由衣の独り言 44(遠い記憶)




 週末、優里亜がお茶しようってメールしてきたので、私は論文のことなんかで頭がパンクしそうになっていたからちょうどいい気分転換になるし、ついでだから軽く飲んで女子会しようよと、旦那と彼氏の了解を取って出かけたのね。
 優里亜も結婚に向けて進展があったみたいで、お酒を飲みながらうれしそうにその事を話してくれたりして、女子会と言うよりも結婚相談会みたいになっていたけど、酔いが回ってくるにつれて話の内容がだんだん下の方に降りてきて(笑)、やっぱりおしがま談義になってしまった……。
 優里亜とはこれまでからかなり掘り下げたお話をしているので、ちょっと人に聞かれたら恥ずかしいようなエッチな事も平気で話していたんだけど、話の流れの中で、私はふと、むか〜しむかしの遠い記憶をよみがえらせていたのね。
 それは純粋(?)な私が、おしがまエッチに目覚めるきっかけになったひとつの衝撃的な出来事で、今から20年ほど前の小学校5〜6年生の時のこと。
忘れていた訳ではないけれど、まだ子どもだった私は、なにかいけない事に手を触れてしまったような罪悪感みたいなのを感じて、自分で封印してしまっていた、そんな事があったのよさ。

 その夏、法事かなにかで私は父の実家である富山の滑川に行っていた。
(小説 [帰省] 参照)
私はたぶん夏風邪をひいていたんだろう、みなが出かけている間おとなしく寝ていなさいと言われて、おばあちゃんと二人で留守番をさせられていたんだと思う。
 初めのうちはおばあちゃんとプリンを食べたりしながらおとなしくしていたけれど、すぐに退屈になってテレビとか見ても、大人向けの番組ばかりでつまらなくて、少しご機嫌斜めになっていた。
 おばあちゃんは、お隣かどこかに用事があってちょっと出かけるけれど、30分ほどで帰ってくるから、退屈なら雅人か奈津美(いとこ)の部屋に漫画の本でもあるだろうから、それでも見ていなさいと言って出かけていった。
 雅人さんは7歳上の高校生で奈津美さんは3歳上の中学生。(当時)
初め奈津美さんの部屋に入ったけど、彼女は漫画を読まないのかそれらしい本が全くなくて、勉強の本ばっかり。
なんか頭のいい実姉の部屋にいるようなそんな窮屈感があって、私はすぐに雅人さんの部屋に移動した。
こちらは男の子の部屋らしく雑然としていて、あちらこちらにいろんな雑誌が散らばっていた。
その中の少年なんとかという週刊誌をペラペラめくっていったけれど、どれも初めて目にする内容ばかりなのでおもしろくない。
 なにかほかに見る物はないかなと、本棚に並んでいる物をあさっていると、誰だか忘れたけれど、当時のアイドルだった女の人の写真集みたいなのが目に入って、私はそれを取り出して立ち見していた。
 ページをめくっていると、その中にはさんであった1枚の生写真(ブロマイド?)がヒラリと落ちて、ベッドの下あたりに入り込んで、私はキチンと戻しておかないと怒られると思ってそれを拾い上げようとしてかがみ込んだ。
 掃除されていないベッドの下はホコリだらけで、なにやら紙箱とか雑誌がいっぱい並べられていて、落ちた写真はその奥に少しチラッと見えている。私は手を伸ばして取ろうとしたけれど、手前の紙箱が邪魔になって届かないので、その箱を引っ張り出して、ベッドに潜り込むような感じで写真を撮りだした。
 そのまま紙箱を元に戻せばいいんだけれど、何となく好奇心がわいてしまった私は、こわごわその箱のふたを開けてしまったのだ。
中には想像していたとおりエッチな雑誌が何冊か入っていた。
 その頃の私は、まだ学校で生理のことなんかを学習する前ではあったけれど、何となく漠然と…、大人になったら男の人とエッチな事をするんだと言うことを知っていて、どんなことをするのか少し興味があった……んだと思う。
 週刊なんとかという薄汚れた大人雑誌が何冊かあって、女の人がポーズをとっている裸の写真が何ページか載っていて、あとは読みにくい文章のページがたくさんあった。
(女の人がパンツを穿いていたかどうかは……覚えていない。)
 どうして男の人は女の子の裸が見たいのか、まだよく分からない当時の私だったけれど、そういう写真を見ている雅人さんのことを不潔だと思ったりいやらしい人と思ったりは不思議としなかった。

 その雑誌の下に、コミックサイズぐらいの小さな薄い本があった。
忘れてしまったけれどひらかなのタイトル名のその本は、表紙の女の子の顔が写真ではなくて絵だった。
かわいらしい顔の女の子が描かれていて、なんとなくその本は雅人さんあたりの若い男の人が読む本だと思ったりした。
 初めの写真も、高校生の制服を着た女の子がいっぱい載っていて、パンチラだったり下着姿だったり……。
そのあとはまた読み物がいっぱいあって、意味なくペラペラとページをめくっていた私。
 どうやらその雑誌は女子高生あたりのエッチ体験告白集みたいな内容の本だった。
そしてその中に、私はページをめくるのを止めてしまったタイトルを見つけた。
うろ覚えだけど「オシッコをがまんする少女」というのがそれだった。
 当時私はまだまだ幼くて、男の子たちとよく河川敷なんかで遊び回っていて、何度か草むらで野ションしていたことがあった。
特に覗かれたり、そのことで冷やかされたりしていなかったので、特に何とも思っていなかったけれど、あるとき姉に、男の子におしりとか見られたら恥ずかしいでしょ!!とたしなめられたりして、それ以来、男の子がいるときはおしっこをしないように我慢するようになっていて、おしがまが気持ちいい事を何となく感じかけていた……そんな時期だった。
 それだけにそのタイトルに惹かれてしまって、告白している女の子が、どういう理由でおしっこを我慢するのか興味がわいてしまったようだ。

 その告白の内容は、ある高校生の女の子が、つきあいだした彼と12月にデートしていて、外では寒いからと彼の部屋に……。
その時女の子はおしっこがしたくなっていたんだけれど、初めての彼の部屋なのでトイレに行きにくくて、入れてくれたコーヒーを飲み終わったら行こうとしていたのに、いきなりベッドに押し倒されてしまった……。
 彼のことが好きなのでそうなることは期待していたんだけど、いきなりだったことと、おしっこがしたくてたまらなかったことでパニックになって、でも息を荒げている彼におしっこがしたいことを告げられないまま…彼がスッポリと女の子の中に収まって、意識がもうろうとしかかったときに、その子の尿道口が開いてしまって、初めてのエッチでおしっこまみれになってしまった……。
 その彼とはその後別れてしまって別の彼が出来るんだけど、あのおしっこを我慢している時のジンジンした感触が忘れられなくて、エッチをする日は朝からトイレを我慢して膀胱をパンパンにして彼に会う……というような内容だった。

 私にはすごく衝撃的な内容だった。
たった2〜3ページほどの短い文章だったけれど、私は何度もそれを読み返していた。
この女の子はおしっこを漏らしてしまって恥ずかしかったはずなのに、なぜそのあともおしっこを我慢したままエッチしようとするのだろうと、理解できるような出来ないような複雑な気持ちになっていたのと、おしっこを我慢している時の気持ちよさって、大きくなったらもっともっと感じるんだろうかと、私の頭の中はそんなことがグルグルと飛び回っていた。
 そして…、まだひとりエッチの経験なんかまったくなかった私だけど、おまたのあたりが何となくムズムズしていたのを覚えている。
あれが雅人さんの部屋じゃなかったら、私はひとりエッチにも目覚めていたのかもしれない。

 おばあちゃんが帰ってきた気配を感じ、私はそれらを出来るだけ元にあったようにしまい込んで雅人さんの部屋を出た。
 夕方になって親戚中が帰ってきても、私は雅人さんと目を合わせることが出来なかった。
軽蔑しているとかではなくてその逆で、私があの本を見てしまったことがバレないように、そしてそれを見て衝撃を受けたことを知られれないようにと、そういう気持ちでいっぱいだったことを覚えている。
 そして、あんなことはもっと大きくなってからの事なんだと自分に言い聞かせ、私はその夜からこの思い出を封印してしまった。
 実際にはいろんな場面でそのことを思い出したりしていたが、時が経っていろんな現実と向き合う事が多くなって、いつの間にかあのことは記憶の片隅に眠ってしまっていた。
でも、今の私はきっと、あのとき読んだあの(たぶん作り話)告白文が元になっているんだろうと思われる。
 実際にあ〜ちゃんとの初めてのおしがまエッチの時も、私はなにげにあのことを思い出していて、今から私はあの女の子と同じような体験をするのだと、うれしいような恥ずかしいような、そして怖いような思いをしていて、そしてあの子と同じようにおしがまエッチのすばらしさを人一倍感じ取る女の子になってしまっている。

 優里亜にそんな話をしている私は、さっきからずっとおしがましている。
この店に入ってかなりお酒とか飲んでいるのに、まだ一度もトイレに行っていなくて、それは優里亜も同じだった。
前の「おしがま優里亜」で彼女がバラしたとおり、私たちはふたりでいるとき、ついついおしがま競争してしまう。
そういうこともあって、お開きになってもトイレに行かずに店を出ていた。
 電車で帰る私とタクシーに乗る優里亜と、所要時間はほぼ同じぐらいだろうか?
彼女は玄関までタクシーを横付け出来るけど、私は電車を降りてから数分歩かなければならない。
さっきあんなお話をした後だけに、心の中では帰ってすぐにおしがまエッチになればいいなぁ……なんて思ったりもしてみたけれど、膀胱の張り具合からして、どうやらそれは望めない状態にまで追い込まれていた私だった。
 寒くなって、また少し足に痛みを感じてきたので、駅の和式トイレは使いたくないので、とにかく家に着くまでは必死で我慢していたけれど、やっぱりとてもエッチに至る状況ではなくて、入るやいなやトイレに飛び込んでいた私だった。
 優里亜もどうやら必死で我慢したまま家に着き、フライングせずに間に合ったと報告してきた。
実際を確認している訳ではない自己申告なので、まぁそういうことにしておこう。

 お風呂を済ませた後、あ〜ちゃんとまた軽くビールを飲みながらいろんなお話をしていたけれど、やっぱり私は疲れていたのかエッチをせがむこともなくそのまま眠ってしまって、真夜中、飲んだビールのせいで膀胱がパンパンになって目が覚めて、でも、そのままトイレに行くのがもったいないような、そんな変な気持ちが沸いてきて、優里亜に話した内容なんかを思い出しながらモゾモゾとやってしまい、その動きであ〜ちゃんが目を覚ましてしまったけれど、何をしていたかは絶対に言わずにそっとトイレに行った私だった。
やっぱり相当ヌルヌルになっていた私……、旦那さんが寝ている横で何をやってんだか……、はぁあ、相当エッチになったなぁ……。



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