のぞみちゃん1(優しい彼)




 ミニ同窓会が終わって1週間ほどが過ぎたある日の夕方、希美(のぞみ)が由衣の会社にやって来た。
「ののたん!、どうしたの急に!?」
ロビーで由衣を待っている希美は、いつもは履かないジーンズにスニーカー姿で、ボーイッシュな感じであった。
「あ、ごめんね由衣ちゃん、仕事中に・・・」
「ううん、もうすぐ終わるから待ってて。お茶しようよ!」
「うん、待ってる!。由衣ちゃん、その制服カッコイイね!」
由衣は大急ぎで仕事のケリをつけ、ロッカールームに駆け込んだ。
(ののたん、どうしたんだろ?なにかあったのかなあ・・?)
連絡もなく現れた希美。
由衣に不安がよぎった。

会社そばのミスタードーナッツに入る二人。
「ねぇののたん、今日はどうしたの?」
由衣はおそるおそる聞いてみた。
「うん、今日はお休みでさ・・・」
フレンチクルーラをほおばりながらしゃべる希美からは、由衣が思ったほど深刻な様子はうかがえない。
「この前立て替えてもらってたホテル代・・持ってきた。」
「え・・ああ、いつでも良かったのに・・」
「うん、ちょっと由衣ちゃんの顔・・見たかったし・・」
「は・・?」
「へへ・・」
「??」
深刻な様子ではないが、なにかはにかんだような笑いを浮かべる希美。
「どうしたのさ?」
「うん・・・」
希美はエンゼルクリームにも手を出して、大きくかぶりついた。
はみ出したクリームを舌で受けながら、
「ねえ、この前のホテルで話した事でさ・・・」
「は・・?」
「2日目の夜・・私が眠っている間の・・・」
「ああ、かおりんと真理っぺのこと?」
「うん、なんかさ・・すごい話になっていたんだって?」
「あは・・かおりんから聞いたの?」
「うん、かおりんがお部屋に帰ってきた時さ、ちょうど目が覚めて・・」
「何を話してたか聞いたんだ!」
「ん・・かおりんたらね、おしっこの話で盛り上がったって・・」
「のの!、声が大きいよ!」
「あ、うん・・あの・・」
「?」
「私のこと・・しゃべった・・・の?」
「ののたんのこと・・って、飲み会の帰りのこと?」
「・・うん。」
「ううん、しゃべってないよ。阿蘇山の事だけだよ。」
「・・・そっか・・・」
「あ・・それ気にしてたんだ!」
「うん、それもあるけど・・」
「まだあるの?」
「うん・・かおりんとか真理ちゃんはさ・・なに言ってたのかなって・・・」
「あ・・うん、ののたん興味あるの?」
「興味・・っていうかさ・・ちょっと気になって・・」
はにかみながらしゃべる希美は、照れ隠しするようにストローをいじくっていた。
「うん、かおりんも真理っぺもさ、ナイショだって言わなかったからさ・・」
由衣は希美に、ホテルで聞いたふたりの失敗談を思い出しながら、自分なりの感情を交えて話していった。
周囲の耳があるので、大きな声ではしゃべれない。
顔を近づけて聞き入る希美の目は、明らかに輝やいているようであった。
(ののたん、ひょっとしてお仲間なんじゃないのかな!?)
話をしながら、由衣は希美の変化に気づいていた。
「・・・だったんだって!」
「わあ、かおりんも真理ちゃんもすごいんだ!」
「うん、私も聞いててドキドキしてたよ。」
「だよねえ。私もドキドキしてるよ。恥ずかしかっただろうなあ・・・」
「そりゃあね。男の人の前だもんね。」
「うん・・」
「その点ののたんはさ、直接見られてないからよかったじゃない!」
「うん・・」
「・・?」
「あの時はね・・・」
「え・・のの!?」
「由衣ちゃ〜ん!!」
突然希美が甘えたような声で由衣の顔を見た。
「あのね・・ナイショだよ・・」
「ん・・?」
「私さあ・・・大失敗しっちゃったあ!!」
「え、いつぅ!?」
「この前・・みんなと別れた後・・・」
「って・・彼氏んちに行ったんじゃなかったっけ?」
「うん・・」
まさかと思うような告白が、希美の口からこぼれてきた。
学校帰りの女子高生でにぎやかな店内の片隅の席で、希美はポツリポツリと話し出した。

*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*

 会社の先輩・福谷明に、ビアパーティーの後の醜態を知られてしまった希美だが、優しい福谷はそれ以後も全くそのことには触れず、普段通り接してくれていた。
いつしか帰りの電車を待ち合わせするようになり、時には有楽町で降りて銀座を歩いたり、東京駅で降りて食事をしたりと、だんだん親密な関係になっていった。
トイレが近い希美のために、彼はいつも気を遣ってくれ、そっと希美がトイレに立てる時間を作ってくれたりもしていた。
それがかえって恥ずかしく思える希美ではあったが・・・。
 9月の終わり頃、とうとう希美は赤羽の彼のマンションを訪れるまでになり、そこで深い関係になった。

11月3日。
香織や真理たちと新宿駅で別れた希美は、埼京線に乗って彼の部屋に向かった。
 新宿を出た頃は小雨だったが、赤羽に着く頃には雨あしも激しくなっていた。
(どうしようかなあ・・迎えに来てもらうのも悪いしなあ・・)
新宿駅で「今からそっちに行く」と電話したとき、福谷はまだ寝ていたのか、少し不機嫌そうなガラガラ声であった。
(いいや!、このまま行っちゃおう!)
希美はそう思い、折りたたみの傘だけ取り出して、着替えなどの入った荷物をロッカーに預けると、雨の中を歩き出した。
 赤羽の駅から福谷の住むマンションまで、希美の足で歩くと15分ほどかかる。
まだ歩き慣れない道であり、おまけに傘をさして、しぶきがかからないように歩くと、20分以上かかるかもしれない。
それでも希美は、1人で歩いていって福谷を驚かせようと思い、必死で歩いていた。
公団の脇を通り抜けた先のコンビニに立ち寄って、サンドイッチなどを買い、ようやく福谷のマンションにたどり着くと、やはり25分ほどかかってしまっていた。
(はあ・・やっと着いたよ・・疲れたあ!)
エレベーターを降り、角を曲がるとそこが彼の部屋だ。
まだ合い鍵をもらっていない希美は、力強くインターフォンのボタンを押した。
が、しばらく待っても何の反応もない。
(あれえ、明さん・・まだ寝てるのぉ!?)
もう一度ボタンを押す希美。
しかし福谷は現れない。
(え・・うそぉ、どうしちゃったのぉ!?)
傘から垂れるしずくが希美の足下に広がっていった。
(どうしよう・・トイレかなあ・・?)
しばらく待って、またインターフォンを押す。
何度押しても反応がない。
(やだっ、いないのぉ!?)
希美に不安がよぎった。
(そうだ、電話だっ!)
バッグからケータイを取りだし、福谷のメモリ番号を押す。
しかし電話にも出ない福谷。
(うそぉ、どうしてよぉ!!)
希美の不安はますます募ってきた。
雨音の中に、聞き覚えのある着信音がかすかに聞こえたような気がした。
(!!?)
ドアに耳をくっつけて神経を集中すると、その音は部屋の中から聞こえているようである。
試しにケータイを切ってみると、その音も消えた。
(え・・ケータイ持たずにどこかへ出かけたの!?)
何がなんだかわからなくなっている希美は、ドアにもたれかかって途方に暮れた。
(どうしよう・・どこへ行っちゃったのよぉ!)
(コンビニかなあ・・?すぐ帰ってくるのかなあ・・?)
(早く帰ってきてよぉ!トイレ行きたいのにぃ!)
このとき希美は、先ほど立ち寄ったコンビニあたりから尿意を感じていた。
9時過ぎにホテルを出てから、一度もトイレに行っていない。
朝食のコーヒーやお別れ間際に入った喫茶店で飲んだミルクティーが、希美の膀胱に集まってきて、彼の部屋に入れない不安がその尿意を一気に高めてしまっていた。
(どうしよう・・トイレ・・)
時計を見ると11時を回っている。
雨のしぶきはソックスを濡らしていて冷えてくる。
(さっきの・・コンビニで借りようかなあ・・?)
(やだなあ・・なんか・・恥ずかしいなあ・・・)
しかし迷っていても尿意は解決しない。
希美はエレベーターへ向かった。
(明さん・・どこ行ったのよぉ!?)
なにげに駐車場の方を見ると、福谷の車がない。
(あれ・・車で出かけてるんだ!でも・・どこへ・・?)
不安をぬぐいきれない希美は、もう一度ケータイを取り出して福谷にかけてみた。
(だめだ・・やっぱり出ない・・・)
そうこうしているうちに、希美の尿意はますます高まってきた。
涙目になりながら雨の中を歩く希美の足取りは重い。
連絡が取れない福谷への不安と、強くなってきた尿意に対する不安で、希美は押しつぶされそうになっていた。
(明さぁん・・)
 大きな通りに出て、もう少し先のコンビニが目に入ったとき、希美のケータイが鳴った。
「!!」
大急ぎでバッグから取り出すと公衆電話からである。
「も・・もしもし!!」
うわずった声を出す希美。
「あ、のぞみちゃん、ごめん!今どこ!?」
元気のいい福谷の声が聞こえてきた。
「あ・・あの・・コンビニ・・」
「え、コンビニ!?あっ!」
福谷は希美のすぐ目の前にあるコンビニの表の公衆電話からかけていた。
「明さん!!」
希美も気がついて小走りに駆け寄る。
「ごめんごめん。駅まで迎えに出たんだけど、行き違いみたいだね。」
「そうなんだ!。でもケータイ・・」
「ああ、あわてて出たからさ、持っていくの忘れて・・」
「もうお、連絡とれなくて心配したんだからあ!!」
「悪い悪い、もう部屋まで行ったの?」
「うん、ずっと待っていたよぉ!」
「悪かった。駅では車から降りられなくてさ・・」
「んもぉ!」
「ごめん、埋め合わせはするよ、さ、乗って!」
福谷はそう言うと、助手席のドアを開けた。
乗り込んだ希美は深いシートに腰を下ろす。
「いや、ほんとにごめん。あれから二度寝しちゃって・・」
「え、私が電話した後?」
「うん、で、あわてて飛び起きて行ったんだよ。」
「そうなんだ。」
「ずいぶん待たせたなあ。駅に着いてから・・もう40分ぐらいになる?」
「うん・・」
福谷に会えたことでホッとした希美に、一瞬忘れていた尿意がよみがえり、知らず知らずのうちに膝頭をさすっていた。
徒歩なら小道を行けるが、車は大回りしないとマンションに入れない。
コンビニからは、歩くのも車で行くのも、ほとんど同じぐらいの時間がかかり、その間も希美の膀胱は膨らんでいった。
(早く着いて!、トイレ行きたいぃ!!)

ガレージに車を停め、相合い傘でマンションに向かうと、その玄関先で、
「福谷!」
と、希美の聞き慣れない声がかかった。
「おう、○X!」
福谷の大学時代の同級生が田舎から帰ってきて、そのおみやげを持ってきたと言うことである。
何度ケータイにかけても出ないので、ポストにでも入れておこうとやって来たという。
「悪かったな。あ、紹介するよ、オレの彼女!」
福谷はそう言って希美を紹介した。
由衣と同じで、希美も人見知りが激しい。
福谷の陰に入って、恥ずかしそうに自己紹介をする希美。
その動作は落ちつきなく、ソワソワとしていた。
(恥ずかしいよ、早く部屋に帰りたいよぉ!)
じっと立っていると、激しい尿意が襲ってきて落ち着かない希美であった。
「あがってコーヒーでも飲んでいけよ!」
福谷が友達に言う。
(ええ・・そんなぁ、おしっこ行きたいのにぃ!!)
希美から血の気が引いた。
(お願い、今はすぐに帰ってぇ!!)
その願いが通じたのか、友達は他にも行くところがあるからと断った。
(よかった・・)
希美は胸をなで下ろしたい気持ちであったが、それでもなにやら話が弾んで、友達はいっこうに帰る気配がない。
(どうしよう・・もう我慢できないのに・・)
初めて会う彼の友達の前で、あからさまに我慢している仕草を出すことは出来ない。
ましてその人の前で「トイレ行きたいから先に部屋に行く!」などと言えるものではない。
(早く、早くぅ!)
希美は福谷の陰で、太ももをつねったり腕に爪を立てたりして、なんとか我慢するしかなかった。
それでも波が押し寄せてくるたびに、小刻みな体の揺れは出てしまう。
相づちを打つのも上の空になり、呼吸までもが苦しくなってくる。
(ああ・・もう漏れちゃういそう!)
必死でとじ合わせている足の付け根あたりが熱くなってきたような気がする。
しかしそこはしびれたような感覚になっていて、それ以上の事はわからない。
(もうだめぇっ!ほんとにもう出ちゃう!)
とうとう希美の体は大きく揺れだした。
(たすけてよぉ、もう・・)
 希美は、同じような体格の由衣や真理と比べても、確かに水分の摂り方が多いようだ。
それだけトイレは近くなる。
おまけに普段はあまり我慢をしたことがなく、尿意を感じたらすぐにトイレに行っていたせいか、およそ30分ぐらいで限界がくる。
今日は尿意を感じてからすでに1時間を超えていた。
(もう出る!もう出ちゃう!!)
思いっきり唇をかみしめて耐える希美に、希望の光が差した。
友達が、約束の時間があるからと言って帰ろうとしている。
(よかった、トイレに行ける!!!)
辛い我慢から解放されるんだと思った希美は、努めて明るい声で、
「また来てくださいね。」
と、自分のうちでもないのに言ってしまった。
まるで女房気取りのその言葉に、福谷は苦笑いしながら友達を見送り、ホールに入ると、エレベーターは6階に止まっていた。
それを待つ間、福谷はずっと友達の事を話している。
しかし決壊寸前の膀胱を抱えた希美の耳には届いていない。
希美は泣きそうな顔をして、半開きの口から呼吸をし、前屈みになってしきりに体を左右に揺すりながら手をすりあわせていた。
「どうした?」
さすがに福谷もその仕草が気になった。
「あ・・あの・・トイレ行きたい!」
「あ、そうか、悪い悪い。かなり待たせたもんなあ!」
「うん・・ごめんね・・」
エレベーターに乗り込むと、かかるGに耐えられなくなりそうで、思わず福谷の腕にしがみついた。
「そんなに・・我慢してたの?」
「・・ん・・」
エレベーターのドアが開くと、部屋まで駆け出したい衝動に駆られ、思わず手で押さえてしまう希美。
「!!」
先ほど熱く感じていた女の子の部分に冷たいものを感じた。
(え、やだっまさかっ!漏らしてたっ!?)
一瞬おびえたような表情になった希美。
「待ちなよ、すぐ開けるから!」
ドアのカギを開けようとする福谷の目を盗んで、希美は思い切り前を押さえていた。
「さっ!」
大きく開いてくれたドアをくぐり抜け、締め切られてムッとする部屋に一歩足を踏み入れると、安堵感が湧いたのか最大級の波が希美を襲った。
「いっっ!」
片手で壁に寄りかかるようにして、もう片手できつく押さえたまま、希美はしばらく動けない。
「大丈夫か?」
後ろから心配そうに声を掛ける福谷が玄関のドアを閉めた。
希美は足首をすりあわせるようにして大急ぎでクツを脱ぎ、玄関横のユニットバスのドアノブをつかむと、
「ごめんね!」
背中の福谷に言って、その中に飛び込んだ。
しかし、ドアを閉めようとした瞬間が、希美の緊張を一気に解く瞬間でもあった。
 じゅわわ・・
冷たくなっていたその部分から、また熱いものが吹き出して来た。
「あっ!やあーっ!!」
あわてた希美はドアから手を離し、押さえている方の手に力を込め、洋式便器のふたを開けようとしたが、あふれてきたおしっこは希美の指の間から流れだし、太ももの内側を伝いだす。
「やーんっ!!」
どうすることも出来なくなってしまった希美は、ショックで体の力が抜けてしまい、洋式便器を抱くような格好でひざまずいた。
その途端、おしっこの流れは一気に強くなり、パンツを通り抜けて足首あたりにまっすぐに落ちてビチャビチャと音を立ててたたきつけ出した。
「あ・・あ・・」
精一杯こらえていた緊張が解けていく開放感と、背中に感じる寒気のような感覚と、またやってしまった罪悪感が押し寄せて、希美の頭の中は真っ白になってしまった。
十数秒で勢いは弱まり、また太ももを伝って流れは収まったが、
「・・・・」
放心状態の希美。
半開きのドアの外にいる福谷が、
「のぞみちゃん・・?」
おそるおそる声を掛けた。
「いやーっ、見ないでーっ、ごめんなさいっ」
希美は急に泣き叫んでしまった。
その姿を見た福谷は、
「ご・・我慢できなかったか・・わるかった。」
と、優しい声で言い、
「ついでだから・・そのままシャワー浴びちゃいなよ。」
と言って、換気扇を回してドアを閉めてくれた。
希美はしばらく泣きじゃくっていたが、少し時間が経つと気持ちが落ち着いてきて、しゃくり上げながらも立ち上がった。
濡れてしまったパンツとソックスを脱いで洗面台に入れ、トイレットペーパーでユニットバスの床を何度も拭き取った。
スカートはミニであったので濡れてはいない。
セーターとブラも脱いでラックに入れ、カーテンを引いてシャワーを浴びた。
涙があふれて止まらない。
(情けないなあ・・わたし・・・もう・・嫌われちゃったかなあ・・・)
(明さんの前で・・2回目だよ・・)
(恥ずかしいよ。情けないよ。もういやだよぉ!)
同じ事を何度も何度も繰り返し考えてしまい、あふれる涙は止まらない。
そんなとき、シャワーカーテンが開けられた。
「・・・あきらさん!?」
振り返ってみると、福谷が全裸になって狭いバスタブに入ってきた。
「え・・あ・・」
驚いて、なすすべがない希美のすぐ横に立つ福谷。
深い関係になったとは言っても、まだ裸を見られることに抵抗が残っている希美は、体を硬くしてしまった。
福谷の全裸を見るのも初めてである。
そんな希美を静かに抱き寄せる福谷。
その大きな胸元に顔を埋めるような感じで、希美はまたしゃくりあげた。
「なに泣いてるの?」
「・・だって・・だって・・恥ずかしいよ・・」
「おしっこのことか?」
「う・・ん・・もうやだよぉ・・」
「そうか・・ちょっと驚いたけどな・・」
「やっぱり・・もうキライになった・・?」
「はは・・そんなことでキライになんかならないよ!」
「・・・ほんと?」
「ああ、なんでそんなこと聞くんだ?」
「だって・・汚い子だって思ったんじゃない?」
「はは・・そんなこと思ってないよ。」
「だけど・・だけど・・恥ずかしいよ・・」
「うん・・確かにもう少し我慢できるようになるといいね!」
「・・うん・・」
シャワーを二人で浴びながら、希美はいつまでも福谷に抱かれていた。

*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*

「ふ〜ん、で、そのあとエッチしちゃったの?」
「しらないよー。そこでおしまい!!」
「あ、やぱりしちゃったんだ!」
「もう由衣ちゃんエッチーっ!」
にぎやかな店内で、由衣と希美は顔を近づけて話し込んでいた。
「でもさ・・」
希美はなおも続ける。
「ほんとに嫌われてないと思う、わたし・・?」
そう聞く顔は少し曇っていた。
由衣は少し考えてから、
「あのね、のの・・福谷さんはいい人だと思うよ。」
と切り出した。
ほんとにいやがる人は、もうその時点で終わっている。
少なくとも彼はそうではない。
かといって、わざと希美に我慢させるようなこともしていない。
トイレが近い事も含めて、希美のことを好きでいてくれる人だ。
由衣がそういう風に言うと希美はうなずきながらほほえんだ。
「ありがとう由衣ちゃん。」
「でもね、のの・・」
「ん?」
「もう少し・・なんていうのかな・・我慢する練習しようよ!」
「我慢する練習・・?」
「うん、大丈夫だから・・」
「由衣ちゃん・・我慢するの辛くないの?」
「辛い時もあるけどさ・・」
「え、辛くない時もあるのぉ!?」
「ん〜・・なんて言ったらいいのかなあ・・・」
由衣は言い出した手前、もう後には引けなくなっていた。
「ここじゃあ・・にぎやかすぎて話しづらいから・・場所変えようよ!」
由衣はそう言って席を立ち、
「ん〜・・私の部屋で話そうか!」
と希美を促し、近くのコンビニで食料などを調達して寮に向かった。
希美は少し不安げな表情をしながらも、由衣の腕にしがみつくような感じでついて行った。
 初めて訪れる由衣の寮。
伝言板らしきボードに「小原へ、10時に部屋に来い、山本」などと書かれている。
その光景を興味深げに見ながら、希美は由衣の部屋に入った。
小さなテーブルにお菓子などを並べていると、希美が早速トイレを使う。
由衣も3時すぎからトイレに行っていないので、かなり尿意を感じていたが、いまは我慢することにして、希美と向かい合って座り、まず自分自身の気持ちを整えてから、
「いい、のの!、今から私がいろいろ聞くけど、真剣に応えてよね!」
と言って希美を見つめた。
笑顔が消えた由衣の顔に少し驚いた希美だが、その真剣な表情を見て、
「うん!」
と、身を乗り出して答えた。


                     

つづく

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