それぞれの失敗2




 翌日4人は、まず香織が行きたいと言っていた初台の手塚治虫ワールドに出向き、かわいいアトムグッズなどを買った。
そのあと真理の希望で目黒寄生虫館に行って悲鳴を上げ、昼食にパスタを食べようと言う真理を軽蔑の目で見て、大騒ぎしながら六本木ヒルズへと足を向けた。
香織「東京はドンドン巨大になっていくなあ!」
真理「だよな。もう止められないよ、こりゃあ・・・」
由衣「あの窓がね、夜になると音楽と一緒に点滅してたんだよ。」
希美「あ、知ってる。グライコだって聞いてた。」
真理「グライコ?なんだよそれ?」
希美「えー・・わかんない・・」
香織「グラフィックイコライザーの事じゃないの?」
希美「うん、それっ!!」
真理「けっ!」
由衣「・・・」
11月になったとは思えないほどの暑い日であった。

夕食に、今度こそイタリア料理を食べ、パスタとタスパの違いに爆笑し、さらにショットバーでカクテルなどを飲んで、一日中歩き回って疲れた体でホテルに戻ってきた4人。
 この日の由衣は真理とペアであった。
シャワーを済ませ、くつろいでいると、
真理「ゆうべ、ののはおねしょしなかったか?」
由衣「あは・・まさかあ、そこまで言ったらかわいそうだよ。」
真理「まあな、けどほんとに近いやつだよな。」
由衣「だよね。今日も何回行ったかな?」
真理「2時間おきぐらいじゃなかったか?」
由衣「うん。こっちが疲れるよ、トイレ探しでさ!」
真理「はは・・デートとか大変だろな、あいつ・・」
由衣「でもさ・・彼に平気でトイレって言えるから・・まだいいよ!」
真理「ん?、由衣は言えないのか?」
由衣「ん〜・・今は言えるけど・・初めの頃はすっごく我慢してた。」
真理「デート中、ずっと我慢してたのか?」
由衣「うん。もう死にそうになったよ。」
真理「バッカじゃないか。」
由衣「だってさ、なんか言いにくいんだよね・・・恥ずかしくて・・・」
真理「おまえらしいなあ。」
由衣「最後の方はさ、もう早く帰りたくて泣きそうだったよ。」
真理「はは・・・まあ・・わかるけどな。」
由衣「・・うん、でもののたんはドライブとか出来ないよねぇ。」
真理「ああ・・ドライブなあ・・」
由衣「・・?」
真理「ドライブで渋滞ってか・・・」
由衣「?」
真理「まあ・・オイラも人のこと言えないかなぁ・・」
由衣「え・・真理っぺ・・ひょっとして?」
真理「ん・・まあオイラさ、一回だけ野ション経験あるし・・」
由衣「彼とのドライブで・・?」
真理「まあな・・」
由衣「へえ、真理っぺでもそんなことあるんだっ!?」

*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*

 甲府に帰って働きだした頃、真理は取引先の戸倉圭吾という男性と親しくなり、何度かデートを重ねていた。
 5月の連休、戸倉の会社が所有する軽井沢リゾートマンションにキャンセルが出たと言うことで、一緒に行かないかと誘われた真理。
親にはミニモニ仲間と東京で会うとウソまでついて、ウキウキしながら出かけたのであった。
 甲府南インターから中央道で須王インターまで行き、そこから国道141号線、18号線と通って軽井沢に着くと、昼過ぎに出たにもかかわらず、もう夕闇が迫ろうとしていた。
「ずいぶんかかったねえ。運転、疲れたでしょう?」
真理は彼の前ではけっこう女っぽい言葉遣いになっている。 
つきあいだして数ヶ月になるが、実のところ、外泊するのも彼とエッチするのもこの日が初めてであり、真理は緊張していた。
 翌日はマンションの所有するテニスコートで汗を流し、サイクリングで町中を散策したりと、リゾート気分を満喫し、にこやかに笑う彼の顔にまぶしさを感じながら、真理は幸せな2日目の夜を迎えていた。
 3日目、お昼過ぎに軽井沢を出た二人は、途中で清里に寄った。
おしゃれな店を見て回り、おしゃれなオープンカフェでお茶を楽しんだりし、午後3時前になって帰路についた。
 しかし須王インターに乗ってすぐに中央道は混みだした。
ノロノロ運転が続く。
しばらくすると動かなくなってしまった。
FMから、事故の情報が流れている。
このとき真理は尿意に悩まされていたのだ。
清里で飲んだコーヒーが効いていたこともあるが、夏日を思わせる穏やかな気候であったため、かなり薄着をしていた真理は、清里の風に吹かれで体が冷えていたのであった。
出発前にトイレに行こうと思っていたが、
「車を取ってくるからここで待っていなよ!」
と戸倉が一人で駐車場の方に走って行ってしまった為にチャンスを逃した。
戸倉にしてみれば、おみやげ袋を両手に持った真理を、駐車場まで歩かせるのはかわいそうと思ったのかも知れない。
しかし真理は、いつ戸倉の車が来るかわからない状態なので、トイレに行くことが出来なくなってしまったのであった。
(どこかドライブインかSAにでも寄ってもらおう!)
真理は軽く考えていた。
しかし走り出してすぐに「トイレ」というのは、さすがの真理でも気が引けて、しばらく我慢していたが、尿意は思ったよりも急激に膨らんできて、中央道に乗る頃には我慢がきつくなっていた。
そこへこの渋滞である。
キュロットのウエストが膀胱をきつく圧迫している。
ホックをはずしたいが、それも気が引ける真理。
戸倉と深い関係になったことで、真理は急速に女の子らしくなっていき、これまでなかった恥ずかしさを感じていた。
太ももから膝小僧あたりをしきりにさする真理を見て。
「真理ちゃん、トイレか?」
戸倉が聞いた。
「・・うん、ちょっとやばい感じなんだ・・・」
「そっかあ、困ったな・・」
「ん・・まだ大丈夫だけど・・・」
実際はとても大丈夫な状態ではなかったが、なぜかそう言ってしまった。
いや、そう自分に言い聞かせていたのでもある。
 しばらくすると、またノロノロと走り出す。
SAの標識を探しても、それらしきものは見えない。
見えるのは次の韮崎(にらさき)インターの表示だけであった。
いや、仮にSAがあっても、この速度で着くのはいつになるのか、それにもしトイレが混んでいたら!?
そう思うと真理は落ち着かない。
冷えた体に膨らむ尿意は、すでに限界点までさしかかろうとしていた。
「・・やっぱり・・だめかもしれないよ・・・」
力無く言う真理の声は少し震えていた。
「そっかあ・・じゃあ次で降りよう。降りてコンビニでも探そう!」
戸倉はそう言ってウインカーを出した。
「ごめんね・・・」
「いいさ、オレもトイレ行きたくなってきた。」
この日二人は軽井沢のマンションを出てからトイレに行っていない。
穏やかな陽気がそうさせていたのだ。
 さらに20分ほどが過ぎ、ようやく韮崎インターを降りることが出来たが、戸倉が20号線に出る道を間違えて、山の方に走ってしまった。
「まずい、逆だったみたいだ!!」
あわててUターンする戸倉。
真理はそのころ、額から脂汗をにじませていた。
車のちょっとした衝撃までもが膀胱に響き、精一杯に力を込めている女の子の部分は、先ほどからしびれたような感覚になっていて、もう次の衝撃に耐える余裕は残っていないようであった。
 あたりは道路を挟んで片一方が雑木林、もう片方は田んぼが広がる何もない所であった。
不安そうに外を眺めていた真理の表情は硬い。
「ねえ・・」
顔面蒼白になった真理が小さな声で言った。
「ねえ・・怒らない?」
「ん?」
「あの・・そこで・・」
「え?」
「そこの林で・・しても・・いいかなあ・・?」
「え・・あ・・!」
戸倉は少しあわてていた。
「だけど・・もし・・」
もし・・のあと、戸倉は何を言おうとしていたのか真理にはわからない。
「いいよね!?ねっ、もう我慢できないよ・・・」
「あ・・ああ・・」
「ごめん、止めてっ!!」
真理はそう叫ぶように言って車を止めさせた。
さいわい行き交う他の車の姿はない。
「ごめん・・ほんとにもう・・だめなんだ・・」
そう言った真理はガードレールにドアをぶつけないようにそっと開けると、体をかがめたままポケットティッシュを握りしめて、
「絶対に見ないでよ!」
と言いながら、ヨロヨロと反対車線の雑木林の方に足を向けた。
しかしそこにはけっこう幅のある側溝があり、飛び越えることが出来ない。
かといって助手席側は田んぼが広がっていて隠れる場所が何もない。
「どうしよぅ・・・」
両手で股間を押さえ、前屈みの真理は焦った。
「どうしよう・・」
真理は戸倉に助けを求めるようにもう一度つぶやいた。
「見ないから・・ドアの陰でやっちゃいな!」
戸倉が言う。
4ドアセダンであったので、前後のドアの隙間でしろというのである。
「え・・でも・・」
しかし真理には迷っている余裕がなかった。
ガードレールスレスレに止めたため、ドアは大きくは開けない。
しかし小柄な真理はうまくその隙間に入り込んで、車に背を向けた。
「ここで・・いいの!?」
今更のように戸倉に同意を求める真理。
「絶対見ないで!あっち行っててっ!見たら絶好だからねっ!」
そう頼んだ真理は、戸倉を車から降ろし、しゃがみ込んでからお尻を浮かせ、キュロットとパンツを同時に降ろした。
しかしすぐそばに戸倉が立っていると思うと緊張して、鈍く痛みを訴えている膀胱が反応してくれない。
(あ・あれ・・?)
額から汗がにじむほど我慢していたのに、いっこうに出てこようとしない。
早く終わらせないと、別の車が通りかかれば見られてしまう。
戸倉が振り返って見るかもしれない。
いや、もう見ているのでは!?
焦れば焦るほど、真理の緊張は高まっていくのであった。
「お・・お願い、もう少しあっちの方に行っててっ!」
真理は戸倉の方を見るでもなく叫んでいた。
「あ・・耳もふさいでてよー。音も聞いたら絶好だよー!」
そこまで言って自分で割り切ったのか、ほんの少し顔を出してきた真理のおしっこは、まるでシミ出すかのような感じでチョロチョロと流れだし、お尻に伝っていく。
「はあ・・もぉ・・」
収縮が始まった膀胱にチクチクと痛みが走る。
「はぁ!」
小さく叫んだ瞬間、それが一気に加速してシュー・・と飛び出してきた。
「く・・」
こらえていて、めいっぱいため込んでいたおしっこは、すぐに恐ろしいほどの勢いになり、ガードレールの支柱にまで飛んで跳ね返り、しゃがんでいる真理の足下に大きな水たまりを作りだし、ビチャビチャと音を出しながらスニーカーにまで流れてきた。
静かな夕暮れ時の山道に、真理から出続けるおしっこの音だけが響いていた。

 夜遅くになって自宅まで送ってもらった真理は、たまたま出先から帰ってきた父親と遭遇し、ウソがばれてしまい大目玉を食らうというオマケがついた。

*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*

由衣「わ〜、真理っぺすごい!!」
真理「はは・・まあな・・」
由衣「ね、ね、ほんとに彼は見てなかったの?」
真理「さあな、見てたんじゃないか、男だから・・」
由衣「お尻丸出しだもんね!」
真理「それよりもさ、音が恥ずかしかったよ。」
由衣「ああ・・消せないもんね。」
真理「ジョーバシャバシャ・・だもんな!」
二人は声を出して笑った。
由衣「けどさ、真理っぺもののたんと共犯だ!」
真理「ん、なんでオイラがののと?」
由衣「だってさ、ののたんも阿蘇山で野ションしたもん!」
真理「ああ・・そうだったな。あいつも雑木林でしてたなあ!」
由衣「後は・・かおりんだけかあ・・・」
真理「ん?、あとは・・って、由衣もやったのか!?」
つい口が滑ってしまった由衣は墓穴を掘ってしまった。 真理に問いつめられ、初夏の頃の敦史とのドライブで、夜景のきれいな山の中で野ションしたことを披露するハメになってしまった。
真理「なんだよ由衣。お前はすぐ横で見られてたのかよ?」
由衣「だって・・山の中で・・怖かったし・・我慢出来なかったし・・」
真理「やれやれ・・似たもの同士ってか・・」
吐き捨てるように言う真理であった。
由衣「かおりんも・・経験あるのかなあ?」
真理「お前、変なことに興味あるんだな?」
由衣「だ・・だってさ・・おもしろいじゃない!」
真理「失敗談で盛り上げろってか?」
由衣「うん、まあね・・」
真理「すました香織だけど・・・案外あいつもトイレ近い方だからな。」
由衣「うん、ののたんの次ぐらいだもんね!」
真理「よし、呼び出して聞き出しちゃえ!」
そう言って真理は隣の部屋に電話した。
香織は缶ビールを持ってすぐにやって来た。
由衣「あれ、ののたんは?」
香織「ああ、お子様はもうおネンネだよ。」
真理「けっ、ほんとにお子様だなあ!」
香織「で、何の話で盛り上がってるのさ?」
真理「ああ、あのな・・・」
いきさつを説明する真理。
しかし由衣は、昨日聞いた希美の失敗談は黙っていた。
香織「お前らなあ・・うら若き乙女がする話じゃないぞ!」
真理「だからおもしろいんじゃないか!」
由衣「ここだけでしか話せないもんね、こんなこと。」
香織「まったく・・」
真理「香織は経験ないのかよ?」
香織「んー・・野ションは・・子供の頃で卒業だな!」
真理「けっ!」
香織「ただ・・」
由衣「え、ただ!!?」
香織「ラブホのトイレで見られたことあるなあ!」
由衣「ああ、ガラス張りのトイレ!」
真理・香織「えっ、由衣も知ってるのか?」
由衣「あ・・えっとぉ・・そのぉ・・」
真理「こいつ、どこまでいってるのか・・」
由衣「私ももう大人って事だよ。」
真理「けっ、自分で言うな!」
香織「知らずに入って電気つけたらさ、もう丸見えなんだよね。」
真理「オイラは・・そういう所の経験ないなあ・・」
由衣「・・・・」
香織「しゃがんで、ふと前見たらさ、彼氏がしっかりこっち見てた!」
真理「出るモノも出なくなるな!」
香織「いや・・しっかりと出てる最中だった!」
真理「けっ、最悪だ!」
由衣「・・・・」
香織「それと・・」
真理「まだあるのかよ!?」
香織「男の子の部屋でおもらししたっ!」
由衣「え!!」
真理「ほお、それは興味あるなあ。聞かせろ!!」

*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*

 香織が高校2年の頃、クラブの先輩の佐々木裕二とつきあっていた。
彼の父は開業医で、住宅の一部が診療所になっていた。
彼の部屋は離れになっており、裏木戸から入って中庭を横切れば、誰にも見つからずに行くことが出来た。
そのスリルを楽しんでいた香織は、クラブ帰りによく彼の部屋に潜り込んで遊んでいた。
 彼の部屋は10畳ほどのフローリングで、隅に小さなキッチンと、カーテンだけで仕切られた洋式トイレがあった。
大型のテレビやAV機器もあり、香織はいつもそこでビデオを見ていた。
 診療所で使うベッドが置いてあり、何度かそこに押し倒された事があるが、彼も最後の一線を越える勇気がなかったのか、下着を脱がされることもなく、その隙間から指を入れる程度で終わっていた。
香織自信も(そのうちやっちゃうんだろうなあ)という、自覚のような気持ちも出来ていて、度胸のない彼にじれったさも感じていた。
 松本地方に秋が深まった10月のある日、中間試験が終わった昼過ぎから佐々木の部屋に来ていた香織は、彼が母屋から持ってきた缶ビールを飲みながら、映画「逃亡者」のビデオを見ていた。
試験が終わったことで気がゆるんでいた事もあって、飲み慣れていない缶ビールにスリルを感じ、あっという間に飲み干してしまった。
 やがて香織に尿意がやって来た。
素足にミニスカートの制服姿の香織は、暖房が入っていないその部屋に寒さを感じていたが、その上にビールまで飲んでいたので当然である。
部屋のトイレはカーテンだけの仕切である。
ここで用を足すと音も丸聞こえだし、第一、いつカーテンを開けられるかわからない。
家人にナイショで潜り込んでいるために、トイレを借りに母屋に行くことは出来ない。
そのことはわかっていたので、香織はいつもこの部屋に来るときはトイレに気をつけていて、尿意を感じたらすぐに帰っていた。
(ああもう、あと少しで終わるのに、おしっこしたいっ!)
佐々木のうちから香織の家までは、普通に歩いて10分弱である。
香織はそれを計算しながら、ルーズソックスを膝まで引き上げて、深い体育座りをし、両足を抱え込んでビデオを見終わるまでがんばろうと思っていた。
佐々木が時々香織の足の間に顔を埋めて下着を覗く。
それが気にならない香織も香織だが・・・。
 しかしビールの利尿作用を知らなかった香織の膀胱は、すぐに満タン状態になってしまった。
(ああ、おしっこしたいなあ・・ビールってすごいんだ!)
学校を出てからもう3時間近くになる。
普通でもそろそろ尿意を感じる時間である。
そこへ350ccのビールが入れば、体が冷えていることもあって、急激に膀胱に溜まっていく。
「おい裕二、いるのかっ!?」
中庭で佐々木の父親らしき男の声がした。
「やばい、おやじが来る!」
佐々木はあわてて香織のクツとカバンをベッドの下に隠し、香織にもそこへ隠れているように言った。
「え、でも・・」
香織は尿意に耐えられなくなり、帰ろうとしていた矢先だ。
「いいから、早く!」
佐々木は押し込むようにして香織をベッドの下に潜らせた。
診療所で使うベッドであることが幸いして、香織の体を楽々と隠してくれる。
佐々木がベッドカバーを垂らすと同時ぐらいに父親が入ってきた。
「何をしていた?」
「ん、ビデオ見てた。」
「お前・・ビール飲んだのか!?」
「あ・・ごめん・・試験が終わってホッとしたらさ・・」
「このぉ!、2本も飲みおって!・・まあほどほどにしておけよ。」
「うん、外では飲まないから。」
「当たり前だ。それよりな、大学の件でな、やはり東京の・・・」
父親は床に座り込んで話し出した。
ベッドの下の香織は気が気ではない。
見つかったら大変なことになる。
もし今見つかって説教でもされようものなら、絶対に漏らしてしまう。
そう思うと緊張し、せっぱ詰まってきた尿意がさらに拡大し、香織の体を震わせる。
(お願い、助けてっ!)
うつぶせで潜り込んでいるため、下腹部がフローリングの床に押さえられ、その冷たさも加わって、ますます強くなる尿意。
(やだっ、漏れそう!!)
香織は心臓が飛び出るぐらいドキドキと高鳴っていた。
うっすらとホコりが溜まっているベッドの下。
右手に数冊の本が当たる。
かすかに入る光で見ると、開かれたページに香織の目が釘付けになった。
(わっ、これってウラ本っ!!)
まさに男女の結合した写真が見開きで映っている。
佐々木がどこからか手に入れて隠し持っているのであろう。
(あいつ、こんなの見てるんだあ!!)
(こんなの見て・・ひとりでしてるんだ!!)
カーッと熱くなってくる香織だが、それに伴って尿意が爆発しそうになる。
(やっ・・もうダメだよっ・・)
香織はその本をギュッと握りしめていた。
そのとき父親が、「わかったな!」と言いながら部屋を出て行った。
ベッドカバーの隙間から閉まるドアが見える。
しばらくして佐々木が、
「もういいぞ、悪かったな。」
と言ってカバーを跳ね上げた。
四つんばいの格好で足から出ると、スカートがめくれてパンツが丸見えだと佐々木が喜ぶ。
香織の手にはしっかりと本が握られていた。
「あっその本・・」
喜んでいた佐々木がうろたえる。
香織はスカートを直して上体を起こし、制服に付いたホコリを払った。
しかしその後どうしていいかわからない。
とにかくトイレに行きたいが、ここではそれができない。
母屋に行くことも出来ないし、自分の家まで我慢できる自信もない。
かかとで女の子の部分を押さえて体を揺らしていた。
佐々木に母屋に行ってもらって、その間に・・とも思ったが、口実が見つからないし、ウラ本のこともあって、もしトイレを見られたら!?と思うと、とうてい言えることではなかった。
 佐々木がそっと本を取り上げて、
「いや・・オレも男だしさ、その・・まあいろいろ苦労してる訳で・・」
しきりに言い訳をしていた。
「わたし帰る!!」
香織はそう言うと、ベッドの下からクツとカバンを取り出し。立ち上がった。
どうしようもなくなった香織は、何とか家まで我慢しようと決心したのだ。
いや、それ以外に方法は何もない。
「あ、待てよ。悪かった。謝るから!」
佐々木はウラ本のことと勘違いしている。
床に腰を下ろし、10センチほど下がった土間でクツを履こうとしている香織を、佐々木が背中ごしに抱きしめてきた。
「いやぁ、ちょっとはなしてっ!」
「悪かった、もう怒るなよ。」
「ちがうのっもう離してぇっ!」
もがく香織と抱きしめる佐々木。
「なっ、お前のこと大事だからさ、その・・なんだ・・」
「帰るのっ!はなしてっ!」
「聞けよ。お前が大事だから・・・だから本だけで・・」
佐々木は必死で香織の機嫌を取ろうとしていた。
力を振り絞るように香織がもがくと、佐々木も力を込めて抱きすくめる。
そんなことを繰り返しているうちに、香織の尿道口に熱いものがあふれてきた。
(やっ出てきたぁっ!!)
あわてた香織が最後の力でもがく。
その勢いで体がずれ、浅く腰を下ろしていた香織のお尻が、ドスンッと土間にしりもちをつくように滑り落ち、反動で腰のあたりも強く打った。
「いっ・・!」
その衝撃が、これほどまでに溜めたことがないほど膨らんでしまった膀胱を一気に収縮させてしまった。
「あ、いやあっ!」
開いた両足の間から、チュリリ・・と音を立てておしっこが飛び出す。
初めスカートの下で見えなかったそれが、あっという間に強い勢いに変わり、まるでパンツを履いていないかのように、ドア近くまで飛んでしまい、ビチャビチャと音を立てて土間に跳ねて広がった。
「いやーんんん!!」
必死で止めようとする香織だが、お尻と腰の痛みもあって、どう力を入れても止めることが出来ず、途中であきらめてしまった。
力を抜くと、その勢いは更に強くなってしまった。
 およそ20秒ほど続いたであろうか、その勢いがなくなり、ポタポタと下着越しのしずくに変わった頃、
「香織・・小便したかったのか・・わるかった・・・」
背中で佐々木がうろたえたような声で言う。
放心状態の香織は、ショックで涙も出ない。
スカートが短かったこと、そのお尻部分を佐々木が踏みつけていたこと、
浅い体育座りの格好であった事などが幸いし、スカートに染みてしまうことは免れたが、パンツはびしょぬれになっていた。
両足の太ももにも伝い、ルーズソックスとクツも完全に濡れている。
おいてあった佐々木のクツとスリッパもしぶきで濡れていた。
「な、悪かった。誰にも言わないから・・・」
佐々木はしきりに謝っている。
独特のにおいが立ちこめてきた。
それに気づいて香織は我に返り、恥ずかしさと腹立たしさがわき上がってきて、
「帰る!」
と、勢いよく立ち上がった。
パンツに残っていたおしっこが、ツーッと足を伝って流れ落ちる。
冷たくなった下着は気持ち悪く、脱いでしまいたい衝動を抑え、
「帰る!」
もう一度言うと、香織は勢いよくドアを開けた。
中庭に人影はない。
ドアを閉める間際、顔だけのぞき込んで、
  「・・汚しちゃってごめんね!」
ニコッと笑って言った。
「あ・・いや・・」
うろたえる佐々木はしどろもどろであった。
 信州の秋が深まり、風が冷たくなっている夕刻の細い道を、香織は涙も出さずに家路に急いだ。 

*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*・*※*

由衣「ひゃ〜、かおりんったらすご〜い!!」
真理「こりゃ大賞ものだぞ!」
由衣「恥ずかしくなかったの〜!?」
香織「そりゃあ恥ずかしかったよ。」
真理「それにしては開き直りがすごかったんだな!」
香織「って言うかさ、早く逃げ出したかったんだよ。」
真理「なるほどな!」
香織「きっとその晩・・おかずにされたよなあ・・」
真理「ああ、絶対してるよ!」
由衣「・・おかず?」
香織「由衣は知らなくていいよ!」
由衣「オ○ニーの材料のことでしょ?」
香織「そう言うことははっきり言わなくていいの!」
由衣「・・・(*^_^*)」
真理「で、そいつとどうなったんだ?」
香織「ん・・それから何となく会いづらくってさ、別れた。」
由衣「言いふらされなかった?」
真理「それはないな!」
由衣「どうして?」
真理「もし言いふらしたら、ウラ本のことバラされるもんな!」
由衣「ああ・・!」
香織「ビール飲んだ私もあさはかだったよ。」
真理「まあな、冷えた体には一発だよ。」
香織「家に着いたらまたトイレしたくなってた!」
真理「全部出てなかったんだよ、きっと!」
香織「だろうね。でもあのときはいっぱい出たと思ってけど・・。」
真理「全部で1リットルぐらいあったんじゃないか?」
香織「まさかっ!」
3人は一緒になって笑っていた。

真理も希美も香織も、決しておしがま仲間ではないけれど、みんなけっこうおしがまを経験しているんだ、聞けばもっとあるのかも知れない!
そう思って、由衣は安心して眠るのであった。

翌朝、香織は遠恋の彼と会うと言い、真理も午後に甲府で用事があるというので、チェックアウトを済ませた4人は、小雨の降る新宿駅で解散した。
香織は京王線。
真理は中央線特急。
希美は福谷のいる赤羽に向かう埼京線。
由衣は中央線快速と、それぞれがそれぞれの方向に別れていった。
(次に会えるのはいつだろう。誰かの結婚式だったりして!?)


つづく

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