それぞれの出航(たびだち)FOREVER 3




希美「次はかおりんの番だよ〜。」
香織「え、私は‥そんなのないぞ。」
真理「かっこつけるなって。誰だって少しはあるに決まってるじゃん。」
希美「そうだよ〜。」
香織「ん〜、そうだなぁ、しいてあげれば‥‥」
由衣「ゴクッ‥」
香織「おい由衣!!」
由衣「え?」
香織「おまえさ、なんか妙な期待してない?」
由衣「あ‥期待って言うかさ‥かおりんのおしがま話って久しぶりだしさ‥」
香織「なんか今、ちょっとおやぢ入ってたぞ。」
希美「そうだよね。ゴクッて言ってた。」
由衣「そ‥そぅ‥?」
真理「ま、確かに獲物をねらってるって感じだよな。」
由衣「そ‥そんなんじゃないよぉ!」
真理「けどま、それぐらいじゃなきゃ小説になんて出来ないわな。」
由衣「そう、そう。そうなんよ!!」
香織「他人のこんな話聞いて喜ぶのは、まぁこの中では確かに由衣だけだな。」
由衣「ん‥かもね‥‥」
香織「で、まぁ私も希美と同じようなパターンなんだけどさぁ‥」
希美「かおりんもドライブなんだっ!」
香織「まぁな‥‥」
希美「野ションしたんだ♪」
香織「そこんところが希美と違うんだな。私はおとなだから。」
希美「なによぉっ!」

‥‥‥‥ ‥‥‥‥

 結婚に向けて、勤めていた観光案内所を辞めることになった香織は、8月末のある夜に送別会を開いてもらっていた。
婚約者の彼とは仕事上で知り合ったということもあって、同僚たちから温かい祝福と冷やかしを受けていた香織。
その彼は、たまたま仕事の関係で今日はこの地に来ていて、今夜10時に香織を乗せてそのまま川崎の彼のマンションに行く予定になっていた。
そのこともあって香織は飲むのを控えめにしていたが、やはりみなの心遣いに押されてついつい勧められるままにビールを口に運んでしまい、お開きになった午後9時頃には完全に出来あがってしまっていた。
 ふらつく足取りで駅前からタクシーに乗り込み、見送ってくれる同僚に深々と頭を下げて、香織は急いで自分のアパートに向かった。
もちろん前もって荷物などは用意してあったが、シャワーを浴びてスッキリしてから出かけたいと思っていた香織である。
 アパートに戻ると部屋には明かりがついており、どうやら彼はもうすでに到着して部屋で待っているようである。
香織は料金を支払うと大急ぎで2階の部屋に駆け上がった。
「おぅお帰り。ははぁ、かなり飲まされたみたいだな?」
 彼はテレビを見ながらベッドで横になっていた。
「ごめんねぇ、遅くなっちゃった‥‥」
 この夜も熱帯夜で、タクシーから部屋に着くまでのわずかな間に額はじっとりと汗ばんでいて、それを手でぬぐいながら香織は彼のそばに寄っていった。
「いやぁ、こっちの仕事が早めに終わってさ、もう7時過ぎからここにいたよ。」
 一人で夕食を済ませ、夜の運転に備えて少し眠っていたという。
「ま、少し血中アルコール濃度を薄めておきな。」
 彼はそう言いながらベッドから起き上がり、冷蔵庫から冷たいウーロン茶をコップに入れて香りに手渡してくれた。
そして、しばらく休んでいたらいい。その間に持って出る荷物を車に運んでおくと言って、かいがいしく動き出した。
香織は申し訳ないと思いながらも、酔ったけだるさで動くのがおっくうになっていたのでそれに甘え、エアコンの風を身体に当てて身体の火照りをさましながら、冷 たく口当たりのよいウーロン茶を飲んでいた。
 やがて汗も引き、少し落ち着いてきたところでちょうど予定の午後10時になり、そろそろ出発しようかと言うことになって、
「先に車に行ってて。着替えてすぐに出るから。」
 香織は彼にそう促して、まずビールで高まっていた尿意を開放するためにトイレに飛び込んでから、お気に入りのキャミワンピに着替え、もう1杯ウーロン茶を口 に運んでのどの渇きを癒してから彼が待つ車へと向かった。
 車の中でふたりは、スペインに旅立つまでのいろんな予定を話し合っていたが、小田原厚木道路に入る頃、香織はアルコールによる心地よい睡魔に襲われだして、彼の声がだんだんと遠くの方に離れて行くのを感じていた。
助手席で眠ってしまっては申し訳ないと、姿勢を正して座り直してみたり、足を組み替えてたりして眠気を払おうと試みてはみたものの、仕事の引き継ぎなどでかなり疲れていたこともあって、東名高速に入る手前で香織は静かに寝息を立てだしていった。

「あ‥ごめんね、私‥眠っちゃってた‥‥」
ハッと目が覚めた香織は、そう謝りながら車内の時計に目をやった。
アパートを出てから2時間になろうとしている。
「私‥‥どれぐらい眠ってた?」
 恐る恐るそう聞くと、少なくとも1時間ほどはグッスリだったという。
「そんなにぃ‥ごめんね‥‥」
 つぶやくようにそう言った香織は、思わずブルッと身体を震わせた。
(さむ‥‥‥)
 外は異常なほどの熱帯夜であるが、車内はクーラーがガンガンに効いていて、眠っている間にキャミワンピ姿の香織の身体はすっかり冷えてしまっていたようだ。
長い素足に冷気がまともに当たっていた。
(‥トイレ行きたい‥‥)
 寒さを感じたのと、すさまじい尿意を感じたのはほぼ同時であった。
「ねぇ、ちょっとエアコン弱くするよ。」
 そう断りながら操作をし、
「えと‥次のサービスエリア‥‥」
 と言いかけて前方を見た香織に、海老名SAの入り口表示が目に入った。
しかし車は中央車線を走っていて、それなりに併走車がある状態であったので、今さら急に車線変更など出来ない。
(あぁ‥‥‥)
 激しい尿意を感じだした香織をあざ笑うかのように、そのSAへの入り口はみるみる後ろへと遠ざかって行き、あたりはまた単調な暗い道路へと変わっていった。
「もう少し先に行ったらパーキングエリアあるぞ。」
「え、そう!?、ねぇ、そこってトイレもちゃんとあるよね?」
「ああ、小さな所だけどな。」
「よかった‥‥ねっ、そこ絶対に寄ってよね。」
「ビールが効いてきたか?」
「ん〜、正直さぁ、もう膀胱が破裂しそう‥‥」
「ははは‥おいおい‥」
 彼は冗談ぽく笑っているが香織は笑い事ではない。
ビールと冷えによって膀胱はすでにパンパンに張っていて、一刻の猶予もないほどにふくらんでしまってる。
(ウーロン茶もけっこう飲んだしなぁ‥‥)
 香織はそんな風に思いながらワンピの上からそっとその膨らみをさすっていた。
たしかに香織はこの夜、かなりのビールを飲んでいた。いや、飲まされたというのが正解かもしれない。
アルコールに強い体質であるのか、傍目にはさほど酔っているように見られない事が多く、送別会の席上でかなり勧められていた。
もちろんその会場で1回、そして自分のアパートでも出発前に1回トイレに行っていたが、眠っている間に身体が冷えてしまったことで、残っていたビールが部屋で飲んだウーロン茶と併に一気に膀胱に集まってしまったようだ。
(つぅ‥やばい‥ほんとにトイレ行きたぃ‥‥)
 目が覚めたことで腎臓機能が一気に活性化されたのか、尿意はわずか数分の間に更に強くなって、香織に不安感が押し寄せてくる。
「‥ね、次のパーキングまで‥まだ遠い‥?」
 身体を前後に揺らしながら香織は力ない声でそう聞いた。
「えと‥港北(PA)だったかなぁ。なぁに、もうすぐだよ。」
「2〜3分?」
「いや、もう少し‥10分弱かな?」
「10分もぉっ!?」
「おいおい、そんなにやばいのかよ?」
「だから言ってるじゃん。もう破裂寸前なんだってば。」
「‥わかった。すぐだからがんばれよ。」
 彼はそう言ってウインカーを出して左車線へと車を移動させていったが、そのわずかな左右の揺れも香織にはたまらない。
(やばい‥やばい‥ほんとに漏れそう‥)
 手で思い切り押さえ込みたい気持ちであるが、いくら結婚相手とはいえ、まだ彼の前で何もかもさらけ出している訳ではなく、香織は足をきつく閉じて我慢するしかない。
身体は冷え切っているのに、額にはうっすらと汗がにじみ出していた。
「はぁ‥‥」
 思わずため息をつきながらその汗を手でぬぐう香織に、
「あ、ほら、港北(PA)の表示だ!!」
 彼は励ますような感じの口調でそう言った。
「うん‥‥早く早く!!」
 香織は身体を前後左右に揺すりながらそう言って急(せ)かせる。
そこへ到達するまでのわずか2キロの時間がたまらなく長く感じていた。
そしてPAへの分岐点にさしかかったとき、
「ね、出来るだけトイレに近いところに停めてよね!!」
 哀願するように訴える香織に、彼は分かっていると力強く答えてくれたが、ここ港北の上り線パーキングは規模が小さく、駐車スペースも決して広くない。
週末の深夜のせいか、あるいはこれから先は首都高に入るためか、やはりそこはかなりの車が停まっていて、香織たちは建物から離れた所にしか停めることが出来なかった。
「もうぉお、トイレすっごく遠いじゃん!!」
「しかたないだろ。ここらしか空いてないんだよ。」
 怒ったように言う香織に、彼も少し困り果てたように言ってのけた。
しかし言い合ってるい時ではない。
香織は急いで助手席のドアを開けて外に出ようとした。
しかしまだアルコールが残っているのか足下が少しふらつき、おまけにパンパンに張った下腹部をどうしてもかばってしまうので、シートから立ち上がった瞬間にバランスを崩してよろけてしまった。
「ひゃっ!」
 彼にしがみつくことで危うく転倒は免れたものの、その衝撃で少しオチビリしてしまう。
(ばやっ!、少し出ちゃった!!)
 とっさに手がそこに行ってしまい、あわててその手を引き戻して彼に支えられながらヨタヨタとトイレの方向へ歩いていった。
(やばい、もう出る‥もう出そう‥)
 一歩一歩の振動がこの上なくつらく、思わずその場にしゃがみ込んでしまいたい衝動に駆られた香織は、真っ暗なら手で押さえられるのにと、照明が整備されているその明るさを恨んでいた。
(早く‥早くトイレ‥‥)
 何度も何度も同じ言葉を頭の中で巡らしながら、香織はいつしか汗びっしょりになっていた。
それは熱帯夜のせいでもあるが、膀胱が許容量を超えてしまったために、送り込めなくなった尿が汗として全身に排出されていたのかもしれない。
 ようやくトイレへとたどり着いた香織は、すでに呼吸が少し荒くなっていた。
彼から手を離してふらつきながら女子トイレへと小走りになると、
(よかった、混んでないっ!!)
 少ない個室しかないそこは、人影はあるものの行列しているようではない。
香織はなにも考えずに空いている個室にそのままの勢いで飛び込んでいった。
(げっ、洋式じゃん!!)
 公衆の洋式トイレは使いたくないが、今はそんな贅沢を言っている時ではない。
それでもやはり便座が薄汚れているように思えて、やはり躊躇してしまい、
(‥やっぱりイヤだっ!)
 どうしてもそこを使う気になれなくて、香織はその個室を出る事にした。すでに出かかっているおしっこを、今度は完全に前を押さえる事でなんとかカバーし、和式の方へと移動して行く。
手を洗っている女性の視線を鏡ごしに感じたが、そんなことはどうでもよい。
その間にも、先ほどのオチビリが呼び水となってまたジクジクッとおしっこがあふれ出してきている。
(えぇいもうおぉつ!!!)
 香織は空いている和式の個室に飛び込んで勢いよくドアを閉めた。
しかしそこも便器の周りがビショビショに濡れていたり、ちぎれたトイレットペーパーが散乱していたりと、決してきれいとは言えない状態で、香織は一瞬ためらった。
しかし身体はもうおしっこをする準備に入ってしまっているので、そのためらいを待ってはくれない。
(わわっやばいっ!!)
 香織は意を決してワンピをめくり上げ、返す手でパンツを一気にズラした瞬間、シュ〜ッ!!
 そんな音を出しながら、しゃがみきる前におしっこがあふれ出す。
(ふひゃぁ〜、あぶねぇ‥‥)
 とっさにおしりを後ろに突き出すようにしたために、パンツをそれ以上濡らす事は免れていたが、勢いよく水たまりに跳ねるそのおしっこは、大きな音をたてながらしぶきを巻き散らして、香織の足にも跳ねている。
(はふぅ‥‥)
 めいっぱい溜まりきったおしっこから開放されていく快感で、香織はそんなことも気にならずに口から安堵のため息を漏らしていた。
(ふう‥‥)
 およそ1分間にも及ぶ長いおしっこが終るころ、香織は再び大きなため息を漏らしていた。

‥‥‥‥ ‥‥‥‥

香織「おい由衣、1分間は少しオーバーだろう!」
由衣「だってぇ‥」
真理「いんや、めいっぱい我慢したら香織ならそれぐらいは溜めるだろう。」
希美「私もそう思う〜!」
香織「おまえらなあっ!!」
由衣「私だって50秒ぐらいのがあったもん。かおりんは身体もおっきいし‥」
香織「50秒って自分で時計見てたのか?」
由衣「ううん、あ〜ちゃんが計ったの。」
香織「あちゃ〜、おまえら夫婦はもう‥‥」
希美「たのしそ〜!」
真理「ダメだこいつら!!」
希美「次は由衣ちゃんだよ〜。」
由衣「私は今回パスね。」
希美「え〜、なんでぇ?」
真理「由衣は独り言のコーナーに載せられるからいいんだよ。な?」
由衣「うん、まぁね。」
香織「なるほど。」

 こうしてにぎやかな4人娘の話は遅くまで続いていくのであった。

 以下からはおしがま度ゼロのお話が延々と続きます。気が向いた方だけお読みくださいませませ。(作者・注)

由衣「でさ、いつ日本を離れるの?」
香織「11月の初めになると思う。これからあちこち挨拶なんかで忙しいぞ。」
希美「式はスペインで挙げるの〜?」
香織「いんや、式はまだ考えてないけどな。」
真理「あんなの盛大にやる必要ないぞ!」
希美「そうだよね。別れちゃったら詐欺みたぃ‥」
由衣「ののっ!!」
真理「いいっていいって。ほんとにその通りだよ。」
香織「で、真理はこれからどうするんだ?」
由衣「もう正式に離婚成立したんだよね?」
真理「きれいさっぱりオサラバ出来たよ。慰謝料もふんだくってやったしな。」
希美「そうなんだぁ。」
真理「で、オイラさぁ‥‥」
3人「‥‥?」
真理「来月初めに札幌に行く。」
3人「札幌ぉ!?」
真理「ああ。大学の先輩がさ、いっしょに店やろうって誘ってくれてるんだ。」
由衣「来月の初めって‥もうすぐじゃん!!」
希美「あと2週間ほどだよぉ。」
真理「そう思ってさ、今日はみんなにそのこと報告に来たんだ。」
希美「真理っぺの送別会にもなるんだ〜。」
由衣「札幌って‥‥遠くに行っちゃうんだ‥‥」
真理「な〜に、スペインのこと思えば近いもんだよ。」

 元彼の事も含め、暗くていやな思い出が多い甲府を離れるという真理。
皆はそのことに納得したものの、香織の送別会が真理の送別会にもなってしまった事で少し沈んだような雰囲気になっていた。
それを察して真理は勤めて明るく振る舞い、ようやくその場が少し落ち着いて笑いが戻りだしてきた頃‥‥

希美「由衣ちゃん‥あのね‥‥」
由衣「どした、おしっこ?」
希美「ちがうよぉっ!、あのね私もね‥」
由衣「え!?」
希美「んと、私たちも引っ越すの‥‥」
香織「え、引っ越すって都内じゃないって事か?」
希美「‥うん。」
由衣「えぇぇ‥のの、どこへ行くの?」
希美「‥北茨城」
真理「ほえっ!?」
香織「だんなの仕事はどうすんだ?」
希美「うん。辞めてお父さんのお仕事を手伝う事になったの。」
真理「そりゃまた‥で、いつ?」
希美「うん。芹香が来年小学校に上がるじゃん。それまでに‥」
真理「ののたんまで東京を離れるのかよ‥」
香織「みんなそれぞれの出航(たびだち)だなぁ‥」
由衣「グス‥‥」
真理「なんだ由衣、泣いてるのか?」
希美「由衣ちゃん泣かないで〜。」
香織「どうして由衣が泣くんだよ?」
由衣「だって‥だって‥みんな離れて行っちゃう‥‥」
真理「おまえだって離れて京都に行ったじゃん。」
由衣「だって‥だって‥あれはお仕事だし‥」
香織「真理もののも私も、みんな仕事でそうなるんだよ。」
由衣「‥わかってるけど‥」
真理「おまえ、置いてきぼりをくらったような気になってないか?」
由衣「‥‥」
真理「そうじゃねぇよ。たまたま離れた所に散らばるだけだしさ。」
香織「そうそう。またいつか会えるさ。」
希美「うん。そのときが楽しみだね。」
由衣「いつかって‥いつ会えるの‥?」
香織「あれぇ、由衣ってそんな泣き虫だったっけ?」
真理「ははん、しっかりしてきたようで、案外こいつが一番幼かったりしてな。」
香織「はは、ほんとだ。今は希美のほうがおとなに見える。」
希美「わ〜い、由衣ちゃんに勝った〜!」
由衣「もうお、みんなのばか〜!!」

 真理が指摘したとおり、実はこの中で一番幼さを残していたのは由衣であったのかもしれない。
希美は外見やしゃべり方は幼いままであるが、すでに1児の母であり、おなかには2人目がいる事で、徐々に母親としての自立が確率されていたのであろう。

真理「けど‥おもしろいよな。みんなあちこちから集まって散っていくんだな。」
希美「私は東京だけど、元々は函館だしね。」
真理「オイラは甲府で香織は松本かぁ。」
香織「由衣は柏から東京、そして今は京都だしな。」
真理「そしてののたんはたくましい母親になって‥」
希美「かおりんは駐在員夫人。」
香織「真理もやがては店を任されるんだろ?」
真理「うまくいけばな。もちろんそのつもりだけどな。」
希美「由衣ちゃんは臨床なんとかの先生になるんだよね?」
香織「そういえばお前、最近は事務服じゃなくて白衣を着てるんだって?」
希美「カッコいいっ!」
真理「けど、なんだっけ、ブラックジャックの女の子‥」
希美「ピノコ?」
真理「そうそうそれ!、ピノコ先生って冷やかされたりしてるだろ?」
由衣「‥‥(コク)」

真理「商業実務課程からずいぶん畑違いの分野に入ったなぁ。」
希美「そうだよね。由衣ちゃんすご〜い。」
由衣「グス‥」
真理「いつまでメソメソしてんだよ。え、先生さまよ!?」
由衣「‥そういう‥言い方するな〜!」
真理「ありゃ、また泣き出した‥。おい香織、なんとかしろよ。」
香織「お前がヘンなけしかけ方するからだろ?」
真理「チッ、せわのやけるガキだよ。ったく‥」
由衣「ガキじゃないやいっ!」
真理「ほへ、ならもう泣くなよ。」
由衣「‥みんな‥寂しくないの‥‥?」
香織「そりゃ寂しいよ。」
希美「私だってすっごく寂しい。東京を離れる事もね。」
真理「けどな由衣よ。新しい出航(たびだち)だって、さっき香織が言ったろ!」
由衣「‥‥うん」
希美「由衣ちゃんが京都に行っちゃた時さ、私だってほんとは泣いたんだよ。」
由衣「ぁ‥」
真理「そうだよな。ののは由衣をずっと頼ってたもんな。」
由衣「‥‥」
真理「けど由衣は京都で‥なんだっけ、ゆりあとかいう手下を作ってしまった。」
由衣「手下なんかじゃないよぉ!!」
希美「だって仲良しでしょ。私ちょっと嫉妬してたんだもん!!」
由衣「‥‥」
香織「けど由衣と離れてののたんは強くなっていったてか?」
真理「そう言うこと。出会って別れて‥強くなっていくのかもね。」
由衣「‥ん‥‥」
希美「わたし強くなった?」
真理「少しはな。」
香織「第一もうアラサーだもんな。」
真理「それを言われると‥ちょっとキツイもんがあるよな。」
香織「おまえら3人はいいよ。実年齢よりかなり若く見られるだろ?」
真理「だからだよ。あと‥10センチほどほしかったよな。」
香織「それでもやっと154だろ?」
真理「うるせえ、上から目線で言うな。」
由衣「だってかおりんは背が高いから仕方ないじゃん‥」
希美「あ〜ずるいよぉ、それ私が言うのぉっ!」
香織「はは‥やっと由衣が元に戻ってきたぞ。」
真理「世話の焼ける奴だよ、ったく。」

 18歳で出会った4人は、20歳でそれぞれの道に分かれ、何度も再会を繰り返しながら、今まさに新しい出航(たびだち)へとまた一歩踏み出そうとしている。
このお話が皆さんの目に入る頃、真理はすでに札幌で働き出しており、香織はあわただしく日本を離れる準備に追われているだろう。
そして希美も新しい環境に向けて下準備を始めだしていることであろう。
はたして‥このにぎやかなアラサー女4人が、そろって再会出来る日が本当に訪れるのであろうか?

  4姉妹それぞれの出航(たびだち)に栄光あらんことを願う。


それぞれの出航(たびだち)シリーズ 完

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