去年の夏はあんなに暑かったのに、今年はどうしたことでしょう?
何も思い出に残す物がないうちに、夏が終わろうとしています。
去年の夏と言えば・・・
父のお父さん(おじいちゃん)の七回忌があったんですけど、久しぶりに家族旅行も兼ねてゆっくりしようと言うことで、父の実家の富山県滑川市に行きました。
両親は朝早くに柏を出て、上野駅で私と待ち合わせ、上越新幹線で長岡経由で行きました。
姉も夜に大阪からJRで駆けつけて来ました。
私がここを訪れたのは4度目です。
82歳になるおばあちゃんは、とても若く見えて元気です。
でも、私と姉の区別がつかないらしく、由衣ちゃん麻衣ちゃんと、いつも両方の名前を呼んでいました。
おまけに、私のことをまだ中学生だと思っています。
・・・おばあちゃん、7年前だよそれって・・・
父は4人兄姉の末っ子です。
滑川の家には長男夫婦(おじさん、おばさん)とその子供2人、それにおばあちゃんの5人が住んでいます。
だからもう、父の実家というよりも、おじさんのうちということになるんですね。
いとこに当たる2人は、28歳の雅人さんと24歳の奈津美さん。
7年前に会ったきりなので、ちょっと恥ずかしくて、初めはなかなかしゃべれませんでした。
翌日、たくさんの親戚が集まって法要がありました。
でもみんなその日のうちに帰ってしまって、私たち一家だけが泊まります。
夕食でホタルイカや、おいしいお刺身をいっぱい食べました。
勧められてビールも結構飲んだ私は、だんだんテンションがあがってきて、いとこたちともしゃべれるようになっていきました。
その席上で、明日は欅平に行こうと言うことになりました。
「けやきだいらってどこ?」
地理に疎い私です。
「黒部渓谷鉄道に乗ってね・・・」
いとこの雅人さんが説明してくれたけど、さっぱりわかりませんでした。
よく晴れて暑い翌日、足の悪いおばあちゃんは留守番をすることになって、二家族は車二台に分乗して家を出ました。
あっちは大人組。
こっちは子供組で、運転は雅人さんです。
滑川インターから黒部インターに出て、1時間ちょっとで宇奈月温泉に着き、そこから黒部渓谷鉄道に乗り換えました。
ちょうどトロッコのような電車です。
「おとな7枚に中学生1枚!」
おじさんが切符を買っているときに聞こえた言葉です。
・・・中学生って私のことぉっ!!??
Tシャツにデニムの短パン、白いソックス姿では、たしかにそう見えるかもしれないけど、ちょっといやな気分になっていました。
お盆休みのせいか、かなりの人出でした。
堅い木製のシートに座ると、お尻がひんやりとして気持ちよく、渓谷沿いの山あいに吹き抜ける風は心地よいものでした。
でも・・・
私はちょっと膀胱が気になっていたんです。
朝ご飯の時、冷たい麦茶がおいしくてゴクゴク飲んでいました。
車の中でも冷たい缶コーヒーをごちそうになっていました。
それに、出発前にトイレに行っていなかったんです。
朝起きたときに行ったきりで、もう3時間ぐらいになります。
姉は奈津美さんとひとつちがいのせいか気が合って、隣どうしで仲良くしゃべっています。
その横が雅人さん、そして私・・・。
「あとどれぐらい乗るんですか?」
慣れてきたといっても、まだ敬語でしゃべる私。
「んー、まだまだだよ。ほら、あの峰の方まで行くからね。」
「あんなところまで・・・」
「ま、あと40分ってところかな!」
・・・そんなに!?
だんだん不安になってきました。
「あそこに見える岩がねえ・・・」
雅人さんが気を遣ってか、いろんな説明をしてくれています。
「はあ・・・」
気のない返事だったかもしれません。
渓谷に沿って、かなり高いところまで登ってきているのでしょう、風が強く、冷たくなってきました。
心地よかった木製のシートまでもが冷えています。
・・・トイレ行きたいなあ・・・
はじめその程度だった尿意も、このころになると・・・ああ、もうおしっこしたいよぉっ!に変わっていました。
仲良くキャッキャとはしゃいでいる姉たちがうらやましい。
雅人さんの横ではあんまりソワソワ出来ないし、気も遣うし恥ずかしい。
後ろの席では、両親たちが世間話をして盛り上がっています。
・・・なんか・・私だけひとりぼっちみたい・・・
雅人さんがいるのに、私は寂しさを感じていました。
レールのつなぎ目の振動が、じかに膀胱に伝わってきます。
いよいよ私は追いつめられてきました。
風で冷えてきた膝小僧をさすりながら、モジモジしてしまいます。
「寒くなってきた?」
雅人さんに聞かれて、
「はい、ちょっと・・・」
と、うつむきながら答えました。
「あと10分ぐらいだから我慢しなよ。」
「・・・はい・・。」
雅人さんの『我慢しなよ』という言葉が、おしっこを我慢していることを見抜かれているように思えて、恥ずかしくてたまりませんでした。
それでも尿意は消えてくれません。
足を組み替えたり、膝をさすったり、落ち着きがなくなった私の行動は、誰が見てもわかるのでしょうか。
「由衣、あんたトイレ行きたいの?」
雅人さんの横にいた姉が唐突に言いました。
「ば・・ばかあ!ちがうよぉ!」
「うそおっしゃい!」
「大きな声で言わないでよぉ!」
「あんた、お茶をいっぱい飲んでたもんね!」
「もぉ、おねえちゃんっ!!」
「由衣ちゃん、もう着くからがまんしてね。」
奈津美さんまでが言います。
私は恥ずかしくて消えたくなりました。
「この子、昔からトイレ我慢するクセがあるのよ。」
後ろの席で母までがおばさんにしゃべっています。
「もお、おかあさんっ!!」
(注:人前だからママとはいえなかった・・・)
私は泣きたくなりました。
だけど、ほんとにもうおしっこがしたくてたまらなくなっていたんです。
それからわずかで欅平に着きました。
ゾロゾロと改札に向かって行く途中にトイレがありました。
「さ、由衣あそこよ!」
姉が自慢げに指さします。
何人かの女性がトイレに入っていく姿が見えました。
気温が下がっているので、やはりトイレの利用者は多いようです。
小走りでトイレに向かうと、姉たち、母たちまでもが後に付いてきました。
「え!?」
何のことはない、みんなトイレを我慢していたんです。
・・・私だけに恥ずかしい思いさせてぇ!!!
腹が立ってきました。
だけど・・おしっこが漏れそうでそれどころではありません。
三つある個室の前には、すでに数人の人が並んでいました。
・・・わ〜・・いっぱいだあ!!
小学校低学年ぐらいの女の子が、しゃがみ込んでお尻をクネクネしながら我慢しています。
前屈みの人も、タップダンスをしている人もいました。
姉も・・・しきりに足をすりあわせています。
朝から私の体に入った水分は、全く汗をかいていないために、その全部が膀胱に溜まっています。
トイレを目の前にしての我慢・・・
そのわずか数分の我慢が・・・もっとも辛い我慢です。
「おねえちゃんだってトイレ我慢してたんじゃないっ!」
我慢して順番を待っているいらだちで、私は横に並んだ姉に突っかかっていました。
「そうよ。」
「なんで私だけに恥かかせたのよぉ!」
「由衣があからさまにモジモジしてたからよ。」
「だからって・・ひどいじゃない!」
「あんたももう大人なんだから、おしとやかにしないとね。」
「どういう意味よぉ!」
「子供っぽい仕草してたから からかっただけよ。」
「だからって・・あんな大きな声で・・・」
言い合いになると、いつも姉にはかないません。
「あなたたち、みっともないからやめなさい!」
うしろに並んでいる母が言いました。
「だって・・おねえちゃんが・・・」
「麻衣、あなたもからかうのは大人げないわよ!」
・・・やったあ、ママは私の味方だぁ!!
母にギャフンと言わされた姉は、プイッとそっぽをむいてしまいました。
奈津美さんがクスクス笑いながら。
「女の姉妹ってうらやましいな!」
と言いました。
おばさんも笑っていました。
そんな会話をしている間中、ずっと足踏みしたり腰をくねらせたり膝をすりあわせたり・・・なんだかこっけいな光景です。
なんだかんだ言いながら、みんな心の中では『早くおしっこしたいっ!!』なんて思っているんですから・・・。
雄大な景色を楽しんだ後レストランで食事して、またトロッコで下山し、そのまま親不知子不知(おやしらずこしらず)まで足を伸ばすことになりました。
黒部インターから北陸道に乗って、親不知インターまで行きました。
親不知なんて、私は全く知りません。
すごく険しい山が海にせり出しているところで、昔はこの街道を通るのが危険で、親も子もお互いのことを気遣うことが出来ないぐらいの難所だった、そういう意味で親不知子不知という名称になったと聞きました。
北陸道と国道8号線が平行して、ほんとに海の上を走っていました。
帰りは海を見ながらのんびり行こうと言うことで、魚津で8号線から海沿いの県道を走ることになりました。
ついでに魚津埋没林博物館、魚津水族館と見て回り、さあ帰ろうという矢先にハプニングが起きたんです。
目の前の小さな交差点で交通事故です。
自転車の男の子が左折のトラックと接触して転倒したんです。
幸い巻き込まれなくて済んだけど、子供は足にケガをして血を流しながら大声で泣いています。
雅人さんがすぐに携帯電話で110番と119番しました。
すると、事情を聞きたいのでそのままそこで待機していてくれと言われたそうです。
雅人さんは車を路肩に寄せて、すぐに子供の所にかけていきました。
私たちは遠巻きに見守っていました。
しばらくしてパトカーと救急車が同時に来ました。
子供は大声で泣き叫んでいましたけど、大事には至らない様子でした。
トラックの運転手と、雅人さん、何人かの目撃者が事情聴取を受けています。
私たちは車の中で待っていました。
先に交差点を通過していた父から、姿が見えなくなったけど大丈夫かと、姉の携帯に電話がありました。
姉が事情を言うと、魚を仕入れるから先に帰ると言うことでした。
トラックの運転手と雅人さんたちとの証言が食い違っているのでしょうか?なにやらもめています。
「終わりそうにないわねえ・・・」
後ろの席で奈津美さんがつぶやきました。
「アニキ・・正義感だけは強いからなあ・・・」
ため息をつくように言う奈津美さん。
そのとき、私はおしっこを感じていました。
欅平のレストランを出るときに、もう一度トイレに行ったきりだったんです。
あれから4時間ほど過ぎています。
車から降りたのは親不知の海岸と博物館、水族館。
海岸以外は冷房の効いたところで、さらに助手席に座っていた私は、エアコンの風がずっと足に当たっていて、少し冷えていたんです。
・・・早く帰りたいなあ・・・
私はそう思っていました。
ここがどのあたりで、おじさんのうちまでどのくらいかかるのか、全くわからない私は不安でたまりません。
やっと事情聴取が終わったようで、雅人さんはブツブツ言いながら車に戻ってきました。
トラックの運転手が、不利な証言をした雅人さんにくってかかっていたそうです。
事故発生から30分も経っていました。
・・・早く行って!トイレ行きたい!!
夕暮れ時が迫ってきたためか、お盆休みの車のせいか、海岸沿いの道はかなり混んでいました。
さらに8号線でも事故があったのか、そちらからの迂回と思われる車が流れ込んできてノロノロ運転になりました。
・・・うそぉ・やばいよぉ!!
このころになると、私のおしっこは自己主張を強めていました。
今日2度目のおしがま状態・・・。
恥ずかしくて言えません。
・・・どうしよう・・・
だんだんと不安になっていく私でした。
「麻衣ちゃん、親父たちどこで魚を仕入れると言っていた?」
雅人さんが時計を見ながら姉に聞きました。
「あ、さあ・・場所までは・・・」
「そっか。じゃあ適当に回ってみるかな!」
・・・えっ、まだ寄り道するのぉ!!
私は血の気が引く思いになりました。
・・・どうしよう。おしっこ我慢できないよぉ!
・・・トイレ行きたいって言おうかなあ・・・
・・・だけどさ、2回目だもんなあ・・・
・・・また我慢していたってバレちゃうよぉ・・・
・・・それに、この辺にトイレってあるのかなあ?
私は落ち着かなくなって、キョロキョロと外を見ていました。
「きっと○X市場だよ。それよりさ・・・」
奈津美さんが運転席をのぞき込むようにして言いました。
「私トイレ行きたいから、どこかに寄って。」
・・・え、奈津美さんもトイレッ!!
・・・たすかったあ!!!
事故の事情聴取の時、奈津美さんに落ち着きがなかったのはこのためだったんです。
とは言っても相変わらずのノロノロで、先ほどからあまり進んでいません。
おまけに海岸沿いの道にはドライブインのような建物も見えません。
もう少しでトイレに行けると思ってしまった私の気のゆるみは、我慢の度合いを鈍らせてしまって、すぐにでもトイレに飛び込みたい衝動に駆られてしまいました。
・・・わっ、やばいよぉ!!
「このあたりにはないぞ。○X市場まで大丈夫か?」
「ん〜・・ちょっとつらいかな・・・」
「だったら・・え〜と・・・」
いとこ2人の会話をドキドキして聞いている私。
・・・お願い、コンビニでもいいよぉ!!
と、そのとき、
「どこかに寄ってやって。由衣も限界みたいよ!」
後ろから姉が言いました。
・・・!!!
私はビックリしました。
「え、由衣ちゃんもトイレか?」
「そうみたい。さっっきからじっとしてないもん。ね、由衣!?」
「う・・うん・・」
・・・なんでおねえちゃんにわかったのよぉ!?
・・・なんでまた恥かかせるのよぉ!?
・・・ひどいよおねえちゃん!!
恥ずかしくて恥ずかしくてうつむいてしまった私。
「さすがは姉妹ねえ。なんでもわかるんだね!」
奈津美さんが感心したように言いました。
・・・そんなんじゃないよぉ!!
「この子ね、恥ずかしがリ屋でトイレって言えない子だから。」
・・・えっ!?
「だから代わりに言ってやってるの!」
「そうなんだ!、さすが麻衣ちゃん、やさしい!」
「ほんとだな、妹思いだ!」
・・・そ・・そんな、おねえちゃん・・・!!
・・・私に恥かかせるためじゃないの!?
・・・私のこと気にしていてくれたんだ!
「俺が男だから言いにくかったのかな?」
「そうよ。いつまでも子供なんだから。」
「でもさ、男の人の前では言いにくいわよね、由衣ちゃん!」
・・・ありがとうおねえちゃん。
・・・私、いじめられてるのかと思っていたよ・・・
・・・やっぱり子供なんだなあ・・私って・・・
そう思っていると、ついつい涙が出てきました。
うつむいていると鼻水が出てきて、思わずすすり上げてしまった時、
「アラ、由衣ちゃん泣いてるの?」
奈津美さんが言いました。
すると、
「あ、漏らしたんじゃない!?」
姉が私の顔を覗くようにして言うんです。
「おっおねえちゃん、もおおっ!!」
・・・あほ!ばか!まねけ!!!
・・・感激して損したっ!!
・・・やっぱりおねえちゃんなんかきらいだっ!!
我慢して我慢して、やっと小さなおみやげ屋さんを見つけ、私と奈津美さんはトイレを貸してほしいと伝えました。
でも、お姉ちゃんもついてきます。
「あら、麻衣ちゃんも?」
「うん、もう私もいっぱいいっぱいなんだ!」
「な〜んだ、そうなの!」
「助かったぁって感じよ。」
「そうなんだ!」
笑っている2人。
悔しがる私。
そのお店のトイレは、奥まったところにポツンとあって、木のドアを開けると、おじさんが一人おしっこしていました。
私があわててドアを閉めまると、
「どうしたの?」
「なにやってるのよ!?」
姉と奈津美さんが同時に言いました。
「男の人がいる・・・」
私が言うと、
「共同でも仕方ないでしょ!」
姉はちょっと怒ったように言いました。
「でもぉ・・うしろ通れないもん・・・」
「へ??」
細長く、一番手前に洗面台。その奥に男の人用の便器。一番奥に個室という、すごく小さなトイレだったんです。
トイレの前にいて、また待たされるつらさ・・・
やっとおじさんが出てきて、3人揃って中に入り、限界の私が真っ先に入れてもらいました。
そこは水洗ではなく、かなり臭いもきつくて蒸し暑いトイレでした。
お腹がパンパンになっていたので、短パンのホックがなかなかはずせません。
やっとファスナーを開いても、汗でパンツの生地が体にくっついてしまって一苦労です。
お尻をくねらせながら引きずりおろすようにしてかがむと、シュルルル・・と、とっても大きな音で飛び出すおしっこ。
ジャラララ・・・と、便層に落ちていく音までもが響いていました。
「由衣、あんた相当溜まってたんだね!」
ドアの外で姉が笑いながら言いました。
奈津美さんにも聞かれていて恥ずかしいけど、隠しようがありません。
欅平のレストランでアイスティーを飲みました。
埋没林博物館を出るときに、また缶コーヒーを飲みました。
ほとんど汗をかいていないので、みんなおしっこになっていたんでしょうか、なかなか終わってくれません。
「いつまでしてるのよ由衣!!」
姉がまた言いました。
・・・そんなこと言ったって・・・
ようやく終わってドアを開けると、
「ごめん、私先にさせて!」
奈津美さんが私の横をすり抜けるように入りました。
スカートだった奈津美さんは、ドアを閉めた1秒後にはチュルルルと、やっぱりすごい音を響かせていました。
「なっちゃんも相当がまんしてたんだ!」
そういう姉も、ひっきりなしにジーンズの足をすりあわせています。
「ここでできたら便利だよねえ・・・」
と、男の人用の便器を恨めしそうに見つめていたのが印象的でした。
姉はローライズだったので、相当手間取っていたようです。
「よっ、よっ」
と、おかしなかけ声を出してジーンズと戦っていました。
それでもしばらくしたら、シュイーーーという大きな音を響かせていました。
・・・おねえちゃんだって相当我慢してたくせにぃ!!
手を洗っている奈津美さんが。
「由衣ちゃんも麻衣ちゃんもいい音だねえ!」
と言いました。
「奈津美さんだってすごかったよぉ!」
負けじと言い返すと、
「あらそうお!?」
奈津美さんは笑いながら私を見つめていました。
なぜか目をそらせてしまった私。
トイレだけ借りるのも気が引けるので、ホタルイカの佃煮を2個買って車に戻りました。
その夜は奈津美さんも私たちの部屋で一緒に寝ることになり、私を真ん中に挟んでお布団に入りました。
「私もさ、こんなかわいい妹がほしいなあ!」
奈津美さんはそう言って私を抱きしめてきました。
私が照れていると、
「いっぱいいじめられるもんね!」
と言います。
「奈津美さん、キライっ!」
私がはねのけようとすると、
「わ〜、怒るとまたかわいい〜!!」
といって、さらにきつく抱きしめられました。
そしてその手が私の胸の上に乗っています。
「わっ、ちょっとぉ!!!」
「かわいい〜、食べちゃいたいぐらい〜!!」
浴衣の襟のたるみから手をすべりこませて来た奈津美さん。
ブラをしていないので、直に触られます。
「や〜ん!」
「この子ねえ、成長が止まっちゃったのよ。」
「うん、二十歳には見えないもんね。」
そう言いながら奈津美さんは胸の手を動かします。
「ちょ・・ちょっとなつみさ〜ん!!」
「彼氏にこんな事されたいかあ!?」
「や〜ん!!」
「そう言えば由衣、好きな人が出来たって?」
「う・・ん・・」
「へ〜え、どんな人?」
ちょうどあーちゃんのことが好きになってきた頃だったんです。
「うまくいくといいね。」
奈津美さんは言いながら、それでも胸においた手をどけてくれません。
「由衣のことだから、その人の前でトイレ行けないだろうね。」
「ふふ、由衣ちゃんならあり得るかもね!」
私はドキッとしました。
何度かあーちゃんにお茶に誘われたりしてたけど、そのころはまだあーちゃんの前では、一度もトイレに行ったことがありませんでした。
いとこの雅人さんの前でもトイレに行きにくいのに、好きになった男の人の前でトイレに行けるのか、私は確かに不安でした。
「小さいときからよく我慢してたもんね、由衣!」
「そ・・そんなことないよぉ!」
「我慢してると気持ちいいんでしょ、由衣ちゃん!?」
「・・・」
奈津美さんに言われても、何も答えられません。
「ふふ、わかるわよ、それ!」
「え・・?」
「ふふ・・・ちょっとはね!」
「ふふ・・わかるわかる!」
姉と奈津美さんは顔を見合わせて笑っていました。
・・・そうなの、みんな気持ちいいものなの?
・・・それとも・・同じ血なの?
こうして姉と奈津美さんにイジられながら、奈津美さんの告白話や姉の最近のつきあいのこと、私の願望などで盛り上がり、明け方近くまでしゃべっていました。
途中で私がトイレに行こうとしたら、ふたりともついてきて、
「女3人連れションじゃ〜!」
と笑っていました。
ちなみにここも水洗ではないので、音が聞こえます。
翌日、富山まで見送ってもらい、特急「しらさぎ」で米原まで出て、そこで姉と別れ、両親と私は新幹線に乗り換えて東京に戻り、一緒に食事をしてから上野で両親を見送って寮に戻りました。
この時、私は富山を出てから一度もトイレに行きませんでした。
新幹線の中でコーヒーを飲んだり、食事の時にビールまで飲んでいたのに、ついつい我慢してしまって、寮に着いたときには、もうギリギリ状態でした。
「我慢してると気持ちいい・・・」というのが本当なのか、確かめたかったような、そんな気持ちがあったんです。
その答えは・・・・・・・!!??です。