にアナウンスが流れる。
「次は○○、○○です…降り口は右側です…」

この女性、名前は奈々子という。年齢は30歳の専業主婦。週に一度料理教室に通っており、今日はその帰りで電車に乗っている。
(あと二駅ね、8分くらいか…あぁ、それにしても…物凄くおしっこしたいよぉ…)
そう、奈々子は尿意に耐えているのである。
料理教室で作ったパンをコーヒーと共に食べ、その後教室の生徒3人と一緒にカフェでおしゃべりを楽しんだ。カフェでミルクティーを飲みながら… カフェではすでに、奈々子は尿意があったのだが、話が盛り上がってトイレに行きたいと言えなかった。このくらいなら我慢できると、余裕がまだあったから。後で、帰りに駅のトイレに寄れば大丈夫…と。 お開きになって皆と別れてから、駅でトイレに入るつもりでいたところ、ちょうど電車が来て、反射的に改札口でパスケースをかざし飛び乗ってしまった。
座ってすぐに、尿意の波が来て奈々子は後悔した。
(あぁ、かなりヤバいかも…コーヒー二杯とミルクティー二杯飲めば、おしっこしたいの当たり前だよね、さっきからしたかったけど、急にお腹に溜まってきたみたい…)
奈々子はコーヒーもミルクティーもおかわりしていたのだ。これを激しく後悔した。一杯少ないだけでも尿の量は違うのだから。
これらの飲み物に加え、真冬で寒いのも手伝い、奈々子の下腹部にじわじわと尿が送りこまれる。
(おしっこしたい…今すぐにでも出したい…ずっと力を入れてなきゃ、漏れちゃいそう)
奈々子はそんな訳で、膨らんだ下腹部を抱えながらかれこれ15分電車に乗っている。この辛い我慢も、あと8分。
しかしコーヒーやミルクティーの威力は、奈々子の予想以上である…
硬直していた奈々子だが、その姿勢も辛くなってきた。もう30歳なのだから、尿意を我慢してるなんて周りに思われたくない。しかし、そんな見栄も生理現象、しかもずっしりしてきた下腹部を抱えては崩れていく。
(黙っていられない…出ちゃうぅ)
奈々子はうつむき、左右にお尻を動かした。一瞬だけ大事な部分が押さえられ、尿意が和らいだ。しかしすぐに波が来る。恥ずかしいと思いながら、時々お尻を動かした。自分のこの行動で顔が赤くなってきたのが、自分でもわかる。
向かいに座っている男子学生が、こっちを見ている気がする。
(この歳でおしっこ我慢してるなんて、恥ずかしい…気づかれたかな?こんなにもじもじしてたら、わかるよね…)
「次は○○○、○○○です」
アナウンスが流れる。あと一駅で奈々子は下車できるのだ。しかし、停車する際のガタン!という揺れで奈々子の大事な部分が一瞬だけ緩んでしまった。
ジワッ…
(だめっ!)
奈々子はきつく太ももを閉じ、全身を大事な部分に集中させる。
(もうすぐ着くから、降りたら…トイレで出せるの…思いっきりおしっこ…あぁ、早くしたい!)
少しちびってしまったせいか、ますます奈々子は我慢が辛くなってきた。お尻をフリフリだけではきつい。手で直接押さえたくてたまらなくなってきた。
向かいの男子学生は、やはりチラチラ奈々子を見ている。奈々子と何度も目が合い、すぐにそらす。
(恥ずかしい…でも押さえてないと漏れちゃいそう…お願い、見ないでね…)
奈々子はスカートにポケットがついているのを思い出し、左手をポケットに入れて大事な部分を押さえつけた。そして膝に置いていたカバンを、押さえているあたりにずらした。奈々子はうっすら額に汗をかき、息が荒くなりそうなのを飲み込む。あと一駅、これで耐えることにする。
(たぶんあと3分くらい…早く、早く…)
3分は思いの外、長い。
「はぁ……ふぅ……はぁぁっ」
耐えられず段々息が荒くなり、隣に座っている年配の女性が気づく。
「あなた、どこか調子悪いの?」
「あ、ええ、ちょっと、でも次で…降りますから…」
「寒いし、風邪かしら?大丈夫?」
「ええ…大丈夫、です…(おしっこが出そうなんですぅ…)」
しゃべりながら漏れそうになったので、太ももを擦り合わせる。
向かいの男子学生が見ていた。
(いやぁ…恥ずかしいよぉ)
あと2分。
「はぁ……はぁ、んっ………」
こんなにも自分の膀胱が大変な事になるとは、奈々子も想定していなかった。とにかく、押さえる手に力を入れる。
片手はカバンの上、反対の手はカバンの下にあるのだから、なんとも不自然だろう。男子学生は、チラチラというよりも心配そうに見ている。奈々子の額にますます汗が浮かび、隣の女性が奈々子の顔を覗きこむ。
「辛いのね、可哀想に…帰ったら早く休むのよ」
「はっ…はい…(おしっこ出そうっ、帰る前に駅のトイレでおしっこするんだからぁ…)」
あと1分。
「はぁぁっ…ふぅ、ふぅ……」
下腹部にパンパンに溜まった液体が、出口を突破したがっている。
押さえた手は離さず、太ももを擦り合わせ、奈々子は恥ずかしくてたまらなかったが、こうしないと我慢できない。
(おしっこしたい…あぁ、おしっこしたいよ…私、着いたらちゃんと立てるのかな……)
激しい尿意。こんなに我慢するのは、子供の頃だけだった奈々子。
子供の頃はトイレよりも遊ぶ事が優先で、我慢しながら公園で遊んだりしていた。時々押さえながら家に帰り、トイレに一目散で入るのを母が見かねて、女の子は我慢しちゃだめよと何度も言われた。
大きくなるにつれ、あまり我慢せずトイレに行くようになってきたので、まさか奈々子が自分でもこんな目に合うとは思っていなかった……
(出そう…出ちゃいそう…あぁっ)
気が遠くなりそうなその時。
「次は、××駅、××駅です…」
(ああ良かった!早く降りたい!)
隣の女性もホッとしている。
「気を付けて帰るのよ、大変だったわね!汗拭いたらどう?」
ハンカチを差し出してくれたが、奈々子の頭はもうトイレでいっぱい、体は我慢する事でいっぱい。
「あ…も、もう…(しゃべるだけでおしっこ出そう…)」
もう電車が止まる。奈々子は早くドアの前に行きたくて立ち上がった。精一杯我慢して押さえていた手を離してポケットから出し、カバンを持って…
その時、パンツの中に、堪えていた液体がほんの少しだけ流れ出た。
チョロ、ジワッ…
「んっ!」
真っ直ぐ立てない。誰が見てもへっぴり腰の奈々子。せめて押さえたいのを必死で堪えて、大事な部分に力を入れる。隣の女性が慌てて支えようとしてくれた。こんなに親切にされてるのに、奈々子は体調が悪いのではなく、ただただ放尿したいだけなのに。
向かいの男子学生は、もちろんわかっていた。自分よりだいぶ年上の綺麗な女性が、尿意に耐えているって事を… 本で見たことはあったが、実際にもじもじして顔を赤らめているのを目の当たりにして、この学生は大事な所を固くしていたのだ。
奈々子が前屈みでドアの方に行くのを、もっと我慢しているのを見たかった…とドキドキしながら見届けた。固くなった所にカバンを置いて…。

駅に着き、ドアが開くと同時に奈々子は前屈みで降りた。ホームが寒く、その刺激でまたちびる。
ジュッ、ジュッ…
「ああぁ」
奈々子は恥ずかしい声を出してしまった。本当にヤバい。
スカートのポケットに手を入れて大事な部分を押さえつけ、目に涙を溜めながら改札口に向かう。
カバンから何とか出したパスケースを片手に、もう片方の手をポケットに入れて腰を曲げ、息をハァハァと荒げるその姿は、我慢限界ですぐにトイレに入りますと周りに宣言してるようなものである。
奈々子は恥ずかしさと荒れ狂う尿意で、とうとう涙がこぼれた。
とにかく改札を出て、トイレに向かう。
(間に合う、間に合う…もうすぐだから…)
何度もちびりながら、トイレについた。奈々子の尿道口は反射的に緩んでしまう。
ジュッ…
(あぁ、まだおしっこだめっ!もう便器に出来るから!)
奈々子は個室のドアを閉めた。洋式と和式があったが、手前の和式に入った。
膀胱が勢いよく、液体を出したがっているのを、奈々子は涙を流しながら堪える。タイツとパンツを下ろさなければならない。この何秒かの作業が、奈々子にはもう大変な事である。
カバンを隅っこに置き、コートとスカートを捲る。へっぴり腰で足踏みをしながらタイツとパンツを下げたいのに、へっぴり腰なためになかなか下げられない。
ジュッ…
「あぁ、まだだめ……」
足踏み、へっぴり腰、さらにお尻を左右に振る。
「脱げない…はぁっ…」
目の前にある便器を目掛けて、奈々子の満タンの液体がとうとう出口から溢れて…
ジュゥ、ジュワーッ…
「だめーっ!」
奈々子はそのまま力尽き、しゃがみ込む。
シュゥゥー……
スカートは捲ってるが、タイツとパンツを履いたままで放尿を始めてしまった…
「あっ、ああっ………」
パンツの中ではこもった音ながらもシューッと放尿音をたてる。我慢し続けて出口が麻痺してるのか、何秒かは出方が細かったが、だんだん勢いよく出ているのが感じ取れた。水流が太くなり、便器にジョボジョボと音を立てて放尿している。
奈々子は涙がこぼれながらも、タイツとパンツを履いたままでも、出している事が快感だった。
(おしっこ……我慢したおしっこ、気持ちいい……)
シャシャシャーッ、ジュゥー、ジョボジョボジョボジョボ、と豪快な音をたて1分半は出しただろうか、チョロチョロ、ピチャッ、と終わって我に返った奈々子はしゃがんだまま考える。
(これじゃ、帰れないよね?どうしよう、タイツとパンツ…)
駅からは家まで10分くらいだから、とりあえず濡れた所を拭いて帰れば大丈夫なのだが…
(慶太さんがいる!)
慶太は奈々子の夫。今日は仕事が休みで、家にいるのだ。
料理教室の後でカフェに寄るという話を携帯ですると、快く許してくれた。そんな夫が家で待っている。
(私って情けない…トイレに間に合ってもこれじゃお漏らしだわ…これで帰るわけにはいかない)
涙を拭い、タイツの上からトイレットペーパーで濡れた所を拭く。
駅の隣にコンビニがあるのをわかっていたので、まず便器の黄色い液体を流し、手を洗ってトイレを出た。
(ああ、濡れて気持ち悪いよぉ…歩きにくいし、におうかなぁ)
コンビニでパンツとタイツを買おうと入ったのだが、タイツはあるが、パンツは男性用しかない。しかも店員が男性しかいなかったので、聞くのも恥ずかしい。
奈々子は自分が履いているのと同じ黒いタイツをレジに持っていった。タイツでも男性にレジを打たれるのはちょっと恥ずかしい。
奈々子はそれをコンビニで履き替えるのも恥ずかしく、また駅に戻っていった。
寒い上に濡れたものを履いているので、奈々子はとても寒く感じた。
駅のトイレに再び入る。今度は奥の洋式の個室に入って、はぁ、と溜め息をついた。
便器に腰掛けて、濡れて脱ぎにくいタイツとパンツを少しずつ下ろす。白いパンツの股の部分は、黄色くなっていた。
(ほんとに、間に合わなかったんだなぁ…慶太さんに絶対言えない)
下半身を、カバンに入れていたウェットティッシュで丁寧に拭く。太ももの内側、お尻、大事な部分を拭いてスッキリした。しかし寒い。すぐに皮膚が冷たくなる。
申し訳ないと思いながら、タイツとパンツを汚物入れに入れた。
そしてノーパンでタイツを履いてみたのだが、パンツがあるのとないのではこんなにも違うのかと、奈々子はびっくりした。
(お漏らしの履いてるよりずっといいけど…スースーする…なんかまた、おしっこしたくなりそう…)
奈々子の予感は当たる事になる。
奈々子は知らないが、壮絶な我慢をした後は、またすぐ尿意を催すことがある。今日は寒さも手伝い、家まで10分の距離を歩く間に奈々子はまたトイレに行きたくなった。
(え?さっき全部出なかったのかな?えっ、急に凄くおしっこしたくなっちゃったよ…)
奈々子は焦り、走って家まで向かった。寒さか、まだお腹に残っていたのか、と考えながら。
お漏らしのままコンビニに行ったり、トイレで履き替えたりして冷えるのも当然。今タイツだけなのが、余計に寒さを感じる。女の人は、そんな刺激でも尿意に繋がるのだ。それに、かなり我慢をして弱りきっている尿の出口は、もう力が入らない。
奈々子はマンションの七階に住んでいる。玄関を入ってすぐ、エレベーターに乗った。
「おしっこ……また、凄くおしっこしたい……はぁ」
奈々子は恥ずかしい独り言をつぶやいて足踏みをしながら、七階まで我慢した。
(なんで?なんでこんなにおしっこ近いの?あぁ、また出そう…)
七階に着き、エレベーターのすぐ隣が奈々子の家。チャイムを押した。
(早く、慶太さん、開けて……)
奈々子は足踏みをしていたが、慶太がドアを開けると足踏みを止めて何事もない顔をした。
「おかえり!楽しかったかい?」
「あ、うん、た、ただいま…」
奈々子は涼しい顔をして室内に入った。カバンを置いてコートをハンガーに掛けながら、慶太が見てないのを確認して足踏みをする。
(おしっこ、お家だから思いっきりしたい!あぁ、早くトイレに…)
奈々子は前屈みでスカートの上から手で押さえ、手洗いうがいよりも先にトイレに入った。足踏みしながらタイツを膝まで下げて、便器に腰掛けると同時に…お漏らしじゃない、ちゃんと大事な部分を晒した放尿。
ショショーショワショワショワショワシャァーッ…
「ん、はぁーっ…」
量はさっきの半分くらいだが、勢いがよく豪快な音で便器に叩き付け、奈々子はまた快感。
(ああ…気持ちいいよぉ…)
出し終わってポタポタ、と雫を落としながら、奈々子は少し余韻に浸る。
(こんなに気持ちいいものだっけ、おしっこって…)
トイレットペーパーで拭いて、流し、トイレを出てすぐに手洗いうがいをした。
慶太がそばにいて、いたずらっぽく笑みを浮かべて言う。
「奈々子でも、トイレ我慢するんだなぁ」
奈々子はドキッとした。そもそも我慢を2回して、1回目がお漏らしだとは絶対言えない。
「何よぉ、急に」
「真面目な奈々子が、手洗いうがいもせずトイレ行くなんて…よっぽどだろ?」
「ま、まあ、たまには…ねっ」
「生理現象だからそんな事もあるよな!トイレしてる音、聞くつもりなかったけど聞こえちゃった」
「やだっ…恥ずかしい!」
「まあまあ、気持ち良さそうな音だったよ…ところで、夕飯の買い物行くよね?」
「う、うん」
慶太は気づかなかったが、奈々子は顔を真っ赤にしていた。
お漏らしは内緒だけど、恥ずかしい音は聞かれた…思いっきり出してた音を…
更に、今タイツの下にはパンツを履いていない…
慶太がリビングのソファーに座っているのを確認してから、奈々子は寝室のタンスからピンクのパンツを出し、急いでタイツを脱ぎ、パンツとタイツを履いた。
心臓が身体中にあるかと思うほど、ドキドキしている。
(こんな事、もう2度とないように気をつけなきゃ…恥ずかしいもん……でも、たくさん我慢してするおしっこって…気持ち良かったなぁ)

奈々子はそれ以来、外での我慢はしなくなったが、家では時々限界まで我慢して放尿するのが癖になってしまった。
お水をたくさん飲み、ソファーに座り、両手で押さえて我慢する。
「ああっ、おしっこしたいの…ねぇ気づいて…私、おしっこ…ずっと我慢してるの…ああぁ…」
いつかの男子学生を思い出して。
「はぁ、はぁ、ああぁ、出るぅ」
心配して手を貸そうとした年配の女性、その周りにいた人々に見られていると、想像しながら。
「出る…みんなに見られてるのに…はぁ、はぁっ……」
お尻や足をもじもじしながら、限界まで我慢。
そして奈々子は風呂場に行き、スカートを捲るとパンツを下げてしゃがみ込む。想像では、電車の中で。
「おしっこの音聞いて…おしっこしてるとこ、見て…」
奈々子は排水溝に向けて、シャァーッと黄色い液体を出す。
「ごめんなさい、電車なのに、でも気持ちいい…ああっ…」
シャーシャーッと出しながら、指で感じる所をいじって…出し終わる頃
「おしっこ、たくさん出た…ああっ、いく!」
奈々子は昇天して、最後の一絞りをプシャッ、と出す。
尿以外の、感じる時の液体をトロトロ出しながら………
慶太には内緒で、奈々子はいけない快感に浸るようになってしまった。

余談だが、あの時電車に乗っていた男子学生も奈々子の事を時々思い出して、部屋でこっそり気持ちよくなっている。
自分の目の前で、もじもじと動かしていたお尻や太もも…
降りる時に真っ直ぐ立てず、前屈みだった姿勢…
日によって、トイレに間に合ったバージョンやホームで漏らしたバージョンなどを考えながら、電車で脳裏に焼き付いた女性がすっかりネタになってしまった。
奈々子がそんな事を知る由もなく………

「あっ、あっ、おしっこ漏れちゃう…電車の中なのに…」

 

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