それぞれの出航(たびだち)1




 7月18日、由衣は新宿駅で甲府から出て来る真理を待っていた。
この日は希美の結婚式であった。
グループの中で一番オクテだった希美が結婚!?
知らせを聞いたとき、由衣はもちろんのこと、真理も飛び上がって驚いたと言う。
その真理は、5月の連休に会ったときのハデな茶髪を戻し、この日のために買いそろえたようなパンツスーツ姿で現れた。
普段はしないメイクまでしてる。
由衣もまためいっぱいおしゃれして、ミニのドレススーツ姿である。
ふたりは地下鉄に乗り換え、赤坂見附に向かう。

真理「まいったねえ、出来ちゃった婚かよ!」
由衣「うん。早かったねえ。」
真理「由衣はいつごろ聞かされたんだ?」
由衣「うん、妊娠したって聞いたのは・・5月の中頃かな?」
真理「なんだ。このまえ甲府に来た時の後かよ?」
由衣「うん。あのあとすぐぐらいに電話があったよ。できちゃったって。」
真理「はあ・・お子様は加減を知らないからなあ・・」
由衣「真理っぺぇ、言い過ぎだよぉ!」
真理「お前はまだなのか?」
由衣「あ・・うちは・・まだだよ。」
真理「式は挙げるんだろ?」
由衣「う〜ん、とりあえずあ〜ちゃんの仕事が落ち着いたらね。」
真理「やれやれ、幼い順に結婚式かよ!」
由衣「ひどいなあ!!」

にぎやかな2人が赤坂見附駅を出て、会場のホテルに向かっていると、2人を追い越したタクシーが停車し、中から長身の香織が降り立った。

真理「よう香織。生きていたのか!」
香織「おう、お前ら相変わらずちっこいなあ!」
由衣「かおりん!、行方不明になって心配したよ〜?」
香織「あは・・悪い悪い。ちょっといろいろあってさ、雲隠れしてたんだ!」
由衣「私たちには連絡してよ〜!」
真理「まあ生きているとは思っていたけどな。」
由衣「よく知らせが届いたね?」
香織「ああ、たまたま実家に電話したらさ、ののが結婚するって聞いてさ。」
由衣「驚いたでしょう?」
香織「ああ。お子様が出来ちゃった婚だもんな。」
真理「けっ、オイラと同じ事言ってる。」
香織「幼い順に結婚だもんな。」
真理「それもオイラが言った。」
香織「みんな同じ事を想ってるんだよ。」
真理「まあな。さ、行こうぜ!」

香織が加わって、更ににぎやかさを増した3人はホテルに入り、希美の控え室へとなだれ込んでいった。

 4ヶ月目に入っているのに、希美のおなかはまだ目立たなかった。
純白のドレスに身をまとった希美は、かわいいと言えばかわいいが、やはり学芸会のお姫様を思わせる幼さがにじみ出ていて、とても「妊婦」とは思えない。
新郎との身長差を縮めるため、本来なら10センチほどのヒールを履くようだが、妊婦であるためにドレスの下に履いていたのはパンプスであった。
 およそ100人ほどの盛大な披露宴が行われ、職場結婚ゆえの盛り上がりがあった。
出来ちゃった婚であることは公表されていて「子供が子供を産む」と言うような冷やかしの表現が何度もあり、希美は照れ笑いをしていた。
新郎の福谷明もまた、希美の顔を見ながら苦笑している。
その姿は確かに幸せさを物語っていた。
 披露宴も後半になるとかなり砕けてきて、職場の先輩や同僚がひな壇に集まり、新郎新婦にビールを勧めたり冷やかしたりと、にぎやかになっていた。
もちろん希美は妊娠しているからお酒は飲めない。
代わりに用意されていたオレンジジュースを、何度も何度も注がれていた。
(のの、おしっこ大丈夫かなあ?)
冷房が効いた会場で、薄着のドレス姿の希美。
おなかには赤ちゃんが育っているから、膀胱も小さくなっているはずで、普段からトイレが近い希美にとって、けっこう辛いのではないかと由衣は気をもんでいた。
由衣でさえ1度トイレに行っている。
着付けから始まって挙式、披露宴と続き、希美はかなりの時間、そう、およそ4時間以上もトイレに行っていないであろう。
(もうすぐお開きだから、ののちゃんがんばれ!)
由衣は心の中で応援していた。
 そうこうしている内に、由衣たちにスピーチの順が回ってきた。
3人はひな壇の前に行き、

真理「のの!、おめでとう!オイラ自分の事のようにうれしいよ!」
香織「かわいい花嫁さんだよ。」
由衣「ののちゃん、よかったね!」

と、お祝いの声をかけ、新郎の友人が演奏するギターに合わせて歌い出した。
「♪どこまでも幸せ求めて♪」
(※著作権の関係で歌詞は省略させて頂きますが、いい歌です)
あらかじめ歌詞を係に渡してあったおかげで、歌い出すと会場の照明が落とされ、由衣たちと新郎新婦だけが浮かび上がるスポットライトに変えられて、ややざわついていた会場が静かになり、ギターの音色と由衣たちの歌声だけが会場を包んでいった。
控え室で2度ほど練習しただけの歌であったが、音楽的センスがいい香織は男性パートをしっかりと歌い、きれいにハモっていた。

由衣「のの!、今の歌のように・・ふたりで幸せになってね!」
香織「あなたと私と子供のために・・だぞ!」
真理「元気な赤ちゃん産めよ!」

歌い終わった3人が締めのスピーチをしていると、新郎新婦の頭の上に大きなスクリーンが降りてきて、ナレーションに合わせて二人の生い立ちなどのスライドが投影されだした。
希美が中学2年までいた函館山の夜景が投影されると、希美の目から涙が溢れてきた。
転校して来た足立区の中学校が投影されると、その涙はますます激しくなり、高校時代、そして短大に入って由衣たちとの出会いが紹介され出すと、肩をふるわせて泣いてた。
新郎との出会いのシーンになると、録音されていたのか、先ほど由衣たちが歌った歌がBGMとして流れ出し、会場からもすすり泣きが聞こえてきた。
 しんみりとしたムードのまま宴は終盤を迎え、両親への花束贈呈へと移っていった。
末席に立つ双方の両親がスポットライトに照らされると、一人っ子の希美を嫁に出す父親の、涙でくしゃくしゃになった顔が浮かび上がった。
その姿がまた涙を誘う。
 新郎に支えられるように末席に歩み寄った希美が、
「パパ、ママ・・ありがとう・・」
叫ぶような声で言った時、あちこちのすすり泣きはいっそう大きくなり、抱き合った父娘の美しい涙に、由衣も真理も香織も感極まって泣いていた。
 新郎の父親の謝辞に続いて、新郎福谷明の
「必ず希美を幸せにします!」
という力強い誓いの言葉で締めくくりとなり、双方の両親と新郎新婦は、シモンズというデュオの「ふたりだけの結婚式」という曲に会わせて退場していった。
 まだ余韻が残っている会場。
普段は男勝りな口調の真理が目を真っ赤にしている。
香織もハンカチで目頭を押さえていた。

 地方から出席した真理と香織のふたりは、ホテルの宿泊が用意されていた。
披露宴会場を後にし、由衣もその部屋でしばらく休んだ。

由衣「よかったねえのぞみ・・・」
香織「ああ、なかなかいいセッティングだったね。」
真理「オイラたちの歌から盛り上がったよなあ。」
由衣「私たちの歌がBGMで流れたとき、ビックリしたね。」
真理「アレは予想外だったけど、いいマッチングだったな。」
香織「そうだな。機転が利く演出だったよ。」
由衣「二次会も楽しみだね。」

 希美たちの披露宴二次会が、六本木にあるパブを借り切って行われる。
由衣たちがその会場に着くと、披露宴に参加できなかった短大時代の懐かしい顔ぶれが集まっていた。
新郎の友人たちも多数参加しているようで、会が始まる前から盛り上がりを見せていた。
いわいる「大人」がいないその会は、かなり打ち砕け、下ネタっぽい発言も飛び交い、新郎新婦の二人は何度もみんなの前でキスさせられて振り回されていた。
希美が妊娠中であるため、会場は禁煙にされていた。
新郎とその友人たちの思いやりが出ている。
 やがて希美が由衣たちのテーブルに来ると、はじめは希美を冷やかしたり、赤ちゃんの話で盛り上がっていたが、やがて同窓会の雰囲気が濃くなり、みんなの目は由衣たちにも向けられた。

友A「けどあんたたち、ほんとに仲いいねえ。」
友B「ほんと。香織がリーダーでさ、◎●大のモー娘。だよね。」
香織「と言うかさ。由衣の名前が亜依でさ、保育士のミカがいたら・・・」
真理「けっ、ミニモニだっつぅんだろ!」
ミカ「私、ここにいるよー!」
希美「あっミカちゃ〜ん、来てくれたんだ!!」
ミカ「のの、おめでとう!!」
友C「わお!、ミニモニ復活!!」
友D「早速じゃんけんピョンを踊れー!!」
真理「えーっ、やだよオイラ。」
希美「真理ちゃん、やってみよ!」
由衣「うん、楽しいかも!」

リーダー格の香織が、しぶる真理を引っ張り出し、由衣たちも前に出た。
すると、こうなることを予定してあったのかのように、すぐにミニモニ。のジャンケンぴょんのカラオケが流れ出し、真理もすぐに機嫌を取り戻して踊り出し、そのおどけた仕草に会場はわき上がった。
偶然とはいえ、よくも146センチ前後の4人が、そして似たような名前の4人が揃ったものである。
2年前の学祭で飛び入りで踊ったきりであるが、それなりに振り付けも覚えており、希美は飛び跳ねるのを控えていたものの、拍手喝采を浴びた。

友A「そういえば小原、あんたも結婚するんだって?」
友B「えー、そうなんだ?」
真理「するんじゃねえよ。もう籍入ってるってさ。」
友C「へえ、そうなの!?」
由衣「うん、もう松本由衣で〜す!」
友A「あはあ・・披露宴はやんないの?」
由衣「うん。旦那のお仕事が落ち着いたらね。」
香織「幼い順に結婚だよ。」
真理「それオイラが言ったって!」
友B「はあ・・希美と由衣が結婚ねえ!?」
香織「ミニモニ解散後のダブルユー並だろ!」
友C「ほんとだねえ。そこまでやるかって!?」
ミカ「じゃあさ、私は留学しないといけないじゃん!」

ミカのとぼけた発言にみんなは大笑いし、やがて席に回ってきた新郎をエサに、女の子としてのするどいツッコミを繰り返して、新婚の二人を楽しくいじめて盛り上がっていった。

 由衣がトイレに立つと、希美が後から着いてきた。

由衣「のの、体の方は大丈夫?」
希美「うんありがとう。平気!」
由衣「披露宴の終わり頃さ、相当がまんしてたでしょ?」
希美「え?・・ああおしっこ!?」
由衣「うん。」
希美「やっぱり由衣ちゃんには気づかれてた?」
由衣「わかるよ。」
希美「へへ・・生理用のナプキン当ててたよぉ。」
由衣「そうなんだ。オムツしてたんだ!」
希美「やだ〜、そういう言い方ぁ!」
由衣「あは・・ごめ〜ん。」
希美「挨拶の時は緊張してたから・・忘れていたけどね・・。」
由衣「うん?」
希美「みんなを見送るときはさ、もうガクガクだったよぉ。」
由衣「そうみたいだったね。顔が引きつってたもんね。」
希美「みんなが写真とか撮るっていうからさ、もう泣きそうだったぁ。」
由衣「間に合ったの?」
希美「うん。控え室にトイレあったし、すぐ脱げるドレスだったから。」
由衣「お色直しの後のミニドレス、かわいかったよ!」
希美「へへ・・わざと幼く見えるようにしたんだよぉ。」
由衣「そうみたいだったね。でさ・・」
希美「ん?」
由衣「なんで妊娠しちゃったわけ?」
希美「え・・ああ・・」
由衣「彼が失敗したの?」
希美「ん〜・・というかねぇ・・」

希美はやや口ごもったものの、やがて由衣に耳打ちするかのように話し出した。

 その土曜日の夕方、年度末の決算がようやく終わってホッとしていた希美は、彼の部屋に来ていた。
一緒に夕食を摂り、軽くビールを飲んだあと、疲れていた希美はいつの間にか眠ってしまっていた。
気がつくとセーターやスカートが脱がされていて、彼の手が希美の体中を走り回っていた。
一気に火がついた希美は、疲れのけだるさも忘れて彼を迎え入れようとしていた。
しかし飲んでいたビールの作用で、希美には強烈な尿意があった。
由衣から「おしがま」の手ほどきを受けていた希美は、何度かおしがまエッチの体験していたが、この日の尿意はきつかった。
かといって、もうその気になっている彼を止めるのはかわいそうに思え、また希美自身も早く彼を受け入れたいと感じていた。
 いつもより激しい反応を示す希美に、彼のテンションも一気に高まって、勢いよく希美の体を割ってきた。
何とも言えない挿入感と尿意が入り交じり、希美はいつになく声を出してしまう。
それに反応して、彼の動きも激しくなっていた。
 小さな体の希美の、膨らみきった膀胱が内側から刺激され。尿意はすぐにピークに達してしまう。
「あっ、だめっ・・おしっこ出ちゃうぅ!」
たまらなくなって希美は狂ったようにもだえてしまった。
次の瞬間、シュルル・・という音がして、あふれ出してきた希美のおしっこ。
「やああっ出ちゃったあっ!」
あわてた希美は何とかそれ以上の流出を防ごうと、彼に思い切りしがみつき、両足で彼を抱え込んでいた。
 彼は彼で、希美からあふれ出す熱いものを股間に感じ、その感触と希美のもだえ方に興奮して一気に高まっていた。
そのとき、希美が両足で彼を抱え込んできたのであった。
「あっの・・のぞみちゃん!!」
いたずらから発展した彼はゴムを着けていなかったが、必死でしがみつく希美の体から抜けられない。
希美のおしっこは外へ。
彼の体液は希美の体の中へ・・・
それぞれあふれ出していった。
希美は生理が終わってちょうど2週間目であった。

由衣「そうなんだ・・のののおしっこで出来た子なんだ!」
希美「や〜ん、そういう事言わないでよぉ!」
由衣「あは・・ごめん。でもさ、半分はののにも責任あるみたいだね。」
希美「だってぇ、おしっこ止めようとしたんだもん!」
由衣「どっちみち止まんなかったんでしょ?」
希美「・・うん・・」
由衣「彼もちゃんとしていなかったんだなあ・・・」
希美「由衣ちゃんたちはさ・・ちゃんとしてるの?」
由衣「うん。前に一度・・せずにしたことあるんだけどさ・・」
希美「大丈夫だったんだ!」
由衣「けど、そのこと水風船博士に言ったら怒られたよ。だめだって。」
希美「わあ、そんなことまで博士に報告してるの?」
由衣「あは・・まあね・・・。」
希美「けど・・私今、とっても幸せだよ!」
由衣「そうだね。ちゃんと結婚するってさ、男らしいよね、彼!」
希美「うん。おしがまエッチのおかげかなぁ?」
由衣「あ、だったら私のおかげでもあるんだ!」
希美「ん〜・・それはどうかなあ?」
由衣「どうしてよ〜?」
希美「だってぇあの時のおしがまエッチは偶然だもん!」
由衣「ん?」
希美「しようと思ってしたんじゃないもん!」
由衣「ああ・・そりゃそうだね。」

 席に戻ると、いつの間にか新郎新婦の友人が入り交じり、さながら合コン状態になっていた。
由衣に声をかける男に対し、
「由衣ちゃんはダメっ!この子はもう人妻なんだよぉ!」
希美は由衣を守るかのようにして、つないでいる手を離そうとしなかった。
「おやおや、お前らほんとにダブルユーだな!」
香織が言った一言で会場に笑いの渦が広がった。

 グループの中で、あるいは同級生の中で、もっともオクテて幼さが残っている希美が、今日結婚式を挙げ、そしてそのおなかには赤ちゃんが育っている。
22歳の希美は今日、新しい世界へと出航っていった。
「おしっこが近い希美ちゃん。お幸せにね!」
由衣が別れ際に言うと、希美は由衣のほっぺをつまんで
「お前もな!」
と、これまで使ったことがない言葉で返してきた。
(わっ、ののが強くなってる!)
由衣は母親になろうとしている希美に、ふとたくましくなりつつある何かを感じていた。

 真理と香織はホテルに帰る。

真理「由衣、お前もホテルに泊まれよ。」
香織「ああそれがいい。飲み直しでもしよう。」
由衣「え、だって私は部屋がないもん・・」
真理「オイラと一緒に寝たらいいよ。な、かおり?」
香織「ああ!」
由衣「見つかったら怒られない?」
香織「わかりゃしないさ。」
真理「香織がフロントに寄ってる間にエレベーターに乗り込もうぜ!」
香織「それがいいよ。」
由衣「いいのかなあ?」
香織「どうせお前ら2人で1人分の体積だろ?」
真理「けっ、かおりがでかすぎるんだよ!」
香織「まあ何か言われたら由衣は私の子供っていうことでさ!」
由衣「もうおぉ!」
真理「よっしゃ、行こうぜチョビ!」
由衣「うん・・え!!?」
香織「ちょび・・?なんだそれ?」
由衣「・・・(@_@):」
真理「へっへっへっへ・・・」


つづく
 

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