由衣の独り言 22(美紅のおうちで)




 この前ね、博士とA子さんから京都に行くって連絡があったんだけど、私は例のインフルエンザの残務処理の関係で別の施設に行く事になってしまってね、すれ違いになっちゃいました。
残念だったけど、あのおふたりさん、仲良く箱根なんか行っちゃったりして‥‥。
 で、今回のお話は、そのインフルエンザ騒動で病院のお手伝いにかり出される直前のお話であります。
由衣の独り言19でお話しした美紅(みく)の部署に、紗佳(すずか)って子が4月に入ってきたのね。
この子も美紅と同じ京都府舞鶴市の出身で、中学までは同じ学校だったらしいよ。
学年は美紅がひとつ上になるみたい。
今年入った新人同士でも、華穂(独り言17参照)と紗佳は対照的で、同じ部署じゃなくて良かったって思うぐらい紗佳は控えめでおとなしいのね。
 前にも言っていたように、私は彼女たちとは課もフロアも違うんだけど、美紅を通じて紗佳とも親しくなっていたのね。
 その紗佳がちょっとした用事で舞鶴に帰る事になったのね。
そしたら美紅が
「私も土曜日に舞鶴へ帰ろうと思うので、よかったら遊びに来ませんか?」
 なんて誘ってくれたのよさ。
私はその土曜日は半日勤務だったんだけど、美紅はお昼まで待ってくれるって言うので、あ~ちゃんに許可をもらって即OKしたのね。
で、早々に仕事を片付けて(笑)、お昼ご飯を流し込むように食べてさ、美紅と一緒に京都駅に向かったのね。
 舞鶴までは京都駅からJRの特急電車で1時間半ぐらいだったかな?
 西舞鶴って所に着いたらさ、先に帰って用事を済ませていた紗佳が迎えに来てくれていた。
そのまま3人で歩いて美紅のおうちに向かっていたらね、
「あっこがギャル曽根ちゃんの実家らしいよ。曽根菜津子って言うんだって。」
 って美紅が言ったの。
「へ~え、そうなんだぁ‥‥。」
 ギャル曽根ちゃんに会える訳でもないけどさ、芸能人の実家を知っているってのはなんかいい気分になるよね。(←ミーハーです)

 美紅のおうちは駅から歩いて15分ぐらいの、周りには畑なんかも見えたりする静かな所にあったよ。
美紅には2つ上のお兄さんがいるんだけど、大阪に出ているので実家はご両親だけの寂しい暮らしなんだって。
そんなもんだから私と紗佳はたいそう歓迎されてね、まだ夕方だって言うのにお座敷にいっぱいの料理が用意されていたぁっ!!
私は正座が出来ないからさ、恐縮して小さくなっていたよぉ。
え、元々ちっちゃいって!?
余計なお世話!!
40代後半のご両親はとても気さくな感じでね、そんな私に気を遣ってくれてさ、座椅子まで用意してくれたのね。もうますます恐縮‥‥。
んなもんだからぁ、実はトイレに行きたかったんだけど行きにくい状況になってしまっていたのだぁっ!!
 美紅を待たせているからってさ、会社を出る時にトイレに行っていなかったのね。
っていうか、その時は全然行きたくなかった訳なんだけどぉ、電車の中で缶コーヒーとか飲んでいたしで、舞鶴に着いた時はかなりキテたのね。
んで美紅のおうちに着いてから行こうと思っていたわけ‥‥。
 美紅のお父さんは嬉しそうにビールとか薦めるのね。
「もうお、お父さんは向こうに行っていてよぉ。」
 美紅が迷惑そうに言うもんだから、私はそんなこと言わないの!!って、たしなめたりしてた。
ほんとはお父さんがいない方がトイレに行きやすいんだけど、それじゃあかわいそうだもんね。せっかく娘が帰ってきているのに‥‥。
んで、薦められるままにビールなんかを飲んじゃったりして、ますます自分を窮地に追いやる私。
 美紅は私のことを誇大報告していたようで、東京本部で主任補佐していた事まで話題に上げられてさ、なんかすごく偉い人物みたいに思われて困ったよ。
そんな話がずっと続くもんだからなかなか中座出来なくて、おなかも膨れて来るけれど、その下にある臓器はもっと膨らんでしまって、もうパンパン!!
だってもう7時間ほどトイレに行っていないんだもんね。
 私の事ばかり話題に上って、控えめな紗佳は一言もしゃべらずにいたのね。
って言うか、今年入った彼女は私の経歴をこの場で知った様なもんだから、驚いていたみたい。
それも気になっていたから、私は話をそらせる意味も含めて
「ね、ふたりは元々仲が良かったの?」
 って、振ってみたのね。
そしたら答えるのは美紅ばかりで、紗佳は相づちを打つ程度なのね。
ん、そういえば紗佳‥、おとなしいけど‥なんかソワソワしてないか‥?
さっきから何となく足を崩したり座り直したり、スカートのすそを引っ張ったりしてるし、さっきからビールも口を付けてない‥‥。
(あれぇ、紗佳もひょっとしておしがましてない!?)
 私は直感でそう思ったのよさ。
紗佳がどの時点からおしがましているのか、私以上なのか以下なのか、おしがまに耐えられる子なのか、そういった事は全く判らないけど‥‥。
華穂にはおしがまで意地悪した私だけど、紗佳は守ってあげたい‥なんておかしな事を考えてしまう私。
うん、私が先にトイレに行けば、きっと紗佳も行きやすくなるだろうって思ったのね。
けど、その私自身がさ、さっきから膀胱がチクチクしてきているのにそこから脱出出来ないでいる‥‥。
(お父さんさえいなくなれば行きやすいのになぁ‥‥。)
 申し訳ないけどそんな風に思っていたよぉ。
「ところで‥、うちの美紅は使い物になっていますか?」
 突然美紅のお父さんが私に振ってきた。
「え‥あ‥‥あの、私の直属ではないので‥‥」
 私は言葉に困ってしまってね、知らないって言おうとしたんだけど、それじゃあお父さんの期待を裏切る事になっちゃうじゃん。
「けど、上司の●○からは頑張っているって聞いています。」
 って、思わずウソを言っちゃたい!!
「もうぉ、お父さんはよけいなことばっかりぃっ!!もうあっちに行っててよっ!」
 美紅がちょっと怒ったような口調でそう言ったのね。
さすがにお母さんが気を遣ってさ、お父さんを居間の方へ呼び寄せたんだわさ。女の子同士の話もあるんだからって。
私は内心ホッとしたよぉ。これでおしっこに行きやすくなるって。
「ごめんね由衣さん、うちの父はおしゃべりで‥‥」
「あ、うぅん。そんなことないよ。」
 なんて言っていたら、今度は美紅のお母さんが大きなお寿司の桶を持ってやって来たあっ!!
「さ、これも沢山食べてくださいね。おいしいお寿司なんですよぉ。」
 なんて言いながら私の横に座ってさ、
「さ、どうぞ!!」
 ってビールを注ごうとするのね。
さっきからかかと押さえしながらおしっこ我慢してるのに、また行きにくい状況になってしまったんだよ~っ!!
駅に着いた時から‥っていうか、電車に乗って1時間ほどした頃からおしっこを感じていた私が、我慢しながらビール飲んでるんだもんなぁ‥‥。
 ギャル曽根ちゃんがおなかいっぱい食べるとさ、背中の方まで胃が膨らむって聞いているけど、私の膀胱もきっと骨盤の中で所狭しと膨らみきっていると思う。
もうね、おしっこの出口のあたりがさっきからジンジンしてるんだもん。
 美紅のお母さんが私に東京の話とか聞こうとしている‥‥。
ここのご両親は気さくだけどおしゃべりだ~い!!
もうじっとしていられなくてさ、トイレに行く事を告げようとしたら、
「美紅ちゃん、私ちょっとトイレ‥」
 げっ!!、先に紗佳が言っちゃた~い。
そうして立ち上がった紗佳だけど、彼女もこのおうちには始めて来た訳で、トイレの場所を知らないのね。
で美紅が立って案内する事になっちゃって、私はお母さんとふたりきりに‥‥。
(たすけて~っ、おしっこ漏れそうだよ~っ!)
 2人が歩いていく後ろ姿を追いながら、私は心の中で叫んでいたよぉ。
美紅はすぐに戻ってきたけれど、紗佳はなかなか戻ってこない‥‥。
その間もお母さんはしきりに話しかけてきて、私はもう気持ちも膀胱も爆発しそうになっていたよぉっ!。
 紗佳がさわやかな顔で帰ってきてね、それを見たらなんか急に憎たらしいような感情まで芽生えてさ、しゃべっているお母さんを遮って
「あ、すみません‥私もトイレ‥」
 って言ったんだけど、その声が絞り出すような感じの声になってしまってさ、自分でも恥ずかしく思えたぁ。
で、立ち上がろうとしたんだけど、ずっと右足でかかと押さえしてたもんだから、
その足が痺れてしまっていてね、ついた瞬間によろめいてさ、一緒に立ち上がっていたお母さんにしがみつくような感じになっちゃったのね。
じゅわ‥‥
ええ、ええ、そのショックで少しパンツの中が暖かくなりましたよ、はい。
 ここで気を抜いたら最後、そのまま次のがあふれ出してツ~て足を伝いだして、あっという間にじゃば~~って来るからさ、グググッて体に力を入れ込んでさ、それ以上の決壊を堪えて、痺れたままの足をごまかしながら、お母さんにトイレまで案内してもらったのね。
ほんとはスカートの中に手を入れて押さえたかったのは言うまでもありません。
 トイレは洋式で助かったよぉ。
もし和式だったらさ、痺れている足ではしゃがめないからさ、きっと間に合わなかったと思う。
フレアのスカートでナマ足というのは、こういうせっぱ詰まった時は便利だよね。
ほんの1秒ちょっとですぐにおしっこが開始できる‥もん。
けど‥‥長いおしっこになっちゃったよぉ。
パンツは少し湿っていたけど、まあ無視できる範囲だった‥かな?

 それからしばらく宴会(?)が続いて、高校まで美紅が使っていた部屋で女の子だけのおしゃべりして、お風呂に入る事になって‥‥、一緒に入ろうって紗佳が言ったけど、狭いからって却下されてた。
私としてはそれで助かったよぉ。いろいろ体の事情があるもんね。はぁ‥‥。

 その夜、お座敷に3人分のお布団を敷いてもらって、仲良く並んでおねんねしてね、あんなことやこんなこと、いっぱいお話ししたんだよ。
ん~、その内容は今度また紹介するね。

 翌日は美紅のお父さんが車で舞鶴市内を案内してくれた。
美紅が高校時代、おしがましながらデートした海岸にも行ってきたよ。
で、お昼ご飯を食べ終わった頃に会社から私に電話‥‥。
「あ、松本君、明日から2週間ほど病院の方を手伝ってくれ。」
「はあ‥‥??」
これが例のインフルエンザの手伝いの始まり‥‥。
楽しい時間を過ごしていたのに、なんか急に現実に戻されてしまってさ、その後が暗くなってしまったよのさ。

はい、本日のお話はここまで~!!
続きはまた近いうちにね~。



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