*この作品は、さちさんの実体験をもとに、チョビさんが小説化してくれたものです*
久しぶりに実家に帰った小原由衣は、柏駅のコンコースで高校の同級生、杉本沙織に出会った。
沙織は我孫子に帰るところであったが、せっかく出会ったんだからと、ステーションモールの喫茶店に入り、近況報告などしながら、話に花を咲かせていた。
「ああ・・そういえばここだったなあ・・・」
沙織がふと懐かしむように周りを見渡した。
「え、なにが?」
由衣が聞くと、
「うん、中学生の頃にね、ここでさあ・・・」
沙織は思い出をたどるように話し出した。
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中学2年の沙織は、同じクラスの松岡宏に好意を寄せていた。
席が隣同士になったことから親しくなり、いつも楽しく話していたが、陸上部で活躍している彼の姿にまぶしさも感じていた。
沙織の友達、坂口理恵も陸上部に入っていた。
その理恵もまた、同じ陸上部の竹内浩二の事が好きであり、松岡と竹内が友達であることから、この3人はいつも仲良く下校したりしており、沙織はうらやましく思っていた。
1月の終わり、理恵がやって来て、
「沙織、今度の日曜日、ヒマ?」
と聞いてきた。
柏に映画を見に行く話が持ち上がり、3人だと半端だから沙織も一緒に行こうと言うのである。
沙織が松岡に好意を持っていることは理恵も知っている。
おそらく誘ってくれたのは理恵の計らいであろう。
沙織はうれしくて即答していた。
「でさ、我孫子駅に何時?」
沙織が聞くと理恵は、
「あ、んとねえ、自転車で行こうかって話なの。だめ?」
と言った。
「え、自転車あっ!?」
「うん、沙織にはちょっときついかなあ?」
「そ、そんなことないよ。大丈夫だよ!」
「そうお?、じゃあいいよね!!」
てっきり電車で行くと思っていた沙織は、
(さすが陸上部だっ!)
と、3人の発想に感心していた。
日曜日、沙織はかわいく見られるには何を着ていこうかと、あれこれ迷って店開きをしていたが、結局白いハイネックセーターにジーンズという平凡な格好にして理恵が迎えに来るのを待っていた。
よく晴れた日であったが、カラッ風がきつい日でもあった。
やがて現れた理恵の顔を見るなり、
「どうしよう、すごくドキドキしてるよ〜!」
沙織は叫んでいた。
理恵もジーンズ姿であったので、沙織はホッとしていた。
待ち合わせの我孫子市役所前に着くまでの間、沙織はずっと、
「緊張するよ〜!」
と繰り返していた。
学校の外で松岡と会うの初めてである。
自転車をこぐ足が緊張でふるえていた。
松岡と竹内は先に着いていたようで、広場をぐるぐる回っていた。
松岡は紺色のコートを着て、モトクロス用の自転車にまたがっていた。
(わ〜っ、カッコイイ!。足なが〜い!!)
沙織は松岡がまぶしくて、目を合わせることが出来なかった。
それでも話しかけられて、顔を赤めながらうつむいて答えていた。
(か〜〜〜、どうしよう!!!)
関東平野のカラッ風が吹き付ける中を、4人の自転車は走り出した。
ややもすると遅れ気味になる沙織を、松岡は優しくフォローしてくれて横に並んでくれる。
しかし緊張している沙織は、何を話していいかわからず、ひたすらペダルに力を入れていた。
手賀大橋を渡るとき、風にあおられた沙織はハンドルを取られ欄干にぶつかりそうになった。
「キャッ!」
かろうじて転倒は避けられたが、
「大丈夫かっ!?」
やや前を走っていた松岡が気づいて止まってくれた事が恥ずかしく、
「あ、うん平気。」
と、強がって見せた。
「急がなくていいからな!」
「うん、ありがとう。」
優しく声を掛けてくれる松岡の顔が見れない。
沙織の手袋の中は汗ばんでいた。
目的の映画はやっていなかった。
「あれえ、おとといまでだったんだぁ!」
「わっ、やべぇどうする?」
「ショック〜、どうしよう・・・」
沙織は松岡といることだけで満足していたので、映画はどうでも良かったが、みなが落胆しているので何も言えなかった。
「あ〜あ、なんか飲んで考えるかぁ・・・」
松岡は自販機の前に移動して、ジーンズのポケットから小銭入れを取り出した。
「杉本、おごるよ。何飲む?」
松岡に言われて沙織はとまどった。
「え、えっとぉ・・・」
(わ〜、松岡君におごってもらえる〜!)
(わ〜い、なに飲もうかなあ・・・)
(かわいく思われるのがいいなあ・・・)
(ジュースだとちょっと寒いし・・・)
(コーヒーはちょっと生意気みたいだし・・・)
(お茶だとおばさんくさいかなあ・・・?
(あ〜ん・・・)
「ミルクティー!!」
迷った末にそう言うと、
「さすが、わかってるねえ!」
と松岡に言われた。
「え・・?」
「俺もミルクティーさ。コレが一番好き、一番甘いし!」
白い歯を見せながら松岡が暖かいミルクティーの缶を手渡してくれた。
「あ、ありがとう・・・」
(やった、松岡君といっしょだぁ!)
(えへ、けっこうかわいく決まったぁ!!)
うきうきしながら自転車を降り、松岡と並んでベンチに座った沙織。
理恵も竹内と向かい側のベンチに腰を下ろしていた。
わずか数センチ横に松岡の顔がある。
(わ〜、こんなに近いと恥ずかしいよぉ。)
(でもやっぱカッコイイなあ!!)
なにもかもがバラ色に見える瞬間であったが、それを打ち消すかのような不安なことを沙織は思い出した。
いつだったか友達と出かけたとき、今と同じようにミルクティーを飲んだ沙織は、そのあと何度もトイレに行くことになってしまい、友達に、
「また行くのぉ!?」と言われたことがあった。
女友達ではあったが、恥ずかしい思いをしたのだ。
(そうだった、ミルクティーっておしっこ近くなるんだった!!)
(やばいなあ、どうしよう・・・)
(けど今さら飲むのやめられないよぉ・・・)
(うぇ〜ん・・・)
(ううん、今日はけっこう着込んでいるから大丈夫だよ!!)
沙織は自問自答しながら会話の中に入っていた。
「もう一軒の映画館に行ってみようか?」
「そうだな、あっちならまだやってるかもな!」
「うん、そうしてみよっか!」
3人に促されるままに沙織は自転車をこぎ出した。
しかしその映画館も目的の映画はやっておらず、
「あ〜あ、完全にアウトだよ!」
「まいったなあ・・・」
「どうする?」
「東京ならやってるだろうけど・・・」
「え〜、東京まで出るのもなぁ・・・」
「だいいちどこでやってるか知らないもんな。」
「ああ・・・」
「あきらめる?」
「そうだな・・・」
3人は口々に話していた。
しかしせっかくここまで来たのだからと、柏の駅ビルに行ってみようと言うことになり、再び自転車をこぎ出した頃、その振動が沙織の膀胱を刺激しだした。
(やん、はじまったあ!)
沙織はあまりトイレをガマンしたことがない。
我慢していても『まだ大丈夫!』という状態から『もうダメッ』となる時間が早かった。
自転車をこいでいるうちに、尿意はみるみる大きくなっていった。
不安が募ってきた沙織。
(どうしよう・・)
(あっこのコンビニで今のうちにトイレ借りようかなあ・・・)
(黙って行ったら悪いよなあ・・・)
(でも言うの恥ずかしいし・・・)
(まだ大丈夫だし、駅に着いたらすぐ行こう!)
混んでいる駅の駐輪場に自転車を止め、ステーションモールへと歩き出した4人。
(でもトイレ行きたいって言うのやだなあ・・・)
(誰か言ってくれないかなあ・・・)
(理恵は行きたくないのかなあ・・?)
(理恵に言って一緒に行こうかなあ・・・)
(あ、理恵ったら竹内君と仲良くしゃべってる!)
(これじゃあ言えないよぉ!)
入り口の自動ドアの所まで来ると、男の子二人はドアの両サイドに立って、沙織と理恵が入るのを待ってくれた。
「紳士気取りじゃない!」
理恵が冗談っぽく言った。
沙織もそのエスコートがうれしかったが、おかげでますますトイレに行きたいことを言えなくなってしまった。
広いモールの中を、沙織と松岡、理恵と竹内というカップルになって歩いていた。
前を行く理恵は楽しそうに竹内とじゃれ合っている。
沙織は恥ずかしさが先行してしまって、いまひとつ松岡とうち解けられず、理恵たちをうらやましく思ったが、それでもこうして松岡とふたりで歩けることの満足感は大きかった。
ただ、急速に膨らんでしまった尿意が、その初々しい満足感を邪魔していた。
(いつトイレに行けるのかなあ・・・?)
(誰も行かないのぉ!?)
(あぁ・・ちょっとお腹いたいような気がするよぉ・・・)
(私って・・・どれだけガマンできるんだろう・・・?)
(あ、やっぱりお腹いたい・・・)
(でもぉ・・・言えないよぉ・・・)
恥ずかしさと気後れから、沙織はトイレに行くチャンスを作ることが出来ず、ついて歩くだけであった。
ブックセンターに入り、初めは一緒に本を探していた4人だが、男の子2人はゲーム雑誌のコーナーに移動し、沙織と理恵はファッション誌のコーナーに来ていた。
理恵は真剣な顔でなにやらしきりに本を探していて、ソワソワしている沙織のことが目に入らない様子である。
足をクロスさせ、沙織はキョロキョロとあたりを見渡した。
視界にはトイレが見あたらない。
日曜日の午後だけあって、店内はかなり混んでいる。
松岡たちの姿も人混みに紛れて見えなくなり、沙織はそっとコートの上からお腹をさすってみた。
パンパンに膨らんだ水風船がそこにあった。
おそるおそるお腹を押さえる沙織。
(つっ、もれちゃいそう!)
(どうしよう、理恵に言いにくいなあ・・・)
(あ、でももうダメかも知れない・・・)
(いいや、行っちゃおう、すぐに帰ってきたらいいもん!)
(理恵、そこで待っていてね!)
沙織は意を決してその場をそっと離れた。
階段の横あたりりにトイレがあると思い、やや早足で行くと、
(え、ここじゃなかったっけ!)
従業員用の出入り口があるだけで、そこにトイレはなかった。
(どうしよう、反対側かなあ?)
そうは思ったが、ウロウロして松岡たちと顔を合わせてしまうと恥ずかしいので、沙織はそのまま階段を下りていった。
下の階なら、すぐにトイレがあると思ったのである。
しかしそこでもトイレ見つからず、焦りが出てきた沙織は、落ち着きをなくしていた。
(やだ、トイレどこっ!?)
(早くしないと・・・早く・・・)
壁づたいに歩いてみたものの、目指すトイレは目に入らない。
店内表示を探すが、人に埋もれてそれさえも見つからない。
天井からつるされた案内板にも、トイレの表示は見えなかった。
(うそっ、どうしたらいいの!?)
(あ・・おなかいたいよっ!)
(おしっこしたいよっ!)
額に汗を浮かべた沙織は、ただ焦るだけであった。
人混みの中をさまよう理恵。
(どうしよう、早く戻らないと理恵が心配する!)
(松岡君に気づかれちゃう!)
(あれ、降りてきた階段ってどこだっけ?)
不安がつのる。
その不安が、膨らみきった膀胱にさらなる緊張を与える。
じっとすることも出来ず、ただただ歩き回る沙織であった。
更に階段を下りた沙織。
もう自分が何階のどこにいるのかさえわからなくなっていた。
(トイレトイレ、トイレどこっ!?)
人混みの中をぐるぐると歩き回り、行き交う人にぶつかり、その衝撃で漏れそうになるの必死でこらえ、コートのポケットに入れた手で押さえながらさまよっていた。
知らないうちに涙があふれてきた。
(ああ・・漏れちゃうよぉ!)
(だれか助けてよぉ!!)
やがて歩くことさえ辛くなってきた沙織はどうしようもなくなり、そばの階段の手すりにしがみつくような格好で固まってしまった。
(あ・・もうだめーーーっ)
(あ・・あ、もれちゃうよーーーー!!)
そこへ通りかかった初老の男性店員に、
「あ・・すみません・・ト、トイレあります・・かっ!?」
と、震える声で聞いた。
「あ、ああ、ここを使ったらいいよ。」
男性店員は一瞬ためらった様子であったが、すぐに階段横の扉を指さした。
案内されたのは従業員出入り口。
そこのドアを開けると、廊下の左手にトイレがあった。
「す、すみませんっ」
恥ずかしさも忘れ、沙織は駆け込むように中に入った。
と、そのとき、
「あんた、お客さんに使わせたらダメじゃない!」
きつい口調の女性店員の声と、それに続いて、
「あ、いや、あの子ガマンできそうにない様子だったからねぇ。」
と、男性店員の声が廊下で聞こえた。
(え、ガマンできそうにない→私!?)
(恥ずかしい!)
(ちがうよぉ、おじさん、まだガマンできたのにぃ!!)
沙織は思わず立ち止まって耳を傾けていたが、ふと目をやった鏡には、いかにも我慢してますといわんばかりの、前かがみで泣きそうな自分の姿が映っていた。
その姿を見た途端、思わず我慢がゆるみそうになり、大急ぎで個室のドアを開けた。
鍵を掛ける余裕もなく、両手でダッフルコートを持ち上げ便器をまたいだ。
その格好になると気持ちがゆるみ、熱いモノがあふれ出そうになる。
「いや〜ん!」
と小さな声を発して足を激しくすりあわせた。
そのままジーンズのホックをはずそうとするが、膨らんだお腹を引っ込めないとはずせない。
左手で股間を押さえ、前屈みになってそっとお腹を引っ込めると、これ以上ないほどの排尿感に襲われる。
「いやっ!」
また小さく叫んでしまった。
ふるえる右手でやっとホックをはずし、叫びたくなる気持ちを抑えながらファスナーを開きジーンズを下げようとしたが、
(あっやばいっ!)
寒くないようにとストッキングまで履いていた事を思い出した。
(もういや〜っ!!)
左手はおさえたままでジーンズを膝上まで引き下ろし、今度はストッキングに手をやろうとした。
持ち上げていた重いダッフルコートがずり落ちている。
(あぁあ、もおぉぉおっ!!)
わずか数秒のこの動作が、とてつもなく長い時間に感じられ、これ以上ないイジメに遭っているようにも思えた。
右手だけでストッキングとパンツを一緒に引き下げ、左手を話して更に引き下げ腰を下ろしかけると、せき止められていたおしっこが一気にあふれ出して、勢いよく便器に落ち、しゃがんだことで前の水たまりに跳ね出した。
間一髪の出来事であった。
(はぅぅ・・あぶなかったあぁ・・・!!!)
(はあ・・まにあったよぉ・・・)
(ああ・・・死ぬかとおもったぁ・・・)
コートを抱き込んでいるので下が見えず、自分のおしっこがまっすぐに出ているかどうかの確認は音だけが頼りであった。
ゾクッと背中に寒気が走る。
(はうぅ・・・・・)
音消しする余裕もなかった沙織は、長く長く出続けるおしっこの感触に浸っていた。
すべてが終わった沙織はふと我に返った。
(やだっ、水流すの忘れていたっ!)
(あのおじさん、表にいないよね!?)
(音、聞かれていたかなあ・・・?)
(やん、恥ずかしいよぉ・・・)
急いで後始末を終え服を直し。手を洗う出すと廊下に足音が聞こえた。
(やん、誰か来る!?)
(どうしよう、怒られる!???)
従業員用のトイレを使っていることへの、恐怖に似た感情が沙織を包んだ。
しかし足音はそのまま遠くに消えていった。
(良かった、誰も来ない!)
今のうちに出てしまおうと、沙織は急いでトイレのドアを開けた。
幸い廊下に人影は見えない。
小走りで店につながるドアを開けると、先ほど沙織を助けてくれた男性店員の姿がそこにあった。
しかし沙織は恥ずかしさのあまり、その店員の顔を見ることが出来ず、うつむいたままお礼を言うと、そそくさと階段を上っていった。
二つ上の階まで戻ると、そこはブックセンターで、初め降りた階段のちょうど反対側であった。
目の前に松岡の姿が見える。
目があったその瞬間、
「どこに行っていたの?」
と聞く松岡に、
沙織は我慢から開放されたさわやかさで、
「トイレ行ってた。」
と、思わず答えてしまった。
「そう・・」
松岡が恥ずかしそうに目線をそらせた。
何気なくその目線をたどると、今上がってきた階段のすぐ横にトイレがある。
そこから理恵が出てきた。
(え、ここにトイレあったんだあ!や〜〜ん・・・)
(松岡君、我慢できずに違う階に行ったと思ったろうなあ・・・)
(や〜・・恥ずかしい!!)
急に恥ずかしさが戻ってきた沙織であった。
マックに入り、2時間近くおしゃべりに花を咲かせ、それなりに楽しく過ごした沙織たちは、モールを出る前にそれぞれトイレを済ませた。
会話中も相当我慢していた沙織は、
「帰る前にもう一回トイレ行こ!」
と言ってくれた理恵に感謝していた。
帰り道、県道は車が多いからと、狭い道をクネクネと走っていると、国道16号線を横切ったあたりで慈恵医大病院のそばに出てきた。
「あれえ、ちょっと遠回りになっちまったぞ。」
「ああ、けっこうな。」
「しかたない。このまま行こうぜ!」
「手賀沼沿いに帰るか!」
「ああ!」
男の子ふたりが話している。
付近の地理が全くわからない沙織と理恵は、ただついて走るだけであった。
日が落ちた手賀沼沿いの道は一段と寒くなり、自転車をこぐ息を白くしていた。
手賀沼公園のそばで竹内が別れ、市役所前まで戻って来た3人。
すっかり暗くなった空にわずかではあるが粉雪が舞いだした。
初めてのデートで心ウキウキの沙織は、ここで別れるのが惜しくていつまでも話していたかったが、慈恵医大病院を過ぎた頃から感じていた尿意が、手賀沼沿いの寒風でせっぱ詰まったものになっており、
「寒いからもう帰るけど・・・また誘ってね!、今日はありがとう!」
と言って、理恵と走り出した。
素っ気ない別れ際であったかも知れない。
しかし冷えてきた体から出たがっているおしっこに、余裕は残っていなかった。
男の子と別れたことで少し緊張が解けたせいか、走り出すと尿意は強烈なものとなり、ペダルをこぐ足がふるえて力が入らない。
家までは急いで自転車をこいでも5〜6分はかかる。
思うように力を入れられない今の状況では、さらに時間がかかる。
(あ〜、もうおしっこもれそう!)
(どっかそのへんでやっちゃいたいよぉ!)
(ああ、もうぉぉ!!!)
先ほどから理恵もめっきり口数が減り、少し青ざめた顔色をしている。
その理恵が力無く言った。
「ねえ・・ちょっと沙織のうちに寄っていい?」
「え、いいけど、どうして?」
「ん〜・・トイレ貸してぇ!!」
(あは・・理恵もおしっこしたいの我慢してるんだあ!!)
沙織のダブルデートはこうして終わった。
・*・※・*・※・*・※・*・※・*・※・*・※・*・※・*・
「へえ、ここでそんなことがあったんだあ!?」
沙織の話を聞きながら、由衣は目を輝かせていた。
「うん、だってさ、ここ来たのあの時が初めてだったんだよ。」
「そっかあ。高校の時はわがもの顔で歩き回っていたのにね。」
「あは・・そんなワルじゃなかったよぉ!」
「そうお!?」
「あのときのおじさん、あれ以来見ないんだよ。」
「そうなの?、探してみる?」
「いいよぉ、もう!」
ふたりは声を上げて笑った。
久しぶりに会った2人の会話はまだまだ続いた。